スマートフォンは、携帯電話とコンピュータ両方の顔を持ちます。ですからスペック表を見ると、専門用語のオンパレード……おいそれと比較はできません。このコーナーでは、そんなスマートフォン関連の用語をやさしく解説します。今回は「無線LAN(Wi-Fi)」についてです。

***

スマートフォンの通信経路は、3GやLTEなどの携帯電話会社が提供する回線(以下、モバイル回線)だけではありません。ほとんどの端末では、おもに近距離通信に用いられるBluetoothと、多用途の「無線LAN」がサポートされています。「Wi-Fi」は無線LAN規格に準拠したことが認められた製品に与えられる呼称ですが、無線LANとほぼ同じ意味で用いられています。

そのうち無線LANは、インターネットに接続する"もうひとつの回線"として、スマートフォンに欠かせない存在です。特に家庭や会社に無線LAN(Wi-Fiルータ/Wi-Fiアクセスポイント)が設置されている場合、光ファイバーなど定額制(毎月一定料金で使い放題)を基本とするインターネット接続サービスとつながっているケースが大半ですから、モバイル回線のように通信量/パケット代を気にする必要がありません。

無線LANには複数の規格があり、表1に挙げた規格が主に利用されています。現在のところ最速は「IEEE 802.11ac」で、通信環境次第ではLTEを大幅に上回る高速通信が可能になります。ただし、正式な規格として承認されたのが2014年1月とつい最近のことですから、サポートしているスマートフォンはAndroidの最新機種にいくつかある程度です。iPhone 5sやiPhone 5cも、IEEE 802.11acに対応していません。

IEEE 802.11acに次いで高速な規格は「IEEE 802.11n」です。こちらも65Mbps以上と高速ですが、利用する周波数帯が2.4GHzか5GHzかで通信速度や安定性に差が出てきます。2.4GHzは電子レンジなど家電が発する電波に影響されることがあり、5GHzのほうが高速かつ安定して通信できるとされています。現行モデルのスマートフォンの多くが、IEEE 802.11n(2.4/5GHz)に対応していますが、Wi-Fiルータなどの通信機器が数年以上前のモデルの場合、5GHzでの通信をサポートしていないこともあります。

喫茶店やレストランに用意されているWi-Fi無線LANアクセスポイント(公衆無線LAN)にも、同じことがいえます。設置されていても、低速なIEEE 802.11bのみ対応のアクセスポイントの場合は、いざ通信してみるとモバイル回線のほうが高速だった、ということも少なくありません。公衆無線LANは、IEEE 802.11n/5GHz対応のアクセスポイントが普及しはじめましたが、最新/最速のIEEE 802.11acでの接続が一般化するのはしばらく先になりそうです。

■スマートフォンで利用されているおもな無線LAN規格

規格名 周波数帯 最大通信速度(理論値)
IEEE 802.11b 2.4GHz 11Mbps
IEEE 802.11a 5GHz 54Mbps
IEEE 802.11g 2.4GHz 54Mbps
IEEE 802.11n 2.4GHz/5GHz 65~600Mbps
IEEE 802.11ac 5GHz 290Mbps~6.9Gbps

(記事提供: AndroWire編集部)