Windows 10 Technical Previewの新ビルドやSurface 3の発表など新情報がラッシュアワーのように舞い込んだため、紹介するタイミングを逸していたが、米国サンフランシスコで3月初めに開催されていたGDC(Game Developers Conference) 2015でも、Windows 10に関するいくつかの新情報が明らかにされていた。
本レポート記事で何度も触れてきたように、Microsoftは「One Windows」という方向性を持って変革を進めている。下図はChannel 9でMicrosoftが公開したGDC 2015のセッションから抜粋したものだが、「One Windowsへの旅程」と題したスライドでは、WindowsやWindows Phone、XboxをWindows 10に統合し、1つのOS・1つの開発環境・1つのストアに生まれ変わることを示している。
これまでのMicrosoftは、WindowsやWindows Phone、Xboxの開発チームがそれぞれ独立した存在として開発を続けてきた。その結果、ヒューマンリソースの分散や開発コストの増加が発生していたため、状況を見直す意味でもOne Windowsという選択は正しい。今にして思えば、より早期に舵を切り直すべきだったかもしれない。だが、Windowsという存在は大きくなりすぎたのである。
ただし、One WindowsといってもXbox上でWindowsがそのまま動作するわけではない。あくまでもAPIを統一し、共通化するのはコア部分に限られる。アプリケーションも統合APIを前提としたWindows appに移行するものの、PCとスマートフォンなど操作特性や用途が異なるデバイスに対しては個別の機能を用意し、条件分岐文を用いた1つのコードとしてパッケージングするとMicrosoftのDon Box氏は説明していた。
また、Windows 10で動作するWindows appのAPI/ABI(OSとアプリケーション間の低レベルインターフェース)も変化する。Windwos 8から導入したWindows RT(Runtime) APIへ移行するが、すぐに切り替わるわけではない。既存のデスクトップアプリはWin32 API上で動作しているが、Box氏も「一定期間は重複する」と語ったように、Windows 10リリース時は移行期として両者が残る形となる。
さて、GDCは文字どおりゲーム開発者向けカンファレンスのため、DirectX 12やWindows 10とXbox Oneの連動についての説明も行われた。DirectX 12に関して注目すべきはExecuteIndirectというCPU占有率を大幅に下げる機能だ。下図はDirectX 11とDirectX 12を比較したデモンストレーションだが、描画処理に関する負荷をCPUとGPUで制御することで、全体的なCPU占有率を軽減することが可能になる。例えば繰り返し処理を行う場合、DirectX 11はループ文を使っていたが、DirectX 12はGPUに処理を投げるだけで済むため、CPUの負荷が軽減するとPrincipal Development LeadのMax McMullen氏は説明した。
Microsoftの説明によれば、DirectX 11は並列化のネックなどGPU性能を完全に引き出すことができなかったという。そこでDirectX 12はゲーム開発者にGPU性能を開放し、さらなる処理の向上を実現する。ゲーム開発者の負担は増えるものの、エンドユーザー側から見ればDirectX 12の恩恵は大きそうだ。
PCゲームを楽しむエンドユーザー側から見たWindows 10の新機能が「Game Bar」である。基本的にはXbox appを起動するための新たなUIとなり、スクリーンショットやMP4形式によるゲーム動画の撮影が可能だ。MP4ファイルは一度保存してから、Xbox appやSNSなどに公開するといったソリューションを想定しているが、コンテンツ保護されている部分は録画できないという。なお、本機能は最新のWindows 10 Technical Previewとなるビルド10049にも組み込まれていない。
Windows 1.0から数えると今年の11月で30周年を迎えるWindowsは、ゲーム分野の強化も行いつつ、Windows 10という完成形を目指している。その姿は現地4月29日からサンフランシスコで開催されるBuild 2015や、現地5月4日からシカゴで開催されるMicrosoft Ignite、日本では5月26日から2日間開催するde:code 2015で明らかにされるだろう。
阿久津良和(Cactus)