無痛分娩について詳しく知ろう

無痛分娩のメリットとデメリットとは?

痛みの軽減を考える人や高齢出産で体力に自信がない人の中には、「出産するなら無痛分娩で」と考えている人もいるのではないでしょうか。過去の回では無痛分娩について、その方法などを紹介しました。しかし、痛みが少ないという大きなメリットがある一方で気になるのが、リスクや費用などデメリットの問題です。気になる無痛分娩の主なメリットとデメリットをまとめてみました。

メリットは痛みによるストレスが減り、産後の回復が早いこと

まず最大のメリットは、「痛みが少なく、お産がラク」ということです。自然分娩には強い陣痛がある上、ときには2、3日に渡っての長丁場になることも。無痛分娩では陣痛の痛みが軽減し、痛みが元で引き起こされる恐怖やストレスを回避できる可能性があります。 うまくリラックスできれば、お産がスムーズに進みます。お産での体力の消耗が少ないと、「産後の回復が早い」というメリットにもつながります。妊娠高血圧症候群、心臓病、精神疾患などの合併症がある産婦さんでは、血圧下降作用目的として積極的に麻酔を使った分娩が選択されることがあります。

デメリットは副作用やリスクがあるほか、費用も高めなこと

良いことづくしに見える無痛分娩ですが、やはりデメリットもあります。まずは「麻酔による副作用」の心配。よく起こる副作用としては、低血圧、足の力が入りにくくなる、尿が出しにくくなるといったものがあります。また稀に麻酔の処置がうまくいかず、頭痛や耳鳴りなどの異常が生じることも。

そのほか、麻酔がきいてお母さんのいきむ力が弱まってしまったり、赤ちゃんの回旋異常が起こることで吸引分娩や鉗子分娩、緊急の帝王切開になる可能性が高まると言われています。また、陣痛が来てから赤ちゃんが産まれるまでの時間「分娩所要時間」も自然分娩に比べると長くなるといわれます。

母体や赤ちゃんへの影響以外に気になるのが費用の問題。無痛分娩の費用は、健康保険の適用外のため、自己負担になります。金額は施設によってまちまちですが、一般的には、通常の分娩費用に加えて、個人病院で0~5万円、一般総合病院で3~10万円程度加算されます。ただし、この金額は病院によって大きく異なるので注意しましょう。

お産の仕方で母になるのではなく、育児の過程で母になる

無痛分娩は、ほぼ計画分娩になると医師は解説する

日本では「お腹を痛めたからこそ母になれる」と考える風潮がありますが、育児の過程で母になるものだと思います。この風潮に縛られることなく、自分なりの考え方で「よいお産」とは何かをしっかり考えていくべきでしょう。

陣痛が来て、お産が進み、一番陣痛が強くなる時期にごく少量の麻酔を利用してリラックスさせ、最後の赤ちゃんが産まれてくる瞬間にしっかり赤ちゃんを抱くことができる。麻酔を適時のみ利用できるなら、このような環境をつくることができるかもしれません。

しかし、残念ながら現状では「無痛分娩」は、ほぼ「計画分娩」(計画的に分娩日を決めて分娩の誘発を行うこと)であり、その中でも「陣痛促進剤」を使用したお産になっています。陣痛促進剤の使用についてもよく心得たうえで、分娩方針について家族でよく相談し、希望のようにできるかどうかを産院の主治医としっかり話し合うことをお勧めします。

※画像は本文と関係ありません

善方裕美 医師

日本産婦人科学会専門医、日本女性医学会専門医
1993年高知医科大学を卒業。神奈川県横浜市港北区小机にて「よしかた産婦人科・副院長」を務める。また、横浜市立大学産婦人科にて、女性健康外来、成人病予防外来も担当。自身も3人の子どもを持つ現役のワーキング・ママでもある。

主な著書・監修書籍
『マタニティ&ベビーピラティス―ママになってもエクササイズ!(小学館)』
『だって更年期なんだもーん―なんだ、そうだったの?この不調(主婦の友社)』
『0~6歳 はじめての女の子の育児(ナツメ社)』など