方言というと、標準語(共通語)に対して地方の言葉というイメージがありますよね。なかには、なまっていて恥ずかしいという人もいるでしょう。ですが、言葉はそこに住む人々の文化や風土が生んだもの。だからこそ、魅力的に聞こえます。

なぜ男性は女子の方言をかわいいと思うのか

マイナビニュース会員の男性200名に対する調査(「女子の方言がかわいい都道府県ランキング1位は? - 2位福岡県、3位大阪府」)でも、女性の方言がかわいいという男性が多いことが読み取れます。しかしなぜ、女子の方言を、男性は「かわいい」と思うのでしょうか。

たしかに、女子の方言をかわいいと感じる男性は、少なくないでしょう。ボク自身も出張などで東北や九州などに出かけた際、話し方がかわいいなと感じた経験があります。では、どうしてかわいいと思うのか。

人間関係を育むための言葉、方言

言葉は、文化や風土が生み育てます。よく、言葉は生ものだといわれますが、時代や文化の変化に合わせて変わっていきます。つまり、人のありようが変われば言葉も変わるということです。言い換えれば、言葉は人そのものなんです。標準語(共通語)は、年齢や性別、出身が異なっていても等しく同じように理解できるために、定められた言葉。つまり、そこには生活がありません。

ですが、方言はその地域に生きる人びとの生活や人間関係を通じて、自然と生まれたもの。文化や豊かな人間関係が、そこにはあります。いってみれば、情報を伝えるためだけの言葉が標準語(共通語)。人間関係を育むための言葉が方言です。当然、方言のほうが暖かみを感じるでしょう。

方言は人を魅力的に見せることもできる

女性の方言が最もかわいいと思う都道府県として、京都府(主として京都市でしょうが……)が1位にあがっています。マイナビニュースの調査では、「はんなりしていて口調が柔らかいから」(31歳男性/埼玉県/商社・卸/事務系専門職)というのが、その理由です。なぜ、方言は口調が柔らかいのか。また、どうして柔らかい口調を「かわいい」と感じる人が多いのか。それは方言が、人間関係を作り、うまく維持していくために生まれた言葉だからです。

文化庁が『新しい時代に応じた国語施策について(審議経過報告))』のなかで、「方言は地域の文化を伝え、地域の豊かな人間関係を担うものであり、美しく豊かな言葉の一要素として位置付けることができる」と指摘しています。

方言は、けっして恥ずかしいものではありません。それを話す人を、魅力的に見せることもできるんです。無理して、標準語(共通語)を話す必要はないんです。

※写真と本文は関係ありません

著者プロフィール

平松隆円
化粧心理学者 / 大学教員
1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。京都大学研究員、国際日本文化研究センター講師、チュラロンコーン大学講師などを歴任。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。魅力や男女の恋ゴコロに関する心理にも詳しい。現在は、生活の拠点をバンコクに移し、日本と往復しながら、大学の講義のみならず、テレビ、雑誌、講演会などの仕事を行う。主著は『化粧にみる日本文化』『黒髪と美女の日本史』『邪推するよそおい』など。