【レポート】

反撃の狼煙は上がった「将棋電王戦FINAL」第1局 - 斎藤五段の鮮やかな勝利とAperyの誤算

1 最後の団体戦、雨に煙る二条城で開幕

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3月14日、プロ将棋棋士とコンピュータによる5対5の団体戦「将棋電王戦FINAL」の開幕局が京都府の二条城で行われ、斎藤慎太郎五段が将棋プログラム「Apery(エイプリー)」に勝利した。若手中心にメンバーを変えて逆襲を期す棋士側にとって、幸先の良い一勝だ。

第一局が行われた二条城より二の丸御殿(国宝)。複数の建物が雁行に並ぶ

序盤でリードを奪い、徐々に差を広げて押し切るという、対コンピュータ戦において理想ともいえる勝利。今回の第1局は斎藤五段の強さが目立った一方、Aperyにとっては不出来な一局だった。斎藤五段は局後の記者会見で、「(Aperyと)普段指していて感じた強さは、本局では影を潜めていたように思う」と、練習対局との手応えの差について話している。しかし、だからといって本局の勝利の価値がいささかも減じることはない。

3月16日、開発者の平岡拓也氏はAperyのソースコードとともに思考ログを公開した。このログを手がかりにしながら、第1局を読み解いていきたい。

参考までに、このログでは9×9のマスを、右から左に1~9、上から下にa~iの組み合わせで表記している。そして指し手は基本的に「動く駒のあるマス目」「動く先のマス目」の組み合わせで示される。例えば▲7六歩は7g7f、といった具合だ。駒を打つ場合は「駒の種類」*「打つマス目」。例えば▲4四歩はP*4dとなる。歩=P、香=L、桂=N、銀=S、金=G、角=B、飛=R、玉=K、と金=+P

雨に煙る二条城

対局当日の朝は雨。風は冷たく、吐息は白い霧になって消える。傘をさす手はすぐに凍えて、手袋を用意してこなかったことを恨めしく思った。地下鉄を下り、駅を出るとすぐに城郭が目に入る。二条城の東大手門は、あいにくの天気にもかかわらず観光客でにぎわっていた。城跡、城内での対局は前回の小田原城に続き2回目となる。

台所正面。両開きの大きな扉と脇にあるくぐり戸が見える

二条城は国宝・重要文化財・特別名勝に指定をされているほか、世界遺産にも登録されている京都を代表する史跡のひとつ。十五代将軍徳川慶喜が大政奉還を発表した地としても知られる。現在は築城以来の本格修理が行われており、東大手門には工事のための覆いが掛けられている。

対局室は二条城台所。土間の隣にある板敷きの広間にセッティングされた

今回は東大手門を入って右手にある台所が対局室として使われた。土間に面した板敷きの広間にセットが組まれ、銀色に輝くロボットアーム「電王手さん」が盤の前に鎮座している。昨年大きな話題を呼んだ着手用のロボットアームは、吸着式から駒を挟んで持つように進化していた。駒を成るときには補助の台も不要になり、器用に裏返す。立派なものである。

改良された「電王手さん」は駒を挟んで持ち上げる

斎藤五段。対局開始直後の様子

対局開始前、準備に向かう平岡氏に会った。あいさつをすると、「この雨は大変ですね」と笑う。対局室に入りパソコンの前に座ると、その表情が引き締まった。やがて正面の扉が開き、斎藤五段が入室。間近で見るのはこれが初めてだったが、端正な顔立ちにハッとさせられる。斎藤五段が駒を並べ、続いて電王手さんが駒を並べる。しんと冷えた空気の中で、対局は静かに始まった。

唐門。色鮮やかな彫刻が目を引く

東大手門は修理中だった

東南隅櫓。寛永期に建てられたもの

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インデックス

目次
(1) 最後の団体戦、雨に煙る二条城で開幕
(2) 熟考から大決戦、直後の誤算
(3) 人間の感覚にない順
(4) 斎藤五段、緩まず勝ちきる

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