Microsoftおよび日本マイクロソフトは、契約を締結した学校の教員や学生に対して、office 365 ProPlusが追加費用なしで使用できるライセンス特典「Teacher Advantage」「Student Advantage」を提供している。さらに、2015年2月22日(現地時間)に公式ブログにて、Student Advantageの申請プロセスを大幅に削減する改善を発表した。

日本マイクロソフトも同様の施策を2月24日から開始。加えて、大学内IDを利用してOffice 365のダウンロードを可能にする「学認Office 365ダウンロードポータル」を、2015年4月20日から実施する。

サインアップだけでOffice 365が利用できる「セルフサインアップ」

最初に登壇した日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター統括本部 文教本部長の中川哲氏は、自社の教育向けクラウドサービスを"国内最大級"と評しながら、Office 365 Educationの国内利用者数が2014年12月時点で、220万人に達したことを明らかにした。前回調査は2014年5月時点で170万人であることから、7カ月で50万人のユーザーが増加し、1日にならすと2,380人の増加傾向にあるという。

日本マイクロソフトの中川哲氏

日本マイクロソフト調査によるOffice 365 Educationの国内利用者数。2014年12月時点で220万人に達した

日本マイクロソフトは、利用シーンや使用PC台数によって、教育機関に対するライセンス契約を多数用意している。今回のStudent Advantageが対象となるのは、教育機関向け総合契約となるESSおよびOVS-ESプログラムが対象だ。両プログラムの違いは日本マイクロソフトのWebサイトで確認いただきたいが、中川氏によればESS/OVS-ESプログラムを締結している教育機関の学生が、Office365 ProPlusを無料で使用できることは意外に知られていないという。

中川氏は自社の利用プロセスに問題があると反省しつつ、米Microsoft本社も導入した「セルフサインアップ」を、2015年2月24日から国内でも開始することを明らかにした。従来は下図のような複雑なプロセスを教育機関側が実行しなければならず、学生も学校側からのアナウンスがなければ、Office 365を利用できるか否かを知るすべは少ないという。

従来のStudent Advantageを開始するまでのプロセス。Office 365テナントの作成やライセンス管理など、教育機関側の負担が著しかった

「セルフサインアップ」導入後の開始プロセス。ESS/OVS-ES契約締結後は、学生がWebサイトから学内のメールアドレスでOffice 365 ProPlusのインストールが可能になる

今後はセルフサインアップのWebサイトにアクセスすることで、学内のメールアドレスに対してOffice 365をダウンロードするポータルサイトへのURLが届く。後は、Office 365 ProPlusのダウンロードおよびインストールを実行するという仕組みだ。中川氏は「教育機関側は事前にユーザーアカウントの作成などを行わずに済むため、大幅な改善」と、現在は約28万人というStudent Advantageを利用しているユーザーが、約150万人へと大きく増加すると自信を見せた。

「セルフサインアップ」のWebサイト。こちらから学内のメールアドレスを入力すると送られてくるURL先のポータルサイトからOfficeのダウンロードを行う。なお、認証には「~.ac.jp」などのドメインを利用する

学内ID向け「学認Office 365ダウンロードポータル」

日本独自の施策として、ライセンス認証を行うKMSサーバーなどを用意せず、学内のIDを利用してOffice 365 ProPlusを利用可能にする「学認Office 365ダウンロードポータル」を4月20日から開始することも発表した。多くの教育機関は独自のIDシステムで学生を管理し、各種サービスを提供するが、本施策はそのIDシステムを利用するというものだ。

今回、日本マイクロソフトと提携してSSO(シングルサインオン)システムを提供する国立情報学研究所 学術認証推進室教授の中村素典氏は「学認(学術認証フェデレーション)の導入によって、大学間で仕組みが異なる部分をクラウドで吸収する。さらにSSOサーバーを経由し、eラーニングシステムや電子ジャーナルなど、学生向けに各種サービスが提供可能になる」と、"学認"の概要を説明した。既に"学認"に参加している教育機関は150に達し、利用者数も教育者や学生を合わせて110万人を超えたという。

国立情報学研究所の中村素典氏

SSOシステムを利用した「学認(学術認証フェデレーション)」の構造

気になるのは認証システムだ。"学認"参加教育機関は、日本マイクロソフトとライセンスを締結する。教育機関のシステム管理者は、利用申請を経た後にMicrosoftの認証サーバーと各教育機関のデータベースを利用して、各ユーザーの認証を行う。中川氏は「("学認"との連携により)Student Advantageの利用者は、35万人を追加した約185万人に増加することを期待したい」と語った。

「学認Office 365ダウンロードポータル」を利用することで、学内IDでもStudent Advantageのメリットを享受できる

「学認Office 365ダウンロードポータル」利用時は学内IDでサインインし、Office 365 ProPlusを利用する際のIDを申請する点だ

もちろんこれらの施策は、Microsoftおよび日本マイクロソフトにとって金銭的なメリットは少ない。その点について中川氏は「経済格差から生まれる教育格差を埋めると同時に、誰もが高度な教育を安価に習得できる仕組みが不可欠。我々はその一端を担いたい」と、自社の教育に携わる商品を安価に提供する理由だと述べている。

Microsoft/日本マイクロソフトが無償提供を拡大する理由を図にしたもの。より多くの子どもたちに高度な教育を提供したいと説明した

技術の革新と発展によって、特定の業種が不要になっていくのは歴史が証明してきた。「将来的にもイノベーションを起こす役割は不可欠だ」と述べる日本マイクロソフトの心意は、未来のIT業界を担う学生にも伝わるのではないだろうか。

阿久津良和(Cactus)