日本経団連会長の榊原定征氏(東レ・会長)は日本記者クラブにて『豊かで活力ある日本の再生』をテーマに会見を開き、日本経団連が掲げる『2030年までに目指すべき(2020年に実現すべき)国家像』について提示しました。

榊原定征氏

「海外の活力を取り込み、GDPが名目で3%・実質で2%程度で持続的に成長」

2030年までに目指すべき国家像に関し榊原氏は、

「『豊かで活力ある国民生活を実現する』、『人口1億人を維持し、魅力ある都市・地域を形成する』、『成長国家としての強い基盤を確立する』、『地球規模の課題を解決し世界の繁栄に貢献する』の4つに集約される」

と述べました。

『豊かで活力ある国民生活を実現する』ための国家像のイメージについて榊原氏は、

「国内の潜在力を最大限に発揮するとともに、海外の活力を積極的に取り込むことで、GDP(経済成長率)が名目で3%、実質で2%程度で、持続的に成長している国家を想定したい。その『日本再興』を実現するためには、イノベーションが大きな鍵となり、なかでも技術革新が重要となってくる」

「技術革新によるイノベーションが経済成長のエンジン」

「資源に乏しい日本の国際競争力を強化するためには、この技術革新によるイノベーションが経済成長のエンジンとなる。企業が技術革新を進め、国や大学や研究機関との連携強化を強めるなかで、世界をリードできる人材の育成に取り組んでいきたい」

「また意欲・能力のある若者や女性、高齢者など、誰もが持てる能力を最大限に発揮し、自らの望むライフスタイルを実現できる社会を目指したい。2030年までに、管理職など指導的な立場となる女性の比率を30%に引き上げたい」

との見解を示しました。

「子育て世代の負担や不安の軽減に向けた施策を推進」

また榊原氏は、

「人口減と少子高齢化については、子育て世代の負担や不安の軽減に向けた施策を推進し、2017年までに待機児童を全国的に解消させ、50年後も1億人の安定した人口を維持できる社会構造を構築したい。幅広い海外からの人材が共生し、協働することにより、日本経済も発展する」

「そして、経済の持続的発展と豊かな国民生活を目指すための基盤となるのは、やはり健全な財政状況だ。少子高齢化が進むなかで、日本のGDPに占める政府債務残高の割合は、世界最悪の水準にあり、今後も増え続ける見通しだが、2020年にプライマリーバランスの黒字化を達成し、2030年末時点においても黒字化を維持したい」

「今、日本経済は長引くデフレによる縮小均衡から脱却できるか否かの正念場」

「GDPについて考えれば、世界の名目GDPの規模は、この20年余りで3倍以上拡大するなか、日本の占めるシェアは低下してきた。1990年時点では全世界のGDPの13.8%を占めていた割合が、2013年には6.6%となっている。世界のGDPの約8割、人口の6割強をカバーする市場は、FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)などの自由貿易圏内に広がっており、日米欧間での規制の調和を推進しつつ、新興国への横展開を進めることも重要だ。多角的自由貿易投資体制を2030年までに確立し、新たな経済秩序を構築したい」

と述べました。

最後に榊原氏は「今、日本経済は長引くデフレによる縮小均衡から脱却できるか否かの正念場にある。現状に安住し、不作為を続け、改革を先送りにすれば、日本に未来はない。求められているのは、痛みや摩擦を厭わない勇気と挑戦する行動力ではないだろうか」

と結びました。

執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)

経済キャスター・ファィナンシャルプランナー・DC(確定拠出年金)プランナー。著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。東証アローズからの株式実況中継番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重テレビ・ストックボイス)キャスター。中央大学経済学部国際経済学科を卒業後、現・ラジオNIKKEIに入社。経済番組ディレクター(民間放送連盟賞受賞番組を担当)、記者を務めた他、映画情報番組のディレクター、パーソナリティを担当、その後経済キャスターとして独立。企業経営者、マーケット関係者、ハリウッドスターを始め映画俳優、監督などへの取材は2,000人を超える。現在、テレビやラジオへの出演、雑誌やWebサイトでの連載執筆の他、大学や日本FP協会認定講座にてゲストスピーカー・講師を務める。