最近、街中でよく見かけるのが、「Wi-Fi使えます」などのWi-Fiスポット(公衆無線LANスポット)を示すステッカーだ。駅や空港、飲食店など、さまざまな場所でWi-Fiスポットが提供されているので、すでに便利に活用しているという人も多いかもしれない。
無線の高速インターネットを無料、または安価な料金で利用できるWi-Fiスポットは、便利な反面、さまざまなリスクも存在する。そこで本稿では、Wi-Fiスポットのメリット、デメリット、利用する際に注意すべき点について詳しく見ていきたい。
駅や空港、飲食店などいろんな場所で使えるWi-Fi
Wi-Fiスポットは、外出先で無線の高速インターネットを利用できる公衆無線LANサービスが提供されているスポットのこと。カフェやレストランなどの飲食店、駅や空港などの交通機関の施設のほか、大型商業施設など、さまざまなWi-Fiスポットが存在し、利用できるサービスも通信キャリアや鉄道事業者、施設運営者が提供するものなどと多様だ。また、月額料金がかかるサービスのほか、なかには無料で利用できるサービスもある。
こうしたWi-Fiスポットは、パソコンのほかスマートフォン、タブレット、携帯ゲーム機などの無線LAN対応機器で利用することが可能。とりわけ、スマートフォンやタブレットといったモバイル端末の普及により、外出先でも高速インターネットを利用できるようにと、通信キャリアが提供するWi-Fiスポットも増えてきている。さらに、2020年に開催される東京オリンピックに向けて、訪日外国人が利用できる無料のWi-Fiスポットなども充実してきているところだ。
たとえば、外出先でノートパソコンからインターネットを利用したい場合には、モバイルルーターなどを持ち歩く必要がある。しかし、Wi-Fiスポットを利用すれば、モバイルルーターを使わずにインターネット接続が可能。また最近では、カフェなどで仕事をする"ノマド"と呼ばれる働き方も注目を集めているが、そのような人たちにとっても、Wi-Fiスポットは欠かせない存在と言えるだろう。
しかし、ここで気をつけたいのが、Wi-Fiスポットにおけるセキュリティ面のリスクだ。不特定多数の人が利用するWi-Fiスポットは、自宅などの限られた人が利用するWi-Fiとは異なり、情報を盗み見られるリスクが高くなっている。
知っておきたいWi-Fiのセキュリティ
自宅で利用するWi-Fiは、通常、暗号化キー(パスワード)によって暗号化されている。パソコンやタブレットなどでWi-Fiに接続する際に、無線LANルーターに記載されている暗号化キーを入力した覚えがあるだろう。
暗号化キーには、WEP/WPA/WPA2といった種類があり、それぞれ暗号化のレベルが異なっているが、ひとまず、自宅のWi-Fiの暗号化キーが知られていない限り、隣人などの他人には利用できず、情報を盗み見られるリスクは低いと言える。
ところが、Wi-Fiスポットでは、暗号化されていなかったり、暗号化のレベルが低い場合がある。加えて不特定多数の人が利用するため、悪意を持った第三者から情報を盗み見られるリスクも存在する。そのため、Wi-Fiスポットの利用時には、仕事上の重要な情報や個人情報は送信を控えたほうがよい。また、駅や空港といった公共施設だからといって、そこで提供されているWi-Fiスポットを無条件に信頼することも禁物だ。
Wi-Fiスポットを利用する際の注意点は、以下の3点だ。
- 公共施設のWi-Fiスポットでも無条件に信頼しない
- Wi-Fiスポットでは重要な情報の送信は控える
- 暗号化されていない/暗号化レベルが低いWi-Fiスポットは使わない
これらの注意点を守っていれば、便利なWi-Fiスポットを安全に利用することが可能だが、一番のネックとなるのは、3つ目の「暗号化されていない/暗号化レベルが低いWi-Fiスポットは使わない」ではないだろうか。Wi-Fiスポットが暗号化されているかどうかを、何で判断すればよいのかと疑問に感じている人も多いかもしれない。
Windowsパソコンであれば、Wi-Fiスポットに最初に接続する際に、暗号化されていない場合には「このネットワーク経由で送信される情報は他の人に読み取られる可能性があります」といった注意書きが表示される。そのため、この時点で接続を止めれば問題はないが、注意書きを見落としたり、リスクを軽視して、そのまま接続してしまう可能性も考えられる。また、次回から自動で接続するように設定した場合には、以降は、この注意書きを目にすることなく自動で接続してしまうリスクもある。
このようなリスクに対し、セキュリティソフトで二重の備えをするのがおすすめだ。たとえば、カスペルスキーが提供する個人向けの統合セキュリティソフトの最新版「カスペルスキー 2015 マルチプラットフォーム セキュリティ」では、Wi-Fiスポットの安全性を診断する機能が搭載されている。
同ソフトをWindowsパソコンにインストールしていれば、暗号化されていない、または暗号化レベルの低いWi-Fiスポットに接続してしまった際に、警告メッセージを表示してくれる。また、過去にリスク承知で接続したWi-Fiスポットにふたたび接続した場合でも再度警告メッセージを表示。改めてセキュリティのリスクを認識することができる。
都内のWi-Fiスポットの実態を調べてみた
さまざまな場所で提供されているWi-Fiスポットだが、暗号化されていないなど、セキュリティ対策が十分でないWi-Fiスポットがどのくらいあるのかを確認するために、都内3カ所で検証してみた。同時に、カスペルスキーのWi-Fiスポットの安全性を診断する機能も試してみたので紹介しよう。
■羽田空港・国内線出発ロビー
まずは、羽田空港の国内線出発ロビーで検証を行った。国内線出発ロビーでは、無料のWi-Fiサービスが提供されており、Webブラウザで名前とメールアドレスを登録することで利用できた。しかし、同サービスでは暗号化キーが設定されておらず、カスペルスキーの警告が表示された。
飛行機の搭乗前の待ち時間に、Wi-Fiサービスを使ってメールをチェックしたいと思うこともあるかもしれないが、重要な情報を扱うのは控えたほうがよいだろう。また、空港で提供されているWi-Fiサービスだからといって、無条件で信頼するのは禁物だ。
■JR品川駅・駅構内
次に、JR品川駅の駅構内で利用できるWi-Fiサービスを検証してみた。こちらでも無料のWi-Fiサービスが提供されており、Webブラウザでメールアドレスを登録すると利用できた。同サービスも暗号化キーは設定されておらず、カスペルスキーの警告が表示された。
緊急時にメールを送りたい場合などに、駅構内やホームでパソコンを開くこともあるだろう。だが、よく考えずに無料のWi-Fiサービスを利用するのは危険だ。また、空港のWi-Fiサービスと同様だが、メールアドレスの登録が必要だからといって、安全なサービスではないということにも注意しておこう。
■JR新宿駅東口・アルタ前広場
最後に、JR新宿駅東口のアルタ前にある広場で利用できるWi-Fiサービスを検証してみた。こちらでは、大型ビジョンと連携したWi-Fiサービスが提供されており、メールアドレスの登録なども不要で利用できた。同サービスにおいても暗号化キーは設定されておらず、カスペルスキーの警告が表示された。
Wi-Fiスポットというと、駅や空港、飲食店などの印象が強いが、このような待ち合わせスポットでも無料のWi-Fiサービスが提供されている。待ち合わせの空き時間に、パソコンなどを使うことがあるかもしれないが、Wi-Fiサービスの利用には細心の注意が必要だと言える。
外出先で無線インターネットを利用できるWi-Fiスポットは便利だが、本稿で検証した通り、暗号化されておらず、情報を盗み見られるリスクの高いWi-Fiスポットも多く存在する。セキュリティ対策が十分でないWi-Fiスポットを見極めるためにも、セキュリティ対策ソフトを入れておくことをおすすめしたい。