【レポート】

今年も出演ラッシュ! アイドルから超個性派へ、ネガティブな噂も吹き飛ばす女優・橋本愛の魅力とは?

 

橋本愛というと、いまだに『あまちゃん』の足立ユイ役を思い浮かべる人がいるかもしれない。しかし今年、『大人ドロップ』『渇き。』『リトル・フォレスト夏編・秋編』に出演し、さらに公開されたばかりの大作『寄生獣』でヒロインを務めるなど映画への出演ラッシュで、着実に女優としてのキャリアを積んでいる。

ただ、順調なステップアップと相反するように、ネガティブな噂が広がっていたのも事実。ネット上に「性格が悪い」「悪態をついた」などの声が飛び交い、ついには「第2の沢尻エリカか!?」なんて書かれたこともあった。しかし、今夏からの数カ月間でそれらの声が一気に収まり、新たなキャラの兆しが見えつつある。しかもその新キャラがとりわけ強烈なのだ。

スケバンの口上と「パンティー!」

今年も出演作が続く橋本愛 (2014年4月 撮影:WATAROCK)

まず驚かされたのは、7~9月に放送されたドラマ『若者たち2014』。橋本は初回から泡風呂に入って股を広げたり、背中のヌードを見せたり、男の耳元で「気持ちよかったよ」とささやいたり、リベンジポルノされたり、ヒューマン作品の中で一人"汚れ役"を一手に引き受けていた。ただ、これだけなら「18歳になったから演技の幅を広げるために」という解釈もできる。

ところが8月の『新堂本兄弟』出演で、その解釈は幻と消えてしまう。橋本は「その時の気持ちをよく歌にしてしまう」というクセを告白し、「はやくかえりた……かえりたくない!」と謎の即興ソングを歌いはじめたのだ。さらに「スケバンあいさつの研究にハマっている」と言い出し、「ワタクシ、生まれは茅ヶ崎、ネオンの海は東京新宿で番張ってます。スケバンの愛です」と口上を実演。これでテンションが上がったのか、続けざまに「男性の疲れた顔が好き。トローンとしてるじゃないですか。もっと疲れた顔を見たいから慰めない」「(異性に言われてうれしかった言葉は)ゲイから言われた『いいのよ』。立ち居振る舞いとかが好き」とぶっ飛び解答を連発した。

これらの発言は一部で波紋を呼んだ程度に留まっていたが、再びファンを驚かせたのは、翌9月の『新チューボーですよ!』。番組の印象を聞かれて「ちゃんと失敗すること」とダメ出ししたり、バンド・モーモールルギャバンのライブへ行って「パンティー!」と拳を突き上げて叫ぶ姿を再現したり、ここでも強烈なインパクトを残したのだ。この時点で「"清純派アイドル女優"というイメージを消し去った」と言っていいだろう。

ロマンポルノとマルキ・ド・サド

それにダメを押したのは、同月Instagramでの「ロマンポルノやピンク映画が好き」というカミングアウト。橋本は「高校卒業してからだからたったの4.5カ月ですが新橋ロマン劇場に通い続けてました。魅力的なラインナップにいつも救われていて、はっきり言って青春でした」とガニ股開きの写真を掲載した。

同劇場は8月31日で閉館されたのだが、橋本は「ラスト3日間の特集は這ってでも行く気だったので、無事見届けられて良かった」と熱くコメント。ちなみに最終日の上映作品は「(秘)女郎市場」「(秘)色情めす市場」「(秘)女郎責め地獄」。タイトルもここまでくるとギャグとしか思えないほどの作品だった。

そこで思い出したのは、今年私が橋本に会ったときのこと。橋本はテレビ誌の取材であるにも関わらず、「家族では私だけテレビを見なくて話題について行けませんでした。今でもあまりテレビはつけません」とアッサリ。しかし、好きな作家の名前を聞くと、突然目の輝きが増した。そして橋本の口から飛び出した作家名は、マルキ・ド・サドと樋口毅宏。時代は違えど、ともに猛烈なエロ&バイオレンスの作風で知られている。つまり、映画も小説も彼女の求めるものは一貫していたのだ。

「出し切った」が口グセの完全燃焼型

明らかにキャラが変わってきた橋本だが、では「性格が悪い」「悪態をついた」というネット上の噂は本当なのか?

そのきっかけとなったのは、コンタクトレンズのPRイベントで初めて使ったときの感想を聞かれたときの「お医者さんから『ゴミを入れるのと一緒』と脅されていたのでマイナスからのスタートでした」というコメント。また、『日本アカデミー賞』などの公の場でほとんど笑顔を見せなかったことも原因とされている。

しかし、橋本はかつて映画『ツナグ』のインタビューで自らのことを「感情を真っ直ぐにぶつけるということはまずないですね。もしそんなことがあったら相当末期の状態(笑)」「涙は恥ずかしい、怒りは怖いものだと思っていて。その感情に誰かを巻き込むことを心地よく思わないんです」とコメントしていた。私も実際に会話していて感じたが、橋本は人一倍感情表現が不器用なタイプなのだ。

その一方で作品に対しては、「あそこまで出し切ったんだから、という不思議な自信がある」と真摯な発言をしていた。『あまちゃん』のときも「搾りに搾って出し切った」とコメントしていたから、「名優」と呼ばれる先輩たちがそうであるように、"完全燃焼型の女優"だから不器用なのかもしれない。

そもそも、私たちが見たいのは作品での演技であって、むしろ作品以外の場では演じるよりも素のままでいてくれた方がよほど楽しめる。イメージを気にして優等生発言の女優ばかりの中、それが多少の批判はあっても橋本が「大女優になりそう」と言われるゆえんではないか。

西部劇からハロプロまで本物志向

そしてもう1つ橋本がスゴイのは、感性の振り幅。ヌーヴェル・ヴァーグの旗手であるフランス人監督フランソワ・トリュフォーについて語ったり、105歳の現役最高齢監督オリベイラのオールナイト上映に足を運んだり、Instagramにも西部劇の英雄ジョン・ウェインの『駅馬車』、萩原健一主演の『青春の蹉跌』を鑑賞したことが明かされていた。「過去の名画からロマンポルノまで」、私は若手に関わらず、ここまでの映画熱を持つ女優を知らない。

さらに、振り幅の大きさは映画だけではなく、橋本はプライベートでハロプロや乃木坂46のライブに足を運び、「人のためでも自分のためだったとしても、そんなのは問題じゃないくらいすごい」とアイドルたちを絶賛。とりわけハロプロのライブを見て「夢の国みたい。(実際行ったことない)ディズニーランドにもう行く必要がないや」と称えたコメントは、ファンの間で話題を集めていた。このような感性の振り幅は、そのまま女優としての表現力につながっているのだろう。


正直、橋本とインタビューしたとき、ほとんど打ち解けられなかった。その反面、ウソや隠し事ができない彼女との会話はムチャクチャ楽しかったことを鮮明に覚えている。どこまでも正直で、客観的で、不器用……言葉数は圧倒的に少ないが、そのひと言ひと言は深く、本質だけを見つめている姿勢が伝わってくるのだ。

『セブンティーン』モデルを卒業した今年、橋本はその発言で「アイドル女優」というイメージを完全に取り払ってしまった。それとも本人は素の状態でいるだけで、事務所が「個性派女優」という新キャラに舵を切ったのかもしれない。いずれにしても、橋本がこれからどんな女優になっていくのか、見逃せない存在であることは確かだ。

■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。

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