【レポート】

これってセクハラだったらどうしよう!? と悩む人たちへ - 『あさイチ』イノッチが絶賛された理由

10月15日に放送されたNHK『あさイチ』の「女性リアル 40代からの"セクハラ"」特集で、井ノ原快彦さんの発言が話題となっています。

女性からの賛同を集めたイノッチの発言

中でも、有働由美子アナウンサーに対して「有働さんは切りかえしが上手だから、有働さんをからかったらひと笑いとれると思う人がいる。でも、相手がどう思うかを考えないと、そのつもりがなくても加害者になってしまうこともあるのでは」という井ノ原さんの発言は、女性からの賛同を集めました。

女性がなぜ井ノ原さんの発言に共感するかというと、全員が同じ体験があるわけではないにせよ、職場やプライベートの場で嫌なことを言われたときに、「空気を乱すから」「冗談のわからないやつと思われるから」という理由で、苦笑いをしながら有働さんのようにかわしたりしたことがあって、それを男性の井ノ原さんが正確にくみ取ってくれていたことに尽きるでしょう。

「目くじらを立ててほしくない」と思う男性に

一方で、こうしたやりとりを見て、「そんなことでいちいち目くじらを立ててほしくない」「そんなことでいちいち文句を言われたらコミュニケーションができない」と思う男性もいるかもしれません。また、セクハラという言葉に対する恐怖心を持ってしまい、思考停止してしまうこともあるかもしれませんが、それでは、『あさイチ』で「40代からの"セクハラ"」をとりあげた意味がなくなってしまいます。

最近の都議会のヤジ問題など、セクハラに関することが話題になればなるほど、世間には、「正論アレルギー」のようなものも出てきていると思います。なんでも正論やきれいごとで解決するのは、どこかうそくさいと思うことは理解できます。また、男性からすると、女性の意見に同調しすぎるのは、やんちゃ心や遊び心を去勢されるような気持ちになるかもしれません。今回の井ノ原さんの態度に対しても、「女性に迎合しすぎ」という意見があるということも聞きました。

でも、井ノ原さんだって番組では決して正論ばっかり言っているわけでも、女性に迎合しているわけでもないような気がします。時には出演者を茶化して笑いをとることもある。でも、その人の属性をわらったり、嫌がることはしていません。それに、もしも井ノ原さんが女性目線を気にしてばかりいても白々しい番組になってしまうでしょう。では、井ノ原さんはそのバランスをどうとっているのでしょうか。

「嫌がっているか否か」をシンプルに

この原稿のために井ノ原さんの『アイドル武者修行』(日経BP社/2005年3月)という本を読んでみました。すると、井ノ原さんは仕事柄、常に「自分で考える」ということが求められていることがわかりました。演技をするとき、事務所で企画を提案するとき、インタビューに答えるとき、雑誌の連載で編集さんからお題を与えられたとき、その都度井ノ原さんは、これはどういうことなんだろうと、独りよがりではなく、周囲を見渡しながら考えているのが読んでいてわかりました。だからきっと、セクハラ問題に対しても、自分で考えた軸に沿って話しただけであって、決して女性に迎合しようという意図ではないから、白々しく見えなかったのではないでしょうか。

番組の中で「なんでイノッチはこんな風に考えられるようになったの?」と女性陣に聞かれたとき、「みんなが楽しいほうがいいから」と答えていました。また、VTRの中でセクハラをしている男性の行動を見て、「同じ男と思われるのが嫌じゃないですか」とも。自分が男性だから男性の側に軸足を置くのではなく、嫌なことをしないということに軸足を置いているのかなと思いました。

だから、もしも番組の中で有働さんではなく、ほかの男性共演者がその人の属性やキャラで揶揄を続けられていても、井ノ原さんは同じように疑問を呈したのではないでしょうか。

「なんでもセクハラになりそうで職場でコミュニケーションするのが怖い」と思っている人は、女性を女性と意識しすぎて、男性であることに軸足を置きすぎだから「怖い」とか「迎合したくない」ということになることもあるのでは。一度、男性だから、女性だから、という目線を取り外して、「嫌がっているか否か」をシンプルに考えて行動すれば、「セクハラ怖い!」と思う気持ちも少なくなるのではないかと思ったりするのです。

※画像は本文とは関係ありません

<著者プロフィール>
西森路代
ライター。地方のOLを経て上京。派遣社員、編集プロダクション勤務を経てフリーに。香港、台湾、韓国、日本などアジアのエンターテイメントと、女性の生き方について執筆中。現在、TBS RADIO「文化系トーラジオLIFE」にも出演中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に『女子会2.0』(NHK出版)などがある。

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