今期、壇蜜主演で実写ドラマされたマンガ『アラサーちゃん』。同作の作者であり、元セクシー女優の肩書をもつ、峰なゆかが9月29日に30歳の誕生日を迎える。アラサー女性たちの日常を“モテテク”とともに紹介していく彼女は今、恋愛・結婚についてどう考えているのだろうか。思い切って本人に直撃してみた。

マンガ『アラサーちゃん』の作者 峰なゆか

──峰さんの大ヒットマンガ『アラサーちゃん』には様々な“モテテク”が描かれています。峰さん自身はモテるタイプでしょうか?

こういうものを描いているということはつまり、コミュニケーションが苦手だからなんですよ。だって、例えば生まれつきコミュ力(コミュニケーション能力)が高くてモテるような人だったら、自分が普通にやっていることをテクニックとして人に教えることはできないと思うんですよね。本人からしたら「別に何もしてないよ」って感じだと思うので。

でも、私は人間関係を構築したり、誰かとコミュニケーションをとることがうまくできない。そうすると、日常生活に支障が出ますよね。だから周りの人間を観察して、どうしたら相手を不快にしないかとか、どうやったら友達ができるのかとか、そういうことをずっと考えてきたんです。だから、『アラサーちゃん』では、それを言語化してマンガにしているというだけで、実際のモテ力やコミュ力はさほど高くありません……。

──漠然とした質問で恐縮ですが、ズバリ峰さんの恋愛観をお聞かせください。

私、最近になって「恋愛って何だろう?」ってワケわかんなくなってきちゃったんですよ……。むしろ、人生すらもよくわからない。で、この前「私は一体何がしたいんだろう?」って改めて考えてみたんですが、そこでわかったのは「VOGUEの編集長になりたいんだ!」ということでした(笑)。

これまでの目標は"お金が欲しい"ということだったんですが、うれしいことに『アラサーちゃん』が売れて、それなりにお金が入ってきたら、今度は「お金ってあまり要らないかも。そんなに使わないし……」ってことに気づいてしまったんです。そうしたら急に人生の目標がなくなってしまって。で、どうしようかと思っていたんですが、よく考えた結果「オシャレでイケてる権力者になりたい!」という結論に至ることができたんです。

──結婚願望はあるのでしょうか?

前は普通に結婚して子どもが欲しいという気持ちを持っていたんですよ。でも、同年代の友達が結婚したり子どもを産んだりする姿をリアルに見る機会が増えて、段々とそういう気持ちがなくなっていきました。

これは『アラサーちゃん』にも描いたことなんですが、女子の言う「結婚したい」と「死にたい」は同じ意味だと思っていて。女子って「この状況はイヤだ! 逃げた~い!」というときに「結婚したい」か「死にたい」のどちらかにいくんですよ、現実逃避として。女子は常に「今の自分は本当の自分じゃない」と思っていて、メガネを取ったら変身するし、ムーンスティックでも変身するし、私にもそういう感覚があります。ちょっとよく分からない話で恐縮ですが、私は小さい頃から魔法が使えないことが不満だったんですね。何というか、“選ばれし存在”でありたかったのに、現実としては違う。それを埋めるために「これは本当の私ではない」という発想になるわけです。

私の結婚願望もそういう現実逃避的な意味だったなと、最近気づきました。同世代の友達が現実としての結婚や子育てをしている姿を見ていると、「あぁ、結婚って“ここではないどこか”へ連れて行ってくれるものなんかじゃ全然なくて、みんな現実世界で日常を歩んでいくだけなんだな」って、つくづく思う。そう思うと、どんどん結婚や子育てへのメリットが感じられなくなってしまったわけです。

──なるほど……。結婚に対する幻想がなくなってしまったため、結婚願望も薄くなってきたというわけですね。

だから今は、恋愛も結婚もよくわからないって感じですね。恋愛が結婚につながらないというか、ゴールが結婚じゃないとすると、「じゃあ人は何のために男女交際をするのか?」みたいな話になってくるじゃないですか。

なので、最近は私に興味を持ってくれる男性がいても、「何のために付き合いたいんですか?」「人は何のために男女交際をするのか」みたいな禅問答を仕掛けてしまう。まぁ、そんなことを言われても当然答えなんて出ませんよね。多くの男性からしたら「他の人とセックスしない契約がしたい」ってことなんだと思うんですけど、「じゃあ他の人とセックスしないから付き合うのはやめよう」って言うと、「う~ん、でも、イヤだ!」って混乱します。何なんでしょうね。もっとも、私もそんなことを言われたら「何だこいつ?」ってなります。つまり、私は悩んでいるんです。

──しかし、今回『アラサーちゃん』がドラマ化されましたし、これだけマンガがヒットするといろんな男性からのアプローチも増えるのでは?

マンガの印象が悪いというか、『アラサーちゃん』を読んだ男性がこのマンガの作者を恋愛対象として見たくならないらしいんですよ。私としては超不思議なんですが。いつも初対面の人に「狂犬みたいなのを想像していました」って言われるんですよね。もっとも、実際に会うと狂犬ではないので、いい方向にギャップが働くのはいいことかもしれません。

──実際の恋愛では、峰さんはどんなタイプの彼女になるんですか?

恋愛では立場をハッキリさせたいんですよ、私が上でも下でもいいんですが、とにかくハッキリさせたい。上だと主導権を握ってワガママが言えるけど、デートの計画とかを自分で立てなきゃいけないので面倒でもあります。逆に下だと、ご飯を作ってあげたりとか、いろいろ尽くす感じになります。

今、付き合って半年くらいになる彼氏がいるんですが、私が上ですね。彼氏はご飯を作ってくれたりするんですが、「彼はこういうものを作りたいんだろうな」とか「彼はここを褒めてもらいたいんだろうな」とか考えてしまうので、楽しいところもあれば面倒なところもあるって感じですかね。

──9月29日に30歳の誕生日を迎えられますが、どのように過ごす予定ですか?

今年の誕生日はテレビの収録があるんですよ。というか、毎年仕事をしていますね。誕生日にあまりこだわりがないので……。でも、今年は彼氏がケーキを焼いてくれるみたいです。

──素敵な彼氏ですね。彼から結婚の話は出ていたりするんですか?

(結婚)したいって言ってくれるんですが、区役所に行ったり、クレジットカードの名義を変えたり、ご両親に挨拶したり、単純にそういうのが面倒くさいというか……。そこまでして結婚するメリットが本当に見えないんですよね。

メリットって何だろう、税金対策とかですかね? そういう必要性を感じたら結婚したくなるかもしれない。私、思うんですけど、結婚したい女子のうちの何割かって、おそらく周囲から"結婚できない人"だと思われるのが怖くて、それで結婚したがっているんじゃないですかな。もちろん私もその気持ちはわかります。だから、私は結婚できていないわけじゃなくて、現に結婚したいと言ってくれている彼氏がいる。「できないのではなく、しないだけなんです!」ということを、こういう場で世間にアピールできさえすれば、正直結婚しなくてもいいかなって思っています。

──確かに、周囲からのプレッシャーってバカにできないものがありますよね……。

何なんですかね、あれ。確かに仕事先の人とかから「そろそろ結婚とかしないの? いい人とかいないの?」って私もよく聞かれるんですよ。そういうときに、「私は(結婚)したいんですけど、相手がいないんです~」って、"行き遅れオモシロおばさん"を演じなきゃいけないのがとてもつらい!

だって、正直に「結婚ってメリットないじゃないですか~」なんて言ったら、既婚者にとっては不快ですよね。そもそも、そういうことを聞いてくるのは既婚者なので。私は「結婚したくないんすよ」って言っても「あ~わかる~」って思われる外見をしているからまだいいんですけど、これがもうちょっと家庭的な見た目とかだったら、もっと面倒だったろうなって思います。結婚すればそういう面倒がなくなるとしたら、それはひとつのメリットと言えるかもしれませんね。

──だとすると、今はまだ「仕事に邁進!」といったところですか?

いやいや、そんなこと全然ないです。いつも仕事を辞めたいと思っています。だって、仕事が楽しかったら「人生って何なんだろう」なんて考えないですよ。仕事よりも、ニンテンドーDSをやっている方がずっと楽しいです。私、働くのに向いてないんだと思うんですよ。仕事はあくまでお金を稼ぐためのものなので、別に楽しんでやっているわけではありません。

でも、もちろんマンガが売れることはうれしいですし、『アラサーちゃん』も頑張って続けていくつもりです。細かいエピソードを連ねて描くマンガとして『シンプソンズ』を参考にしているんですけど、あのマンガって主要キャラクターが死んだり、最初の頃は黒人だったキャラクターが白人になっていたりと、途中でいろいろ変化しているんですよね。だから、それを見て「そっか、こんなことしていいんだ! 私も急に変えたりしよう!」って思っています。だって、波平が急に死んだら、みんな『サザエさん』に釘づけになりますよね。私も『アラサーちゃん』でそういうことをしてみたいですね。

撮影:石井健