「モバイルファースト、クラウドファースト」という指針のもと、米国本社はもとより日本マイクロソフトが起こすアクションで顕著なのがマルチプラットフォーム化である。日本マイクロソフト代表執行役社長の樋口泰行氏も述べているように、過去のMicrosoftはWindows一辺倒だった。自社プラットフォームの拡大がシェアにつながり、収益を高めてきたMicrosoftとしては当たり前の戦略だった。

しかし、市場ではスマートフォン/タブレットがシェアを伸ばしている。IDC Japanの2018年までの予測によれば、スマートフォンやタブレットの市場が拡大を続ける一方で、PCの出荷台数は1,351万台にまで縮小するという(2013年は1,562万台)。つまり、WindowsにこだわっていてはMicrosoftも商売にならない、ということだ。

樋口氏は「CEOが変わったことでマルチプラットフォームに切り替える」と述べている。Office for iPadはもとより、iPhoneやAndroid用のMicrosoft Office Mobileなど、アプリケーション分野でマルチプラットフォーム化を展開中だ。特にWindowsにリモート接続を行うMicrosoft Remote Desktopのマルチプラットフォーム化は、iPadやAndroidタブレットで、ちょっとした操作をPCで行う際に便利なことこの上ない。

このマルチプラットフォーム化がハードウェアへにも波及してきたと受け取れるのが、新たにリリースする「Universal Mobile Keyboard」だ。

今回Microsoftが発表した「Universal Mobile Keyboard」。79.95ドルで2014年10月に発売する

「Universal Mobile Keyboard」は、Windows/iOS/Androidのマルチデバイスに対応したポータブルキーボードである。同社が公開した動画によると、スタンドとなる溝にiPad miniやAndroidスマートフォンを差し込み、スイッチでOSを切り替える仕組みだ。

バックから取り出した「Universal Mobile Keyboard」をおもむろに開く。保護カバーに用意された溝がPC/タブレットの台になる

iPad Miniを装着したところ。デバイスを固定する溝を備えている

「Universal Mobile Keyboard」にはOSを切り替えるスイッチを用意。見る限り、Windows/Android/iOSの3種類だ

動画や写真を見る限りキートップ数は65キー(日本語版は68キー)、キーピッチは17mm程度だろう。最上段に特殊ボタンを並べているが、ファンクションキーや[Win]キーは存在しない。その辺り、Microsoftのマルチプラットフォーム化に対する意思を感じさせる。

対応OSにMac OS Xは含まれていないが、[スペース]キーの右に[コマンド]キーが存在する

上図は「Universal Mobile Keyboard」のキートップだが、再下段を見ると左から[Ctrl]キー、家を模したホームキー、[Alt/Option]キー、[コマンド]キーが並ぶ。ホームキーはWindowsやiOS、Androidのホーム画面を呼び出すための存在と説明していることから、こちらが[Win]キーの代替え的存在となるようだ。気になるのが、Macintoshで長年使われてきた[コマンド]キーの存在だ。OS XはサポートOSに含まれていないが、Macでも使えるのではないだろうか。

「Universal Mobile Keyboard」のサイズは242×109×12mm(保護カバーを含む)、重量は約365グラム。バッテリーはフル充電で6カ月、10分間の充電で約8時間使用できるそうだ。端末との接続はBluetooth 3.0経由となる。また、サポートOSはWindows 8以上/RT、iOS 6以上、Android 4以上。残念ながらWindows Phoneは含まれていない。

Microsoftは「Universal Mobile Keyboard」以外にも、アークタッチマウスシリーズの新作「Arc Touch Bluetooth Mouse」を69.95ドル、Xbox OneのコントローラーをWindowsで使用する「Xbox One Controller + Cable for Windows」を59.95ドルで発売する。前者はBluetooth 4.0 LE接続、後者はUSB接続でWindows 7以降をサポートする。これらはデバイスの性格上、マルチプラットフォーム化していないが、Xbox One Controllerはスマートフォン用ゲームパッドとしての展開を期待できそうだ。

「Arc Touch Bluetooth Mouse」

「Xbox One Controller + Cable for Windows」

以前からMicrosoftのハードウェアは非個性的ながらも壊れにくいと評価されてきた。かく言う筆者もジョイスティックが主流だった時代は、同社製デバイスを揃え、今でもサブマシンの1台で同社製マウスを使用している。「Universal Mobile Keyboard」のクオリティは実際に手にしないと述べることはできないものの、iOSやAndroidといったデバイスを生活の中心に置いたユーザーにも試してほしいデバイスとなりそうだ。

阿久津良和(Cactus)