22日に最終回を迎えるドラマ『HERO』(フジテレビ系 21:00~)。この2カ月半さまざまな話題を提供し、視聴率も20%前後をキープし続ける中、ずっと噂されていたのは「雨宮舞子(松たか子)の再登場はあるのか?
初回で雨宮が念願の検事になれたことは明かされたものの、恋愛面では久利生(木村拓哉)が「全部が全部うまくいくわけないでしょ」と意味深な発言をしただけで、「つき合っている」とも「別れた」とも言わなかった。そのため、「検事になって別れた」「恋人同士だけど離れ離れで会えないだけ」「実はもう妻になっている」などの臆測や願望が飛び交っている。
同時に、初回から終始飛び交っているのは、「雨宮舞子と麻木千佳(北川景子)のどちらが好きか?」という論争。当初は「雨宮のいない『HERO』なんて……」という声が圧倒的だったが、徐々に「麻木の方が久利生に合ってる!」という声が増え、今やほぼ互角か。今回は新旧ヒロインを比べながら、共通点や相違点を挙げていく。
開運ペンダントとサンバDVDボックス
まず年齢は、雨宮がシリーズ当時24歳(現在37歳の設定)、麻木が28歳。久利生との年齢差は、雨宮が3歳、麻木が12歳。恋人としてつり合うのは雨宮だが、自由奔放かつアンチエイジングの久利生なら、ひと回り年下の麻木でも違和感はない。
次に人柄は、雨宮が「超マジメで堅物"見た目への関心が低い"」内向き系、麻木は「一般OLに近いが実は元ヤン"自他ともに認める美人だと思っている"」外向き系。一見、対照的な2人に共通しているのは、「くじけてもすぐに立ち上がる」「怒らせたら怖い」ところ。物腰の柔らかい久利生とは対照的に、どんなお偉いさんや怖い凶悪犯にも「物申す」男勝りなところがある。
仕事に対する思いは、雨宮が「担当を掛け持ちしてでも検事になりたい」「自立したキャリアウーマンに憧れる」、麻木は「仕事だと割り切っている」「たまたま試験を受けただけ」で、ここが最大の違いと言える。麻木は絶対に「仕事が好き」なんて言わないし、「私も検事になりたい」なんて思わないのだ。
その他、雨宮は大酒飲み、麻木は大食い。雨宮は少林寺拳法の使い手でK-1好き、麻木は元ヤンで口は強いが腕っぷしは弱い。通販で買ったのは、雨宮が「開運ミラクルペンダント」、麻木が「『世界のカーニバル』DVDボックス」。どちらも強弱両面があってキャラの濃さは、ほぼ五分か。
麻木の決めゼリフは独占欲の現れ
気になる恋愛面でも、2人の間に微妙な差が現れている。2人が襲われたときの様子を振り返ってみると、雨宮は久利生の後ろに隠れただけだったが、麻木は久利生が痛がるくらいギュッとしがみついていた。その表情も、怖がっている顔を見せたがらない雨宮に対し、元ヤンなのに思い切り怖そうな顔を見せる麻木。圧倒的に麻木の方が甘え上手で、男心をくすぐるツボを知っている。
たとえば、麻木はしがみついただけでなく、久利生のお尻をポンとたたくなど、スキンシップの描写がいくつかあった。確信犯なのか、好意が態度に出てしまうタイプなのか。いずれにしても、処女然とした振る舞いの雨宮より、自ら「木更津のような小さな地方都市では、かわいい子は目立って男の子全員が目をつける」と話し、「実家の八百屋を継いだ元カレのマサル」がいた麻木の方がモテそうなことは確かだ。
恋のライバルを比べてみても、江上(勝村政信)が雨宮を好きになったのは「相談されたことを恋愛感情とカンちがいしたから」だが、宇野(濱田岳)が麻木を好きになったのは特に理由がない。つまり、特に何もしなくてもホレさせてしまったのだろう。
一方、久利生からかけられた甘い言葉を振り返ると、雨宮の「オレがそばにいてやっから」に対し、麻木は「一人じゃ帰れねえだろ。送っていくわ」「(熱がある麻木の首筋をさわって)おやすみ」と圧倒的に雨宮の勝ち。さらに、新シリーズ第1話で久利生は、「こんなんじゃ絶対ツッコまれるって。あいつ(雨宮)は言ってくるんだろうな~、『もうあきらめちゃうんですか?』って」と話すように、完全に心がつながっている。
麻木はことあるごとに「私は久利生検事の事務官ですから」を連発しているが、これはかつて雨宮が言っていたフレーズ。「久利生のパートナーは私よ!」という独占欲なのか、それとも、2人を比較したがる"世間という見えない敵"と戦っているのか。
「3代目ヒロイン」はあの人の娘を希望
男性から見たら、雨宮は「男性的な上昇志向の塊に見えて、実は乙女心がある」ツンデレ、麻木は「清楚で女性らしく見えて、実は男性以上にケンカっ早い」デレツン。似ているようで違うし、違うようで似ているのだ。2人とも、「押しと引き」「男前と女らしさ」の両面があり、久利生のパートナーとしては甲乙つけがたいものがある。
ただ、久利生は検事の仕事以上に、恋愛面の方が型破り。かつて仕事に没頭して雨宮を6年間も放置し、映画版のラストでようやくキスをしたくらいだから、そう簡単に恋が進むことはない気がする。その観点から、もし数年内での続編があるのなら、久利生の担当事務官は、やはり麻木の続投か。
『HERO』は新旧作品とも確固とした"型"があって、そこから逸脱することはないのだが、もし続編があるのなら、「雨宮が検事として城西支部に帰ってくる」、あるいはより衝撃的に「麻木と宇野が結婚する」くらいのサプライズが見たい。その場合、久利生と新コンビを組むのは、ギャルか、オタクか、元キャバ嬢か。突き抜けたキャラであることは間違いないだろう。「パパでちゅよ~」と話しかけていた芝山(阿部寛)の娘だったら面白いのに。
■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ評論家、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。