第5話では川尻部長(松重豊)の"コワモテ七変化"など爆笑シーンを連発し、キャラクタードラマとしてコメディ要素の強くなってきた『HERO』(フジテレビ系 毎週月曜21:00~)。第6話の主役は、前シリーズからハイテンションで"合コン好きおっさん"キャラを貫く遠藤事務官(八嶋智人)だった。ちなみに遠藤の役年齢は38歳、八嶋の実年齢43歳。ある意味、「この歳で"合コン好き"を演じさせるのはキツイ役柄かも」なんて思ってしまう。

冒頭にシリアスなBGMが流れた。『HERO』でこの曲が流れるのは、決まって深刻な事件が起こるときだ。しかし今回は、すぐに遠藤のおバカな合コンシーンに切り替わる。そして、ほどなく遠藤は事件に巻き込まれ、殺人未遂で現行犯逮捕されてしまう……。この時点で冤罪確定であり、ドラマの焦点は「メンバーが遠藤をどう救うか?」「城西支部のメンバーがどんなチームワークを見せるか?」であることが分かった。

『HERO』でヒロインを務める北川景子

「集まれ! 選ばれし者!」のメンバーたち

すぐさまメンバーが団結して遠藤を助けると思いきや、久利生(木村拓哉)は「同僚だからって助けるとか、そういう話じゃないだろ」、馬場(吉田羊)も「特別扱いはできないわ」、末次(小日向文世)も「そういうルールですもんね」とそっけない態度。

さらに、田村(杉本哲太)から「遠藤が本当にやっていたら、オレは特捜部に戻れませんよね」、末次から「(合コンは)若者の中に一人おじさんが混じってハシャいでるんですよ」、川尻部長(松重豊)から「痛くて小さなおじさんだ」、馬場から「日ごろの軽薄さが裏目に出たわね」と言われる始末。要は「"城西支部のメンバーで最も容疑者役が似合う"キャラとして抜てきされた(選ばれし者!)」いうことか。実際、事件現場の店員いわく「犯人(遠藤)は腰抜かしておしっこをもらしていた」という扱いだった。

しかし、久利生が「オレはただ本当のことが知りたいだけ」と言い、被害者に会おうとしたことから風向きが変わる。メンバーたちも身分を隠して聞き込みをはじめ、遠藤の証言をもとに、徹夜で赤い服の男を探していた。彼らの奮闘と警察の協力もあって真犯人は逮捕され、遠藤は無罪放免され、めでたしめでたし。

ところで今回の裏テーマは、遠藤の"間の悪いキャラ"だった。珍しくモテた合コンで事件に巻き込まれた上に、取り調べ中にたまたまメンバーが和気あいあいとピザやハンバーガーを食べている場面に出くわしてしまったのだ。そんな遠藤から、「僕がひどい目に遭ってるのに何やってるんですか!」「お前ら最低だ。それでも人間か!」「みんなで朝からハンバーガー。バカヤロー!」と言われる他のメンバーたちも、久利生の影響でもはや"空気の読めないキャラ"になっている。城西署に「集まれ! 選ばれし者!」というポスターが貼られ、2度にわたってクローズアップされていたが、これは"城西支部のメンバーそのもの"ということだろう。彼らこそ"キャラこそバラバラだが、芯の部分でつながった、選ばしHEROたち"なのだ。

分かりやすい噛ませ犬"石黒犬"

そんな城西支部の結束を際立たせるために敵役として起用されたのは、"仲間"であるはずの特捜部だった。特捜部検事の首藤(石黒賢)は、「城西支部の捜索差し押さえを行う」「身内だからって一切手加減はしない」「仲間が逮捕されたのに、何てゆるい連中だ」「特捜部の捜査に口出しするな」と高圧的な物言いのオンパレード。第2話のエリート弁護士・桜井(谷原章介)に続く、"分かりやすい噛ませ犬"だ。1話完結でスピーディーな事件解決が求められる『HERO』には、こんな存在が不可欠と言える。

案の定、ラストでは温厚な久利生から「分かんねえな~。全然分かんねえ!」とキレられ、特捜部に戻りたいはずの田村からもお説教を受けてしまう。逆ギレすると思いきや、「われわれは少々ごう慢だったかもしれないな。申し訳なかった、遠藤くん。この通りだ」となぜか平謝り。帰り際も久利生に「ありがとうございました」と言われると、「それはこっちが言うべき言葉なんだろうな」とアッサリいい人に……。これには思わず拍子抜けで、石黒賢ならぬ"石黒犬"なんて言いたくなってしまったが、「今回は間違えちゃったけど、首藤も"集まれ! 選ばれし者!"だった」ということかもしれない。

メンバーの名言、通販、「あるよ」は?

今回も最後に、"メンバーの名言"と"通販グッズ&「あるよ」"をおさらいしておこう。

名言は2つをセレクト。1つ目は川尻部長の「ダメだダメだダメだ。キミたちは首をツッコんじゃいかん。赤い服の男なんか探しに行くんじゃないぞ。いいかキミたち、私がドアを閉めたとたんに出かけちゃったりなんかしたら、絶対に許さんからな!」と言いつつ、メンバーが出て行ったのを確認するとコワモテが一瞬だけ笑顔になり、「何てヤツらだ」。2つ目は城西署の刑事が久利生に言った「オレたちは怪しいやつ捕まえればそれでいいなんて思ってませんからね。あんたたちが『もっと粘って真犯人を探せ』って言えば、オレたちはやるんだよ!」。脇役にもきっちりスポットライトをあてる同ドラマならではのセリフだった。

通販グッズは、「バーベキューで肉焼きながらスマホを充電できる」、その名もバーベキューチャージャー。そして、マスター(田中要次)の「あるよ」は、そのバーベキューチャージャー、というオチだった。第2シリーズに入って、「注文されていないのにマスターが自ら差し出す」という形の「あるよ」が目立つ。13年の時を経て、マスターも気が利くようになったのかもしれない。


次回はついに久利生と麻木(北川景子)の関係に変化が。1泊2日の熱海出張で、しかも麻木のカゼが悪化し……終盤にかけて2人の急接近はあるのか。そして、ヨークシャテリアとミニチュアダックスフントのラッキーとロッキーに次ぐ、トイプードルとポメラニアンのリッキーとポッキーを買ってきた田村の妻は登場するのか?! 「牛丸次席(角野卓造)似の設定なら、ぜひ近藤春菜(ハリセンボン)を!」なんて待望論もあるが……。

■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ評論家、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。