【レポート】

『HERO』第5話は松重豊のコワモテ七変化! ラストシーンでは木村拓哉に"鬼尻"が降臨

第4話では旧メンバーの美鈴(大塚寧々)を登場させるなど、作品の面白さに加え、視聴者を飽きさせない工夫が光るドラマ『HERO』。第5話の主役は、連ドラ界で遠藤憲一と並ぶ"不動のコワモテ2トップ"松重豊だった。

『HERO』はオープニングシーンを見れば、その放送回のテーマがハッキリ分かる。元同期のヤメ検弁護士から、「弁護士はいいぞ~川尻(松重豊)。自分の裁量で仕事ができる。それに何たって収入は検事の倍だ」と言われ、「230(万円)!?」と驚く川尻部長。このやり取りだけで、「川尻部長が何かしらの問題を抱え、検事を辞めるかどうか悩む」話であることが分かった。こんなスピーディーかつシンプルな分かりやすさが1話完結ドラマでは必須なのだ。

ドラマ『HERO』で川尻を演じる松重豊

松重豊のコワモテ顔七変化

この日は主役の久利生(木村拓哉)が霞んでしまうほどの川尻部長推し。序盤からメンバーたちに「文句を言うな!」「うるさい!」「検事が簡単にグチるな!」「いいかげんにしろ!」とキレまくり、久利生「これ部長がやったら?」、麻木(北川景子)「部長だって検事なんですから」、宇野(濱田岳)「昔、特捜部だったんですよね」、末次(小日向文世)「鬼の川尻って呼ばれてた」、さらに全員から"鬼尻コール"でイジられまくる。もともと見た目が怖いはずなのに、キレればキレるほど怖くなくなるのが面白い。

その後も、若い被疑者にウソをつかれたあげく「楽勝」とナメられて、困ったコワモテ顔。10歳の女児を取り調べ中、「もっと柔らかく」と言われて、無理やり目をひんむいたコワモテ顔。7歳の男児に遊ばれ、「どうしたらいいんだ? 遠藤くん」と苦笑いのコワモテ顔。5歳の園児とお遊戯で「マネっ子、マネっ子、マネっ子動物だあれ? ゲロゲロ」と観念したようなコワモテ顔。さらに、ボールを頭にぶつけられ、水をかけられ、ブチ切れて後悔のトホホコワモテ顔。終盤に入っても、たくさんの子どもを前にして「川尻だす」と噛んでしまう緊張コワモテ顔。でも最後はやっぱり「ウソつきはお前だろ! 子どもを刃物で脅すなんてヤツは最低だ!」の鬼尻コワモテ顔。これだけのコワモテ顔バリエーションは、間違いなく松重豊史上最高。松重が長年培ってきた演技力を引き出すような演出は拍手モノだった。

"井之頭登場"から"鬼の久利生"まで

「10年前、政治家の汚職事件で特捜部に引っぱられた。でも特捜部じゃオレのやり方は通用しなかった。『もっと効率的にやれ』って言われたよ。『捜査に時間をかけすぎる。お前のやり方は古い、堅い、もっと柔軟に』って。特捜部外されて地方に飛ばされてからずっと管理職だよ。現場には出てない。今回のことでよくわかったよ。やっぱりオレはあのとき終わってたんだ……」、久利生と麻木に弱音を吐いた川尻部長。そう話しながらフォーを食べる姿は、主演ドラマ『孤独のグルメ』そのものだった。もっとも松重演じる井之頭五郎は、劇中のほとんどが心の声ばかりだから、しゃべりながら食べる姿は新鮮だったりする。

とりわけ印象的だったのは、その直後に放ったセリフ。久利生を見てしみじみと「オレもそんなふうにガムシャラにやってたころがあったよ」と語っていた。すぐに麻木が「似てますよね、部長と久利生さん。私、部長のやり方が古いとは思いません。だって久利生さんもそれなりに仕事できてるし」と、その声をあと押しする。また、川尻部長はバーを出るときに「ごちそうさま。うまかったよマスター。これでこいつらにうまいものでも食わせてくれ。オレは帰る、おやすみ」と全員に優しい言葉をかけていた。これぞ、ふだん見せる久利生の振る舞いそのものだ。

そして、解決を導いたのも久利生の「(川尻部長は)無理をさせすぎちゃダメでしょ。いつも通りじゃないと」というアドバイスだった。これはTシャツ姿でお出かけ捜査を続ける久利生にそのまま当てはまるスタンスとも言える。さらにラストカットも、久利生の「オレが知りたいのは、あなたがプロとしてプライドを持って誠実に仕事をしたのかどうかということです。長くなりそうですね。じゃ、じっくり話を聞かせてください」と言って見せた川尻部長を彷彿とさせる鬼の形相。つまり、「やっぱり2人は似ている」というオチだった。似ているからこそ、これまで川尻部長は久利生のお出かけ捜査を認めてきたのかもしれない。

メンバーの名言、通販、「あるよ」は?

今回も最後に、"メンバーの名言"と"通販グッズ&「あるよ」"をおさらいしておこう。

名言はやっぱり川尻部長の大演説。「(前略)われわれ検事の捜査は話を聞くことです。どんな大きな事件でも、小さな事件でも人と人が向き合うことによって真実が見えてくる。私たちはそう思っています。しかし、相手が何も話をしてくれないと私たちは何もできません。実は検事っていうのは事件のことを何も知らないんです。そこで何が起きたのか。目の前にいる被疑者が本当に犯人なのか、だとしたら動機は何なのか。最初は何にも知りません。知っているのは真犯人と被害者と目撃者、その場にいた当事者だけです。みんなだってそうだろう。相手と正面から向き合わないとその人のことは分からない。本当のことも分からない。当事者が正直に話してくれれば真実が見えてくる。そのためにわれわれ検事はいろいろなことを勉強します。専門的な難しいことも、事務官の助けを借りて一生懸命勉強します。そうやって犯罪者が正当に罰を受ける世の中、確かな正義が存在する世の中に近づけていくこと、それがわれわれ検察の仕事なんです」と3分間にわたって語り上げ、子どもたちだけでなく、久利生にも頭を下げさせた。

通販グッズはハンディマッサージ機と、頭の回転と記憶力をサポートするサプリメント『ミラクルマジックブレイン』。また、通販番組では、川尻部長の身の上話に「THE END」の字幕と、去り際に「サヨウナラ」の音声をリンクさせていた。一方、マスター(田中要次)の「あるよ」は、「人間ってこんなときでもお腹がすくんだな。体に優しいものが食べたい」と弱った川尻部長に差し出したフォー。ちなみに川尻部長は最後もバーで、バーニャカウダーらしきものを食べていた。今回の件でヘルシー志向になったのか。


第5話は、麻木の「私は久利生検事の事務官ですから」という決めゼリフに、事務官としての自覚だけでなく、久利生への好意がにじみはじめたシーン。田村(杉本哲太)と馬場(吉田羊)がケンカしながらも相合い傘となりドキッとしたシーン。牛丸次席(角野卓造)が「またお前か久利生!」「それよりごぶさたしています。おかげさまで元気にやってます」と再会したシーンなど、メンバー間の進展も見られた。次回も遠藤(八嶋智人)の逮捕というショッキングな展開に、"特捜部vs久利生"の図式が絡んで波乱含みだけに、城西支部メンバーのさらなるチームワークが見られそうだ。

■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ評論家、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。

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