日本マイクロソフトは自社のパートナーグループと密なる連携を図るため、以前からMPN(マイクロソフトパートナーネットワーク)なるサービスを展開している。
9月5日には、今年で12回目となる「マイクロソフト ジャパン パートナー コンファレンス 2014」を開催。戦略や最新情報などを説明した。日本マイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏によるキーノート(基調講演)がメディア向けに公開されたため、その内容をレポートする。
「後出しジャンケン」発言も登場したキーノート
樋口氏は、米MicrosoftのCEO(最高経営責任者)であるSatya Nadella氏が掲げたキーワードを元に、「モバイルファースト、クラウドファーストの実現に向けて」と題した講演を行った。「我々は外資系の会社なので、本社(米Microsoft)から幹部を呼んでキースピーチを行う予定もあったが、CEOが来ないとパッとしないので、代行して本社の戦略を説明する」(樋口氏)と軽快な口調で語り出した。本カンファレンスはMPNを対象としているため、樋口氏の意識も普段のメディア相手とは異なったのだろう。
続けて樋口氏は、前年度(2014年度)が過去最高の売り上げを記録したことについて「夢のような1年だった」と感想を述べた。消費税増税前の駆け込み需要や、Windows XPのエンドオブサポートに関する買い換え需要の高まりにより、例年にない好成績だったという。その結果、GDPの押し上げにも貢献したと日本政府から評価されたことも明らかにした。
驚いたのは「タブレット市場への参画が遅れた」ことを公の場で認めた点である。ここ数カ月における樋口氏の発言を鑑みると、Microsoft SurfaceをはじめとするWindowsタブレットは好調らしく、ことあることに「タブレットとPCを持ち歩くのは面倒というフィードバックが多い」「(Windowsタブレットなら)1台で済む」と発言していた。
思い返せば2012年第4四半期の時点で、Windowsタブレット市場における日本マイクロソフトのシェアは、わずか0.2%だった。これが2014年第4四半期には30%を突破。今年度の経営方針記者会見でも、法人用Windowsタブレット市場では50%を目指すと強気の姿勢を見せたように、急成長を実感した上での発言だろう。
続いては会場が大きく反応した。「Appleが(iOSとタッチUIで)新しい市場を生み出した」と、他社が現在のタブレット市場を牽引(けんいん)していることを認めつつ、「我々は後出しジャンケンの会社だ。GUIもOfficeもExchangeもHyper-Vもすべて後追いである」と述べたのだ。誰しもが心の中で感じていながら、面と向かって発言しなかった言葉を、代表執行役社長である樋口氏の口から出た途端、それまで静かにスピーチを聞いていた来客も大いに沸いた。
Microsoftが後追いの会社であることは、MS-DOSの成り立ちやWindows誕生の時代を見てきた筆者としても、重々承知している。だが、Microsoftは革新的なものを生み出さなくとも、それをスタンダードとして広く浸透させる能力を持つ企業だ。樋口氏の言葉を借りれば、「がまん強くビジネスとして突き詰めることで、(Microsoftは)成功してきた」のである。