二度のアカデミー賞に輝く名優、トム・ハンクスがiPad用のアプリ「Hanx Writer」をリリースした。これはタイプライターを模したテキストエディタというべきものなのだが、そのものずばり「タイプライターアプリ」と呼んで差し支えないものになっている。アプリのダウンロードは無料だ。

トム・ハンクスがリリースしたタイプライターのアプリ『Hanx Writer』。起動すると、トムからのグリーティングカードが現れる

70年代末、初めてタイプライターを購入して以来、すっかりその魅力に取り憑かれ、マニアックなコレクターになったというトム・ハンクス。約1年前、NewYork Timesの取材に対し、「タイプライターで何かを書くのが好きだ」とも述べている。

『Hanx Writer』に収録されている「greetings!」という書類には、コレクターとなった経緯や、開発の動機などが記されているが、それによれば、トムは、タイプライターごとに異なるデザイン、動き、キーのたてる音に魅せられたのことである。また、キー、ハンマー、布地、染料を通じてタイプした文字は、永久に想像の痕跡を残す、言ってみれば、ソフトな墓碑銘のようなものであるとも書いている。

iOS標準のソフトウェアキーボードと基本的には同じだが、「Delete」キーは通常通りに機能しないという特徴的な仕様。また、iPadを横向きにしないとキーが表示されない

そのこだわりはアプリの設計にも反映されており、例えば、通常のソフトウェアキーボードと同様の「Delete」キーが用意されているものの、消したい単語があった場合、キーを押し続けて消去することはできず、一文字ごとに「Delete」キーを打たなければならない。よりマニアックに使いたいのであれば、「Delete」キーをオフにすることもできる。つまりタイプミスは、タイプライター同様、そのまま残るという仕組みだ。利用に際しても、文字を打つには、iPadを横向きしていなければならない(縦向きではキーが表示されない)。この偏愛ぶりはいったい何なのか?

「設定」から打鍵のアニメーションのオン/オフ、サウンドのオン/オフなどが行える

物理的な感触は再現できなかった分だけ、情熱はサウンド面とタイピングのアニメーションに注がれている。キーを打つ音、紙が送られている音、タイプアームなどが忠実に再現され、あたかも本物のタイプライターを打っているかのような気分に浸れる。

標準搭載の「Hanx Prime Select」のほか、「Hanx 707」「Hanx Golden Touch」の2モデルがアドオンで購入できる

また、アプリ内課金で、タイプライターのモデルを追加することもできる。標準モデルの「Hanx Prime Select」のほか、旅行用に飛行機でも打てるよう、打鍵音を小さくした「Hanx 707」と、高級モデルを謳う「Hanx Golden Touch」が用意されており、アドオンで購入できる。

トムは、お礼状や招待状をタイプライターで作成するそうだが、同じことがiPadでできることを素直に喜んでいる様子だ。「Hanx Writerを使って作業をすると、タイプライターの懐かしいリズムを刻む音が蘇ってきて、とても心地よいです」とも述べている。また、Twitterでは、@App Storeとのライブチャットを行い、さまざまなやり取りが交わされているので、こちらも是非、チェックして欲しい。

メール送信のほか、印刷、AirDrop経由での共有機能、各種アプリとの連携機能も装備

文字寄せやインクリボンもアドオンで購入可能

「Hanx Golden Touch」を購入すると作成した書類に画像を貼り込むことができる

アドオンを一括で購入することも可能

遊びゴコロたっぷりなHanx Writerは、iOS標準の「メモ」のようなテキストエディタとしても使用することができ、ワイヤレスキーボードにも対応している。メールでの送信のほか、印刷や、AirDrop経由での共有機能、各種アプリとの連携機能も装備している。ただし、現在のバージョンでは対応言語は英語のみとなっている。

次期iOSとなる「iOS 8」では、サードパーティ製のソフトウェアキーボードが追加できるようになるとアナウンスされているが、それにより、このHanx Writerのような、細部にこだわりが感じられるものが出てくるのもあわせて期待したいところだ。

(提供:iPad iPhone Wire)