レノボ・ジャパンは今夏、鎌倉市の由比ガ浜海岸にて、「YOGA TABLET」を活用した"海の家"「Lenovo House Beach Marche」を展開している。これにあわせて同社では、由比ガ浜を含む鎌倉の海で活躍するライフセービングクラブ「鎌倉ライフガード」にもYOGA TABLETを導入し、ITの面から海の安全を守ることに協力している。この取り組みを取材してきた。

鎌倉のビーチを守る「鎌倉ライフガード」に「YOGA TABLET」を導入。当日の由比ガ浜はちょうど台風が接近中で波も高く、メンバーの表情も真剣そのもの

同社では、YOGA TABLETでIT化した海の家で、海水浴における新たなライフスタイルを提案したいと「Lenovo House Beach Marche」を開いている(この取り組みについてはこちらの別記事が詳しい)。今回紹介するのは、YOGA TABLETならではの機動力を活かし、鎌倉ライフガードのライフセービング活動を支援することで、海水浴により安全に楽しめる環境を構築できないかという試みだ。

海の家「Lenovo House Beach Marche」でも「YOGA TABLET」が活躍中

由比ガ浜の監視所内にて。鎌倉ライフガード代表の多胡誠氏(写真左)と、同監視長の朽木豊氏(写真右)に、「YOGA TABLET」の活用の内容を紹介してもらった

具体的には、鎌倉ライフガードのライフガードに8インチサイズ「YOGA TABLET 8」の3G版を提供。ライフガードは天候の確認や、メンバー間での情報の引き継ぎなどをメインに利用している。実際にYOGA TABLETを運用中で、由比ガ浜監視所で監視長をつとめる朽木豊氏によると、風や波の情報は海の安全管理にかかせないものであり、YOGA TABLETを使えばすぐに情報にアクセスできることが非常に助かっているという。これまでは、波や風の情報はFAXなどで取り寄せるなどしており、海は天候の移り変わりが激しい中で後手に回りがちだったが、YOGA TABLETの機動力が天候情報取得の即時性の改善にも役立っている。

波や風の情報を予測するWebアプリの「WindGuru」などで天候情報を即座に取得

ほかにもYOGA TABLETは、海水浴客からの問い合わせに対応するための情報検索や、外国人向けの英語でのコミュニケーション補助などの用途でも活躍している。また、由比ガ浜の監視所には救護所も設置されているが、ここで近所の病院施設へのルート案内をするといったちょっとした用途でも、簡単にマップ情報にアクセスできるYOGA TABLETが役立っているという。なお朽木氏はYOGA TABLETについて、まず1日中持つバッテリ性能や、片手で扱えるサイズ・重量がとても使いやすいと話していた。特徴のひとつである内蔵スタンドも、監視所に設置して使う際などに便利と好評のようだ。

普段はこの監視所内に「YOGA TABLET」を設置しており、メンバーのシフト表の確認などにも使っているという

ところで、海水浴場でライフガードが使うというのは、電子機器にとっては過酷な環境と言えるし、ご存知のとおりYOGA TABLETは防水性能をうたった製品ではないが、朽木氏によれば、砂まみれのぬれた手で使っていても、現在までに大きな機材トラブルは発生していないのだそうだ。この点はレノボ・ジャパンの製品担当者の"余談"によると、YOGA TABLETはそもそも本体の機密性がかなり高い設計になっているので、(製品保証としてあるわけではないが)多少の水では壊れにくいと説明していた。

こういったITの利活用だが、どうやら日本の海水浴場は、海外の有名ビーチの取り組みに比べると、やや見劣りするというのが現状のようだ。今回お話を伺った朽木氏は、普段はオーストラリア在住で、ゴールドコーストでプロのライフガードとして活躍しているのだが、例えばゴールドコーストでは、全長50kmにもなる海岸に波の状態を監視するカメラを設置し、全域にWi-Fi環境も整備している。ライフガードの拠点となる施設には集められた波・風の情報をリアルタイムに表示するモニタがズラリと並べられるなど、情報の取得や共有にITを積極的に組織だって活用している。

今回のYOGA TABLETの取り組みは、まだ導入して最初の年ということもあるが、レノボ・ジャパンが一企業として協力し、波や風の情報を予測するWebアプリの「WindGuru」や、ウェザーニューズなどの提供する天候情報といった一般的な情報を"効率よく"活用している、という段階だ。どちらかと言えば、草の根の活動といった様子である。

海外とは、海に対する文化やビジネスの違いもあるだろう。「海外の海水浴場が、完全に観光用に整備した人工的なリゾートであるのに対し、日本の海水浴場は、海とともに生きるという日本人の感覚に沿ってそれぞれ楽しむもので、認識に違いがある」と朽木氏も違いを語っていた。ライフセービング携わるライフガードの待遇でも、件のゴールドコーストでは、警察、消防に並ぶ組織として、ライフガードは公務員として働いており(朽木氏もその一人で、海水浴期間のこの時期だけセービング技術交流の目的もあり日本で活動している)、日本のライフガードが基本的にボランティアベースであることとは違いがある。

今回取材に協力してくれた鎌倉ライフガードの皆さん

そんなわけで、海外と単純に比較するのは難しいだろう。しかしながら、人の命を守る必要性は共通だ。自治体単位でのサポートなど、大きな規模で取り組むのは、すぐには難しいのかもしれないが、海水浴客の減少が現実問題になっている海岸も増えていると聞く。完全な観光ビーチ化が馴染むかどうかは別として、安全に楽しめる海水浴場を目指すことは誰もが望むと思う。レノボ・ジャパンの今回のような取り組みが、成功例として後に続いていけば、と期待したい。