スマートデバイス向けWebコミックサービス「comico(コミコ)」を展開しているNHN PlayArtは、ペンタブレット製品メーカーのワコムと、マンガ・イラスト制作ソフトをリリースしているセルシスの協力のもと、このほど渋谷ヒカリエにて『第2回フルカラーデジタルマンガ制作入門講座』を開催した。

フルデジタルへの移行を考えているマンガ制作者に向けた同講座では、「ペンタブレットの環境構築入門講座」「クリップスタジオ入門講座」「『comico』スタイルコミック制作入門編」という3つのプログラムが実施されたほか、別室にて「タブレット体験コーナー」を開設。今回のレポートでは、ワコムのスタッフがペンタブレットの選び方から初期設定までの紹介した「ペンタブレットの環境構築入門講座」の様子を紹介する。

ペンタブレットにはどんな製品があるのか

ワコムでは、2013年9月に新製品「Intuos」と「IntuosPro」を発売すると同時にブランドチェンジを実施。これまで「Bamboo」の名称だったコンシューマー向けペンタブレット製品を「Intuos」に、プロフェッショナル向けの「Intuos5」を「Intuos Pro」に改名し、板モノのペンタブレット製品名は「Intuos」に統一された。

新旧ブランドの比較

「Intuos」と「IntuosPro」では、対応する筆圧レベルが異なっており、「Intuos」は従来の「Bamboo」と同じ1,024レベル、「Intuos Pro」は従来の「Intuos5」と同じ2,048レベルとなっている。筆圧レベルが高いほど、微妙な力加減が描画に反映されるため、紙とペンに近い描き心地になるのだ。また、「Bamboo」から「Intuos」へ移行した場合や、「Intuos5」から「Intuos Pro」へ移行した場合は、今まで使っていたペンを引き続き使用できるため、従来の製品で使っていたペンを使い続けたい人は覚えておこう。

「Cintiq」シリーズ

「Intuos」シリーズのほかには、液晶ペンタブレットの「Cintiq」シリーズもある。「Cintiq」は、画面サイズによって13インチ・22インチ・24インチの製品に分かれているが、違っているのは画面サイズだけではない。例えば、22インチと24インチには、タッチ操作が行えるモデルが用意されていたり、24インチはAdobeRGBのカバー率97%という高性能液晶が採用されているので、印刷を視野に入れたカラー作品の制作に向いている。さらに、13インチには、Windows8が動作するタブレットPCタイプの「Cintiq Companion」や、Androidが動作する「Cintiq Comapnion Hybrid」という機種もあるのだ。

ペンタブレットのサイズの選び方

「IntuosPro」は、Small・Medium・Largeという3つのサイズ展開を行っているが、ペンタブレットを購入しようとしている人からは、「自分はどのサイズを選択すれば良いのか」といった質問が多く寄せられるという。

サイズ選びの基準となるのは、描画を行う際に使用しているディスプレイのサイズだ。ペンタブレットはカーソルを絶対座標で動かすため、入力エリアの右端にペンを置くと画面上のカーソルも右端に移動し、次に左端にペンを移動すると画面上でもカーソルが一気に左端に移動する仕組みになっている。そのため、ペンタブレットの入力エリアサイズとディスプレイサイズが近ければ、ペンタブレット上で描いた絵とディスプレイに表示される絵のサイズも近くなるのだ。

ペンタブレットのサイズの選び方

目安としては、ディスプレイサイズが15インチ以下ならペンタブレットはSmallサイズ、15~24インチならMediumサイズ、24インチ以上ならLargeサイズがおすすめとのこと。なお、この基準は絶対ではなく、ディスプレイ上で拡大表示機能を多用する人は、ディスプレイサイズとは関係なくSmallサイズでも十分に作業が行えるため、自分が扱いやすいサイズを選ぶことも大切だ。

知っておきたい設定とペンや芯の使い分け

ペンタブレットを筆圧感知に対応したソフトで使用すると、線の太さや色の濃さを筆圧で調節することができる。しかし、人によっては筆圧が弱くて感知されにくかったり、強い筆圧で太い線を描くことが多いとペン先が潰れてしまう場合もあるので、筆圧の感度を調節する設定を覚えておこう。

「ペン先の感触」を調節する

Windowsの場合は「タブレットのプロパティ」を開いて、入力デバイスからペンを選択すると「ペン先の感触」というスライドバーが表示される。このスライドバーを「柔らかい」もしくは「硬い」の方向にスライドさせれば、筆圧感度の調節が可能だ。また、「Intuos4」「Intuos5」「IntuosPro」の3機種では、「カスタマイズ」ボタンをクリックすると、「筆圧カープ」というグラフを使って細かな調節が行える画面も表示される。アプリケーション別に筆圧の設定を変更することも可能だ。

なお、「IntuosPro」などのWindows用ドライバソフトでは、初期状態で2,048レベルの筆圧感知が機能しない設定になっている。これは、1,024レベルまでしか対応していないアプリケーションのための設定なので、2,048レベル対応のアプリケーションを使用する場合は、この設定を解除しておこう。Mac OS Xの場合は、自動的に2,048レベルに対応するようになっている。

ペンや芯(ペン先)の使い分け

ペンや芯(ペン先)の使い分けでは、芯を変更することで描き味を調節したり、用途や自分の手の大きさに合わせたペンの使い分けなどを解説。「IntuosPro」などでは、標準芯のほかに、ハードフェルト芯、エラストマー芯、ストローク芯が付属しており、ハードフェルト芯やエラストマー芯は、標準芯よりも摩擦抵抗が欲しい場合に使用し、ストローク芯はスピリングが組み込まれており跳ねなどを表現しやすくなっている。ただし、液晶ペンタブレットの「Cintiq」シリーズでは、画面に傷が付くなどの理由からエラストマー芯などの使用が制限されているので注意しよう。

ペンの使い分けでは、標準で付属しているグリップペンのほかに、ペン軸が細いクラシックペン、対応するアプリケーションで使用するとペン側でインク量の調節が行えるエアブラシ、傾きだけではなく回転も検出するアートペン、ボールペンの芯が装着できるインクペンが紹介された。ペン軸が太いと疲れやすい人や、手の小さな人にはクラシックペンがおすすめで、エアブラシは実際のエアブラシのような効果を出したい塗りの作業で、アートペンはより実際のペンに近い感覚で描きたい場合に、インクペンはタブレットに紙を敷いて使うことで、実際に絵を描きながら入力が可能となる。

講座の後は、別室に用意された「タブレット体験コーナー」で、「Cintiq」シリーズや「Intuos」シリーズを使って実際に絵を描くことができた。ネット通販専用で店頭で触れることができない「Cintiq Companion」を試すこともでき、フルデジタル環境への移行を考えている人にとって有意義な時間となったはずだ。

「タブレット体験コーナー」の様子