日本でも最近、ダイエットやお肌にいいなどと耳にするようになった薬膳デザートの「亀ゼリー」。亀ゼリーは日本語での通称であり、中国や香港では「亀苓膏(きれいこう)」と呼ばれている。香港では老若男女問わず、早朝から飲んだ後まで、また、風邪気味や夏バテなどで調子が悪いと感じたら、すぐさま亀ゼリーを食べるそうだ。そんな亀ゼリーの老舗の味はやっぱり苦めなのか、実際に体験してみた。

香港最古の亀ゼリー本舗「恭和堂」、店内にもその歴史を感じる

亀の腹甲を煮込んだ中国伝統の薬膳ゼリー

亀といっても一匹まるごとを使うのではなく、亀ゼリーは亀の腹筋というかおなかの板の部分の「腹甲」を煎じてつくる。ちなみに、もともとは「金銭亀」という種類の高級亀を使っていたそうだが、現在では金銭亀は絶滅危惧種に指定されているため、草亀など他の亀を使うところが多いそうだ。

この腹甲を干して粉末にしたものと、解毒や利尿作用のある土茯苓(ドブクリョウ)など何十種もの生薬を混ぜて煮込んだものが亀ゼリーである。ゼラチンを入れて固めるのではなく、加熱されて凝固したたんぱく質がゼリー状になるため、ナチュラルなたんぱく質、つまりコラーゲンの固まりなのだ。

厨房でできたてのゼリーは温かいまま。なお、体温を下げるため、生理中の女性や冷え性の人は飲んではいけないという

苦みと甘みが押し寄せる

「恭和堂」は香港市内に10店舗ある

もともとは亀ゼリーは、中国華南地方で健康食品として用いられていたそうで、清王朝の時代には宮廷の甜品(デザート)として珍重されていたという。宮廷医が仕事を辞めて田舎に戻った時に、夏バテした農民にこのレシピを処方したところ効き目があり、民間に伝わっていったという。その宮廷医の子孫が1904年に創業したのが、香港最古の亀ゼリー本舗「恭和堂」である。

1杯48香港ドル(約630円)でゼリー自体は薬膳のため、甘い味付けは一切なし。煮込む時に入れる生薬の種類や分量などが店によって違い、シロップやハチミツ、麦芽糖などをかけて食べやすくしているのだ。このゼリーの苦さとトッピングの甘みとの絶妙なバランスが、店ごとの特徴の出しどころ。

ゼリーだけで食べると顔をしかめるしかないので、甘いのが苦手な人でも少量のシロップをかけるのがおすすめだ。甘いのが気にならなければ、シロップをたっぷりと入れて一気にゼリーを流し込むと、スイーツとして楽しめる味わいに。シロップは甘すぎずさらっとしていて後味もいい。ただし、シロップとゼリーが調和するというものではないため、最後まで相いれることはない。ゼリーのつるっとした食感と生薬の苦味があくまでメインで、シロップは名脇役といったところだ。なお、店内には亀ゼリーのほか薬膳茶も約10種あり、洋梨と中国杏仁の雪梨茶は11香港ドル(約150円)となっている。

亀ゼリーをすくって、自分でシロップとあわせる。1杯48香港ドル(約630円)

夏バテ防止にニキビ対策も!?

元来亀ゼリーは、体内にたまった熱気を冷ますため、解毒・解熱・暑気払いの特効薬として処方し、民間に広まってきた。最近では炎症を抑えたり、細胞の活性化や免疫力を高めたりなどの働きがあることも分かってきていて、ガン予防にもなるという考えもあるようだ。

また、解熱作用が血流をよくするので、循環がよくないためにできるニキビや吹き出物にもいいとされ、タンパク源とあいまって肌にもいいのもうなずける。体内から外側まですっきりさせ、万病予防にもなるというすぐれもの、まさに食べる薬なのである。

※1香港ドル=13.2円で換算。記事中の価格・情報は2014年6月取材時のもの