PCパーツを定格以上の周波数で動作させ、PCの性能を引き上げるオーバークロック。CPUやグラフィックスカードをオーバークロックし、動画のエンコード時間を短くしたり、より快適にゲームが動くようにしているユーザーも多いことだろう。だがメモリのオーバークロックについては、その効果が分かりにくいうえ、設定項目が多く、気軽に手を出すのが難しいのが現状だ。

そんな中、Kingston Technologyから、初心者やゲーマーに向けたメモリ製品「HyperX FURY」シリーズが発売された。オーバークロックメモリは通常、BIOS画面からオーバークロック用設定を選択するか、クロックやメモリタイミングの値を自ら設定しなければ、その効果を最大限に発揮できない。オーバークロック用設定には、Intel環境用の「XMP」やAMD環境用の「AMP」があるため、これらの規格に対応したメモリを選択し、手動でBIOS画面から設定を変えるのが一般的といえる。

しかし「HyperX FURY」シリーズは、システムに応じた許容範囲内で自動的にオーバークロックを行ってくれる。BIOS画面での手動設定を行うことなく、すぐにオーバークロックで使えるという特徴を備えている。今回はこの気軽にオーバークロックを体験できる「HyperX FURY」がシステムに与える影響について確認していく。

Kingstonのオーバークロックメモリ「HyperX FURY」シリーズ

システムの許容範囲まで自動でオーバークロック

Kingstonのオーバークロックメモリブランド「HyperX」の中で、エントリーレベルに位置づけられているDDR3メモリ「HyperX FURY」シリーズ。スタイリッシュな小型のヒートシンクを搭載しており、CPUクーラーなどとの干渉を気にせずに取り付けが可能。動作クロックは1333MHz、1600MHz、1866MHzの3タイプが用意されており、それぞれの周波数に対して4GBと8GBのモジュールをラインナップしている。デュアルチャネル動作用に2枚一組のモデルも用意されているので、通常はこちらを選ぶことになるだろう。

今回試用したのは、1866MHzの4GBのメモリを2枚1組とした「HX318C10FRK2/8」(赤)と「HX318C10FK2/8」(青)の2製品。白、黒、赤、青のカラフルな4色のバリエーションがあるが、モデルごとのスペックは同一であるため、Intel環境なら青、AMD環境なら赤といったように、好みに合わせて選ぶことができる。

「HX318C10FRK2/8」。赤いヒートシンクが取り付けられた4GBのDDR3-1866モジュールが2枚一組になったモデルだ

「HX318C10FK2/8」。こちらは青いヒートシンクが付けられたモデル。スペックは「HX318C10FRK2/8」とまったく同じ

1866MHzで動作するメモリであるため、検証環境にも1866MHzに対応したシステムを用意した。CPUには"Richland"というコードネームで知られる、AMDの「A10-6800K」、マザーボードには、GIGABYTEの「GA-F2A85X-UP4」だ。「A10-6800K」は、組み合わせるメモリのクロックが内蔵グラフィックスの速度に影響を与えることが知られているので、メモリ速度の向上による恩恵がわかりやすいだろう。

AMDのCPU「A10-6800K」。GPUを内蔵しており、メモリの速度が上がることでグラフィックス性能も向上する

GIGABYTEのマザーボード「GA-F2A85X-UP4」。1866~1066MHzのメモリに正式対応しており、2400MHzまで設定できる

さっそくメモリを挿して起動し、BIOS画面から数値を確認。確かに何も設定しなくても、"Auto"のままクロック周波数1866GHzで動作が確認できた。メモリタイミングは「10-11-10-30」に設定されている。BIOS設定を変えることなく、初心者でも簡単にオーバークロックメモリの恩恵を受けられるのはうれしい。次ページでは、メモリクロックの向上がシステムにどんな影響を与えるか確認していこう。