【レポート】

森下九段とツツカナが創り出したもの「第3回将棋電王戦」第4局 - 好敵手から生まれた名勝負の秘密

1 プロ側が敗れると団体戦の敗北が決まる戦いに、矢倉の伝道師が挑む

宮本橘  [2014/04/11]
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20時38分、森下卓九段投了。
団体戦としての「第3回将棋電王戦」は、この瞬間に決着した。

第4局の会場となった小田原城

団体戦の敗北という事実は重い。しかし、大会の総括を論じるのは最終戦を終えてからでいいだろう。ここでは、大熱戦となった第4局の内容にできるだけ迫ってみたい。

将棋のプロ棋士とコンピュータ将棋ソフトが戦う「第3回将棋電王戦」第4局、森下卓九段対ツツカナ(開発者:一丸貴則氏)の一戦が、4月5日に神奈川県・小田原城で行われた。対戦形式は5対5の団体戦で、ここまで将棋ソフトの2勝1敗。プロ側が敗れれば団体戦の敗北が決まる戦いだ。

実際の対局場は小田原城址公園内の「銅(あかがね)門」の中に設営された

「矢倉は将棋の純文学である」

将棋電王戦の創設に尽力した、故・米長邦雄永世棋聖の言葉である。

「矢倉」というのは将棋の戦法名のひとつのこと。将棋の戦法は大きな分類でざっと10種類ほどあるが、こんな例えをされる戦法は他にない。プロ棋士にとって、矢倉は特別な戦法なのだ。

本局は、先手のツツカナと後手の森下九段の呼吸がぴたりと合って、一直線に矢倉に進んだ。大一番に相応しい戦いの幕開けである。

矢倉の伝道師・森下卓

森下卓九段は、1980年台後半から90年台前半にかけて大活躍した棋士。勝率は常にトップクラス、タイトル戦にも次々と出場した。その活躍の原動力となったのが矢倉戦法である。その中でも「森下システム」と呼ばれる作戦の体系は、森下九段が築き上げた偉大な定跡であり、矢倉の進化と発展に大きな影響を与えた。

森下卓九段

矢倉戦法でトッププロの地位を築いた森下九段は、1999年に『現代矢倉の思想』、『現代矢倉の闘い』(河出書房新社刊)の2冊の矢倉の定跡書を記している。矢倉党のバイブル的な棋書となっており、この本で矢倉を学んだという将棋ファンも多いだろう。森下九段は将棋ファンにとって、矢倉の伝道師なのである。その伝道師が、矢倉で電王戦に挑む。矢倉ファンにとってこれほど燃えるシチュエーションはない。

森下将棋の特徴は、とにかく「勝ち急がない」こと。力を溜めて溜めて、そろそろ爆発させる頃合いか、という局面でもまだ溜める。焦れた相手が無理に攻めて来れば、万全の態勢で迎え撃ち、相手が出て来なければ、一歩一歩確実に追い詰めて寄り切る。王道を行く横綱相撲が森下九段の将棋だ。

ただ、そういった将棋は中盤が長く、ねじり合いになる。中盤の長い将棋はコンピュータがもっとも得意とするところ。これまでの電王戦を見る限り、中盤の長い将棋でプロ棋士が勝った例はない。果たして森下九段は、対コンピュータ戦に特化した中盤の短い作戦を用いるのか、それとも自分らしいスタイルで勝負するのだろうか。

銅門から入場する森下九段

森下九段は非常に礼儀正しい人で、常に深々とお辞儀をすることで有名だ。しかし今回は深くお辞儀をすると電王手くんのセンサーが反応してしまうので、浅めのお辞儀を長くしていた

小田原城址公園は桜が満開

お堀越しに見た銅門

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インデックス

目次
(1) プロ側が敗れると団体戦の敗北が決まる戦いに、矢倉の伝道師が挑む
(2) コンピュータの思考から学ぶもの
(3) 矢倉伝道師の面目躍如の一手
(4) 検討陣がのけぞる攻防
(5) 「まるで、ツツカナの方が森下九段のようだ」

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