レノボ・ジャパンが満を持してを投入したWindowsタブレット「ThinkPad 8」。これまで、既に多くのタブレットPCを投入してきた同社だけに、ノウハウは十分、ThinkPad 8もすんなりと開発できたのだろうと思っていたら、どうやら違うらしい。製品発表会では「サラッと」流しすぎたと、同社広報担当者がちょっぴり後悔するくらい、ThinkPad 8の開発には苦労があったとのこと。そのあたりのところを、レノボ 大和研究所で実際に開発に関わった開発陣に伺ってきた。
今回お話を伺ったレノボ・ジャパン 部長 大和研究所 タブレット開発の加藤敬幸氏(左)、レノボ・ジャパン マネージャ タブレット開発・タブレットソフトウェアの内田宏幸氏(中央)、レノボ・ジャパン ThinkPad 液晶&タッチ開発のテイ・イ氏 |
時代によって移り変わるThinkPadのコンセプト
レノボのBay-Trailタブレットとしては、先行するMiix、そしてThinkPad 8という2つの製品をラインナップしている。大和研究所でタブレット開発を担当する加藤敬幸氏は、Miixとの違いとして、「ThinkPad 8は"プレミアム製品"として位置づけられ、Bay-Trail Atomで一番速いCPU、そして8.3インチWUXGAという大画面で高解像度な液晶パネルを採用した」と、そのポジショニングを説明した。
そしてもうひとつ、"ThinkPad"ブランドの製品そのものとしても変化があると言う。これは先の製品発表会でも触れられたところで、質実剛健一本で主に企業内のPC選択に関し決定権を持つ立場の方をターゲットにしていたThinkPadが、ビジネスユーザー全体、そして一般顧客に対してもデザインや機能でアピールしていくようになるといった変化だ。
その動機については、「BYOD」をキーワードに挙げた。BYOD(Bring Your Own Device)は、企業内で社員が個人所有のIT機器を持ち込み、それを業務に使用するといった意味の頭文字をとったもの。実際のところでは、セキュリティ上の観点から企業側が社員の使うPCとしていくつかの候補を提示し、そこから社員がPCを選択するといった手法もあるらしい。そのように使用者が製品を選択することが一般的になってくると、ThinkPadを広く一般顧客にアピールしていく必要が出てきたと言う。
ThinkPad 8で盛り込まれたポイントとしては、デザイン面では「アルミボディ」、使い勝手の面ではクイックショットカバーによる「カメラ機能の使いやすさ」などが挙げられる。
アルミボディなのに感度良く電波を捉えるWi-Fiアンテナ開発
ThinkPad 8は、背面カバーに全面アルミ素材を採用している。そもそも、金属素材は電波を通しにくいため、これを避ける方法としては、異素材を組み合わせる、例えば一部にカーボンを用いるなどの手法が一般的には用いられている。しかし、今回レノボは質感の面で、全面のアルミ素材にこだわった。
ThinkPad 8のWi-Fiアンテナは、本体を縦持ちした状態で裏面下端にある左右スピーカーの下に内蔵されている。加藤氏によると、アンテナレイアウトの前提として、液晶パネルと重ねることはできないため、つまり残るスペースは液晶パネルの上下、または左右ということになる。ただし、左右に関しては、本体を「片手で持てる」(それも手の小さなアジア人でも持てる)こと、そして可能な限り大きな液晶パネルを搭載することという2点から、ギリギリのスペースとなっているためムリだったと言う。こうした消去法で、液晶パネルの上下のスペースに決まったとのことだ。ちなみに、下のスペースがWi-Fiアンテナで、上のスペースは、LTEアンテナ用となっている。現状、LTEに対応していない国内Wi-Fiモデルでは、上は空きスペースとなっている。
液晶パネルの下側、左右スピーカー裏にレイアウトされたアンテナだが、冒頭のとおり、裏面カバーにアルミ素材を用いているため、何の工夫もナシでは電波を掴めない。そこで、ThinkPad 8のアンテナは、アルミ素材に合わせた特別のチューニングが施されている。電波を捉えた後に、外部回路のアンプで増幅し信号レベルを高めたり、何度も試行錯誤し共振特性やアースなども工夫することで、アルミ素材、片手で持てるサイズ、大きな液晶パネルというコンセプトを満たしつつ、しっかりと電波を捉える快適なWi-Fi線通信を実現した。