「女装男子」という言葉を聞いたことがあるだろうか。女装をする男性がここ数年で増えてきているというのだ。そして、最近の女装男子はかなりかわいいらしい。そこで真相を確かめるべく、ツイッターやブログで「女装」と検索してみると、女装男子の画像が山のように出てくるではないか。中には「これ、本当に男性なの? 」と疑ってしまうほどに、お美しい方もいる。

女子会だよね、うんうん。と思いきや、全員女装男子である

確かに女装をする男性は結構な数がいるようだし、そのクオリティーもかなりのもの。だが、なぜ今になって女装男子が急激に増えてきているのだろうか。そこで、ニコニコ動画などネットを中心に活動している女装チーム「魔女会」の皆さん(ペシュさん、ありすなおさん、西男さん、王子さん)にお話を伺ってみた。

「かわいい」と言ってもらえることが何よりも快感

4人とも30歳前後と立派な大人だが、そもそもなぜ女装を始めたのだろうか。「高校生の頃にファミレスでアルバイトしていたんですが、先輩に無理やりウエイトレスの格好をさせられたんです。そしたら意外とお客さんの反応が良かったのがうれしくて、女装にハマっちゃいました」(王子さん)。自ら進んで女装を始めたわけではなく、ちょっとしたキッカケで目覚めてしまったようだ。

「魔女会」のペシュさん(写真左)と王子さん(右)。女性が見ても「か、かわいい……」「(私よりかわいくて)ヤバい……」との声が

また、「普段はごく普通のサラリーマンで、その現実逃避として女装をしています。ただ女装はあくまでも趣味で、恋愛対象はもちろん女の子です」(西男さん)と、日常のストレスを発散するために女装をしている方もいる。

そう、勘違いしてはいけないのが、女装をしているからといって彼らの恋愛対象が男性というわけではないのである。見た目は女の子でも、中身は男性なのだ。しかも、「正直、女友達よりも自分の方がかわいいと思ってます(笑)」(ペシュさん)と、自身の容姿に自尊の気持ちもあるようで、SNSなどで自分の女装姿を公開するのも、周りの人から「かわいい」と言われることに充実感を覚えるからだとか。

しかし、それでも女装をしている男性はマイノリティー。家族や友人の反応はどうなのだろうか。「みんな興味津々で、一緒に買い物もしますよ。女装男子は周りに100人くらいいますし、友達も増えましたね」(王子さん)とのことで、意外に知人の反応も良く、逆に交友関係も広がっているそうだ。昔に比べると女装に抵抗がなくなってきているのかもしれない。一方で、「ただ、トイレは困りますね。この格好で男性用のトイレに入ると迷惑になるので、基本的には男女共用のトイレがない限り我慢します」(ありすなおさん)と、女装男子ならではのトイレ事情がある模様だ。

女装がブームになりつつある要因とは

話を伺う限り、「女装」はここ数年で一種のカルチャーとして容認されつつあるらしい。それにしてもなぜ、最近になって女装がちょっとしたブームになっているのだろうか。

「ビジュアル系バンドなどを見て育っていたり、オネエブームなどでメディア的にも露出が増えていたりするので、世間的な拒否反応が少なくなってきているのではないでしょうか」(ありすなおさん)。

世相の変化とともに女装も受け入れられるようになってきているということか。また、インターネットの普及によって女装に関する情報を入手しやすくなり、ネット通販によって対面でなくても女装用品が入手できるようになり、最初の一歩を踏み出しやすくなったことも一つの要因と見ているようだ。

じわじわと広がりを見せていっている女装の世界だが、「今はまだ一部でしか認知されていませんし、誰かが動かないと大衆に受け入れられるものにはならないと思います」(西男さん)と言うように、女装男子のカリスマ的存在が現れれば、コスプレが一般的なものになったことと同様、女装も日本の代表的な文化になり得るかもしれない。

(文・A4studio 千葉雄樹)