電子書店パピレスが運営し、コミックから小説、実用書、雑誌、グラビアと幅広いジャンルの電子書籍を取りそろえている電子貸本サイト「Renta!」。特にコミックは、少年漫画、少女漫画、ティーンズラブ、レディース、青年漫画、4コマ、萌え、サブカル、ボーイズラブなど最も豊富なラインナップを誇っているが、今回はその中からルポ・エッセイ漫画の3月の月間ランキング上位作品をピックアップして紹介していこう。

私たちは繁殖している

『私たちは繁殖している』内田春菊(ぶんか社)

内田春菊の「私たちは繁殖している」は、著者が実際に体験した妊娠・出産にまつわる、著者目線の問題点や解決法などを書いたルポタージュである。もし育児に行き詰まった人がこれを読んだら、“完璧じゃなくてもいいんだ”とホッとできるか、“こんなのありえない!”と反発を覚えるか、そのどちらかだろう。そんな問題作だからこそ、発表から20年経った今でも語り継がれているのだ。いわゆる育児書というよりは、著者個人の体験談として、気楽に読む方が爽快だ。子供が病気でも病院に行かない、小児科の医師の話を聞かないなど、子育てに関する定石を覆す子育て書。ただ決して著者が、適当だったり、無責任だったりするわけではなく、子供に対する愛情たっぷり、世間一般の“育児”に問題を投げかける、今なお問題作である。代わる代わる変わる男に辟易するかもしれないが、本当の子育てとはこういうものなのかもしれない、と何か気づかせてくれるような啓蒙書と言っていいかもしれない。

31歳BLマンガ家が婚活するとこうなる

『31歳BLマンガ家が婚活するとこうなる』御手洗直子(新書館)

御手洗直子の「31歳BLマンガ家が婚活するとこうなる」は、いわゆる婚活本によくあるであろう、モテ指南ではない。婚活は、風呂に入って服を着替えるところから唐突に始まる。何せ服を脱ぐのも面倒で、4日に一度しか入浴しない生活だったのだ……。定めた期限内についに結婚というゴールで完結する著者は、果たしてどんな手法を使ったのか? 自分のプロフィール設定も、嘘は書かないが事実も書かない(というか書けず)詐欺? スレスレの手法、写真の加工技術、毎日何百通と来るメール捌きの詳細な“婚活の裏技”が、ここでは惜しげもなく披露される。謎の多いBL漫画家という職業だが、それにしてもこんな生粋の引きこもり腐女子と結婚した旦那様は、その瘴気にあてられないのだろうか? 編集後記では結婚相手との日常も少しだけ披露されているが、それは婚活の結末とともにご自身の目で確認していただきたい。結婚生活編の続編が出たら読んでみたいと思える読後感の良い本である。

100回お見合いしたヲタ女子の婚活記

『100回お見合いしたヲタ女子の婚活記』肉子(宙出版)

苦行と書いてデートと読む……肉子の「100回お見合いしたヲタ女子の婚活記」は、タイトルそのまま、ゲーム、漫画好きのアラサー・ヲタ女子を自称する著者が、100回くらいお見合いをしたという、26歳から3年間の壮絶なルポタージュ。生粋の喪女であり、腐女子であると断言する著者、自虐的に自分を豚に見立て描くことで、この漫画は“勝った”と言えるのではないか? 150人以上が参加するお見合いパーティや婚活中に車で拉致、親のお見合いの会など、リアルな体験談が面白い。最後まで主人公のライフワーク(?)とも言うべきオタク道は貫かれているものの、著者の守備範囲は80年代少年&少女マンガから名作ゲーム。男性や拒否感がある人もクスッと笑ってしまうポイントが満載で、懐かしいパロディを楽しむのも一考。婚活にかけた時間は、自分の成長に必要な時間だったと回想する主人公。受け身で依存的な小娘だった“豚”が、しなやかに変わって行く様が、意外な爽快感を与えてくれる。

1位はbeccoの『父が、67歳で恋をした。~まさかのシルバー婚活ものがたり~』、4位はあらた真琴の『モット!となりの席は外国人』、9位は倉田真由美の『だめんず・うぉ~か~』などがランクインしている。なお3月のルポ・エッセイ漫画は以下の通り。

順位 作品タイトル 著者/原作者名
1位 父が、67歳で恋をした。~まさかのシルバー婚活ものがたり~ becco
2位 私たちは繁殖している 内田春菊
3位 31歳BLマンガ家が婚活するとこうなる 御手洗直子
4位 モット!となりの席は外国人 あらた真琴
5位 100回お見合いしたヲタ女子の婚活記 肉子
6位 インド夫婦茶碗 流水りんこ
7位 りこん猫 石田敦子
8位 性別が、ない! 新井祥
9位 だめんず・うぉ~か~ 倉田真由美
10位 となりの席は外国人 あらた真琴