コンピュータ対プロ棋士、これまでの戦いの歴史は以下のようになっている。

・2006年 渡辺明竜王 ○-● ボナンザ
2010年 清水市代女流王将 ●-○ あから2010
・2012年 故・米長邦雄永世棋聖 ●-○ ボンクラーズ(第1回将棋電王戦)
2013年 現役プロ棋士代表 ●-○ コンピュータ将棋代表(第2回将棋電王戦)

コンピュータ将棋の開発が始まったのは1970年台半ばと言われている。当初は一般に出回ることもなく、そのレベルも将棋のルールを守って指すことができるかどうか、と言う程度のものだったようだ。それが1980年台には市販ソフトとして発売され、さらに1990年には「コンピュータ将棋選手権」が開始。以降はコンピュータ自体の性能が飛躍的にアップしたこともあり、右肩上がりに実力を伸ばしてきた。

そして表にある2006年頃には、コンピュータに親しんでいる若手プロ棋士の間で、当時革新的な技術を用いて選手権優勝を飾った「ボナンザ」が相当に強いと噂されるようになる。そしてついに、最強タイトルホルダーである、渡辺明竜王(肩書きは当時)がコンピュータとの戦いに臨むことになる。

以降の結果は表のとおりで、初戦に渡辺竜王が勝利した以降は、プロ側が連戦連敗を喫している。巷では「もうコンピュータの実力はプロ棋士を超えている」とまで言われているのが現状。

第2回将棋電王戦でプロ側が敗戦した直後の記者会見。プロ棋士はがっくりとうなだれている

ただし、プロ棋士側は完全に白旗を掲げたわけではない。「第2回将棋電王戦」では、コンピュータの実力を過小評価したことで不覚を取った。しかし「相手の力を正確に知ったうえで、しっかりと研究して挑めば、勝機は十二分にある」というのがプロ側主張であり、応援するファンもその言葉を信じているのである。

対戦カードと展望

では「第3回将棋電王戦」の対戦カードと展望を紹介しておこう。なお、プロ棋士代表については、出場棋士発表の際のまとめ記事に詳しく記載しているので参照していただきたい。

第1局 菅井竜也五段-習甦(開発者・竹内章氏)

第1局はプロ側にとって非常に大きな意味を持つ対戦だろう。出場者中最年少の21歳の菅井五段だが、客観的に見てプロ5人の中では3番目の実力を持つと筆者は見ている。つまり菅井五段が勝てば、プロ側は勝ち越しの目途が立つというわけである。

第2局 佐藤紳哉六段-やねうら王(開発者・やねうらお氏)

「砂糖のように甘い言葉で深夜に君を寝かさない」

いきなりなんのこっちゃ、と思うだろうが、佐藤六段自身が標榜するキャッチフレーズである。将棋の実力には定評があるが、ハッキリ言って変わり者。そして相手のやねうら王の開発者、やねうらお氏もユニークな方と言われている。うーむ……この勝負に関してだけはどうなるのか予想がつかない。

第3局 豊島将之七段-YSS(開発者・山下宏氏)

豊島七段は若手だが、近い将来トッププロとして活躍することが確実視されるほどの棋士。今回の出場者中では大将の屋敷九段に並ぶほどの実力と言える。相手のYSSは世界コンピュータ将棋選手権で3度の優勝経歴を誇る古豪だが、現在の最強ソフトには少し劣るだろう。となれば、プロ側としては絶対に落とせない戦いになるだろう。

第4局 森下卓九段-ツツカナ(開発者・一丸貴則氏)

ベテランの森下九段について、対コンピュータ戦の適性に不安がない、と言えば嘘になるだろう。ただ、前回の塚田泰明九段の戦いぶりを見て分かるように、ベテラン強豪棋士の勝負へのこだわりは凄い。プロ棋士の意地とプライドがもっとも現れるのがこの戦いかもしれない。

第5局 屋敷伸之九段-ponanza(開発者・山本一成氏、下山晃氏)

トッププロ、屋敷九段の実力に関しては疑いようがない。ただし、相手のponanzaもコンピュータ将棋界で間違いなく最強のソフトだ。この戦いに関しては、勝敗予想よりも、プロ同士のタイトル戦に匹敵するような名局を期待したい。……続きを読む