日本将棋連盟理事・片上大輔六段インタビュー

最後は、日本将棋連盟理事の片上大輔六段のインタビューをお届けしたい。「第3回将棋電王戦」の展望や、準備の状況などについて話を聞いた。

日本将棋連盟理事・片上大輔六段(第3回将棋電王戦出場棋士発表会にて)

―― いよいよ開幕が迫ってきましたが、棋士側の準備状況はいかがですか

片上:全体としての準備は、コンピュータに詳しい講師を招いて勉強会を2回行いました。出場する各棋士の準備に関しては、本番と同じ環境のハードとソフトを提供し、具体的なところは対局者自身におまかせしています。

――出場者以外の棋士も協力して対策を練ったりはしないのでしょうか

片上:対策を練るというのとは違いますが、将棋会館に本番と同じハードとソフトを用意して、出場者以外の棋士も練習対局できるようにしています。その対局の棋譜は出場者に提供し、研究の参考にしてもらっています。

――基礎的な知識や棋譜データは提供しても、具体的な研究は対局者個人に任せているわけですね

片上:そうですね。基本的に将棋は個人の勝負なので、棋士にとって集団で研究するスタイルは馴染まないという事情もありますね。

――各出場者の準備状況については何か話を聞いていますか

片上:第1局に登場する菅井五段とは1月頃に話をしたのですが、その時はまだ作戦に悩んでいると言っていました。それから豊島七段と佐藤六段は本番と同じ5時間の持ち時間で練習対局をしてみたそうですが「かなり暇」だそうです。

――今大会はいくつかルールが変更されています。まず、本番と同じ環境で練習できることで、事前の研究で必勝手順が見つけ出せるのではないか、と言われていますがその点はいかがでしょうか

出場棋士発表会で抱負を語る菅井五段

片上:どうもそんなに単純な話ではないんです。私もひと通り練習対局をしてみたのですが、どのソフトもクセが出ないように研究されていて、そんなに簡単に必勝法が見つかる感じではありません。確認したわけではありませんが、たぶん誰も必勝法を見つけるという方向で研究している人はいないと思います。

――持ち時間が前回の4時間から5時間に伸びたことはプロ側に有利に働きますか?

片上:基本的には長いほうがいいとは思います。ただ、練習で長い持ち時間で対局することはかなり大変です。やっぱりコンピュータの前に座って長時間真剣に考え続けるというのは、プロと言えどもかなり難しいことですから。5時間の持ち時間を生かせるかどうかは、本番で戦ってみないと分からないというのが正直なところです。

――今回は会場が豪華なところばかりです。将棋会館以外で対局することに不安はありませんか?

片上:「電王戦タッグマッチ」や年末のリベンジマッチも将棋会館ではなかったのですが、ドワンゴさんの準備や運営が凄くしっかりしていて、まったく問題なく対局できました。ですから今回も不安はなく、安心して臨めると思っています。

片上六段が絶賛した電王戦タッグマッチの会場の様子

第3回将棋電王戦の出場ソフトを決定する「将棋電王トーナメント」の様子。左からツツカナの一丸氏、やねうら王のやねうらお氏、優勝ソフトponanzaの山本氏。この大会からコンピュータ側のハードが統一された

――最後になりますが、勝敗の展望をお願いします

片上:やはり人間のほうは勝負の流れが影響しますから、初戦が鍵だと思います。菅井五段が勝てば、全勝や4勝1敗が期待できます。逆に初戦を落とすと3勝2敗とか2勝3敗というラインになるかもしれません。

第3回電王戦記者発表会、新ルール発表の様子