パナソニック システムネットワークスは24日、高い堅牢性を持つPC「TOUGHPAD」シリーズの新製品として、初の音声通話機能を備えた5型HD液晶モデル2機種を発表した。

ラインナップと発売日は、OSにWindows Embedded 8 Handheldを搭載した「FZ-E1」が6月中旬、Android 4.2.2を搭載した「FZ-X1」が8月下旬。価格はオープンで、想定売価はいずれも130,000円前後。法人向けに提供される。

「FZ-E1」「FZ-X1」の発表に合わせ、都内で発表会が開催され、関係者らが登壇した(写真はモデル)

3G/LTE回線による音声通話機能を搭載した、5型HD液晶(1,280×720ドット)搭載タブレット。音声通話機能の搭載は「TOUGHPAD」シリーズで初となる。従来の「TOUGHPAD」シリーズ同様、主に工事現場や流通、小売事業など、雨や砂埃などが舞う厳しい環境での屋外利用を想定。米国国防総省の耐落下・衝撃規格「MIL-STD-810G」に準拠し、独自に3m高からの落下試験や、400gの鋼球を80cmの高さからガラス面に落とすなどの試験を行っている。

国内向けモデルはSIMロックとなり、3G/LTE回線の提供キャリアは検討中。一方、海外向けモデルではSIMフリーでの販売を検討中という。

Windows Embedded 8 Handheld搭載の「FZ-E1」。本体下部にハードウェアボタンを備える

防塵・防滴・防水性能はIP65/IP68に準拠し、水滴が液晶パネルに付いても誤動作しない、独自の「水滴誤動作防止機能」も搭載。設定により、ワンタッチで切り替えられる

工事現場や、消防隊員、バイクを使う配達員など、発表会ではモデルらが実際に製品を使用する現場をイメージした衣装で登場した

防塵・防滴・防水性能はIP65/IP68に準拠し、75μmの粉塵防止や、1.5mの水圧下で30分の防水耐性を持つ。動作可能温度は-20度から60度と広く、寒冷・炎暑対応試験もなされる。

特徴の1つとして、水滴が液晶についても誤動作しない独自の「水滴誤動作防止機能」を備え、雨天や水場の作業時でも快適に利用できるという。また、手袋を装着したままでもタッチ操作できる「好感度近接検知タッチパネル」も搭載する(これら2つの技術は特許出願中)。

マイクは前面に2、背面に1個の計3個を搭載。本体下部には100dBA出力できるスピーカー2基を設け、周囲の騒音を低減するノイズサプレッサー機能も備え、現場でのハンズフリー通話が可能だ。

本体重量は約430gと軽量ながら、6,200mAhの大容量バッテリを備え、3Aで急速充電した場合に1時間で50%の充電が可能。バッテリ駆動時間は約14時間(LTE接続時に30秒間隔でWebブラウジングを行った場合)。ほか、一次元/二次元の全36種対応バーコードリーダーや、高輝度フォトライト、ホットスワップ機能などを装備する。

本体の上側には36種対応のバーコードリーダーや、電源ボタン、イヤフォンジャックを備える

バッテリはユーザー側で取替えられる。ホットスワップ対応で、内蔵電池の駆動時間は約3分

「FZ-E1」および「FZ-X1」の仕様はほぼ同等で、OSとCPUが大きな違い。「FZ-E1」では、OSがWindows Embedded 8 Handheld、CPUがQualcomm MSM8974AB(2.3GHz)。「FZ-X1」では、OSがAndroid 4.2.2、CPUがQualcomm APQ8064T(1.7GHz)となる。なお、Windows Embedded 8は、Windows Phone 8をベースとした組込み型OSで、搭載端末を発表しているのは世界で4社のみ。パナソニックの参入は5社目で、国内では初採用となる。

その他の仕様は共通で、メモリは2GB、ストレージは32GB、ディスプレイは5型HD液晶(1,280×720ドット)で輝度は最大500cd/平方メートル。

本体サイズはH165×W87×D31mm、重量は約430g。カメラはフロント側が130万画素、リア側が800万画素。通信機能はIEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠の無線LAN、Bluetooth 4.0。インタフェースはUSB 2.0、microUSB(Type-B)、microSDカードスロット(SDHC/SDXC対応)、NFCなど。

「FZ-E1」前面

背面

右側面

左側面

「あらゆる屋外業務で使える」 - FZ-E1/FZ-X1発表会

「FZ-E1」および「FZ-X1」の発表に合わせ、都内で開催された発表会では、パナソニック AVCネットワークス社の宮部義幸社長や、パナソニック システムネットワークス ターミナルシステムビジネスユニット 商品開発室の武藤正樹室長ら関係者が登壇し、法人向け市場への戦略や、新しい「TOUGHPAD」の特徴が紹介された。

左から順に、パナソニック AVCネットワークス ITプロダクツ事業部の原田秀昭事業部長、日本マイクロソフトの代表執行役の樋口泰行社長、パナソニック AVCネットワークスの宮部義幸社長

法人向けモビリティ事業の戦略を紹介する宮部義幸社長

宮部社長は、法人向けモビリティ事業の戦略を解説。今後、移動通信網がLTEの100倍以上と想定されていることや、それに合わせて国内トラフィックが現状の30倍、インターネット接続端末も約500億台に増大するといった見込みがあり、「特に広域ワイヤレスでのITC化が加速する」と市場を想定する。

これにより「過酷な作業フィールド(環境)に合ったハードが必要とされている」とし、「スマートフォンで培った移動通信技術、TOUGHBOOKで培った堅牢性と長時間駆動、ハンディターミナルなどで培ったビジネスノウハウを組み合わせ、フィールドのITC化を進め、現場の効率化を図る」と展望を語った。

今後、移動通信網はLTEの100倍以上なるなど、ワイヤレスネットワークの進化は「桁違い」の速さ・ボリュームで進むと想定

従来は大型サーバなどハードウェアに環境を合わせていたが、ワイヤレスネットワークの進化でフィールド(環境)に合ったハードウェアが必要になる

パナソニック AVCネットワークス ITプロダクツ事業部の原田秀昭事業部長は、ITにプロダクツ事業部が1996年から展開してきた堅牢PC「TOUGHBOOK」、および堅牢タブレット「TOUGHPAD」について紹介。堅牢PC市場でのシェアは11年連続でトップという

新製品では物流や小売製造などの事業を想定し、携帯電話と業務用タブレットの2台持ちの解消など、新しい市場ニーズを開拓する

パナソニック システムネットワークス ターミナルシステムビジネスユニット 商品開発室の武藤正樹室長

パナソニック システムネットワークス ターミナルシステムビジネスユニット 商品開発室の武藤正樹室長は、商品の特徴を解説した。製品の大きなポイントは「耐衝撃性」「防水・防塵性能」「長時間駆動」の3点で、いずれも顧客から強い要望があったという。

中でもグローブ着用時の操作と雨天時の操作は、特に法人ユーザーから特に要望が多かった。このため、先述の通り、水滴に反応しにくい独自の「水滴誤動作防止機能」や、手袋を装着したままでも操作できる「好感度近接検知タッチパネル」といった独自のタッチパネルUIを備え、「あらゆる屋外業務で使えると信じている」と、新技術を力強くアピールした。

製品のラインナップ

シリーズで初めて音声通話もサポート

バッテリ駆動時間は14時間。ホットスワップにも対応

バーコードリーダーを備えるほか、多彩なオプション品も用意

耐衝撃試験の1つとして、400gの鋼球を80cm高さから落とすデモンストレーションも。なお、400gという重さは本体重量と近く、「逆に本体を80cmから落とす状況も想定している」という

会場でも、製品に上から水をかけた状態で製品を動かしたり、水滴による誤動作防止機能を試すデモンストレーションを行った

また、日本マイクロソフトの代表執行役の樋口泰行社長も、製品発表への祝辞を述べた。樋口氏は、日本初採用となったWindows Embedded 8について、「用途特価型のOSで、汎用的に使えることが大きなメリット。WordやExcelなども使え、セキュリティはマイクロソフトが責任を持って対応する」とコメントした。

握手を交わす原田秀昭事業部長、樋口泰行社長、宮部義幸社長の3人

質疑応答では、シリーズ初の音声通話対応の堅牢タブレットとして、2013年に「休止」を発表したスマートフォン事業との関連性や、Windows Embedded OSについて質問が挙がった。

同社は2013年秋冬モデルでコンシューマ向けスマートフォン事業から撤退。パナソニックモバイルコミュニケーションズの事業を、システムネットワークス社に振り分けるなどの事業統合を行ってきた。

法人向け市場はスマートフォンと異なり「規模を追うビジネスではなく、ユーザーの細かい要望に応えるビジネス」とした上で、宮部社長は「撤退した時点から市場状況は変更しておらず、現状ではリソースの転換を加速させたい」と、スマートフォン事業の復活は現時点ではないという考えを示した。

また、「FZ-E1」「FZ-X1」は、法人向け端末を扱うパナソニック システムネットワークス社、「TOUGHPAD」や「TOUGHBOOK」など堅牢PC・タブレットを扱うAVCネットワークス社のITプロダクツ事業部、そしてコンシューマ向けスマートフォンを扱っていたパナソニックモバイルコミュニケーションズの3社が協力して開発したという。

「企画は各社・事業部にまたがり、各部署が協力した。商品の企画や製造責任はシステムネットワークス社だが、製造工場はITプロダクツ事業部の神戸工場。同社製スマートフォン「ELUGA」担当技術者も関わっており、その技術が採用された部分もある」(宮部社長)

Windows Phone 8ではなく、組込み型のWindows Embeddedシリーズを採用した理由については、「カスタマイズ性が高いため採用した。市場の将来性として、現在普及しているOSを採用するのではなく、今後普及していくであろうOSをいち早く導入した」と話した。

現在、TOUGHPADを取り引きする会社は、100%がWindowsユーザーという。同社は2016年までにTOUGHPADシリーズで累計100万台の販売を目指す。

発表会場で行われていた防塵・水没デモンストレーションの様子