セゾン投信代表取締役社長の中野晴啓氏がビジネスの最前線で活躍する人たちを招いて対談する「中野晴啓世界一周の旅」。ワールドインベスターズTVで動画を閲覧することができる。今回は前回に続き、グローバル・インベストメント・アジア副社長でエマージング・マーケッツ・ストラテジストの蓮沼嗣也氏と対談した「ブラジル経済編」の第2回を紹介したい。

セゾン投信代表取締役社長の中野晴啓氏(左)とグローバル・インベストメント・アジア副社長でエマージング・マーケッツ・ストラテジストの蓮沼嗣也氏(右)

ブラジルは"元気な国"、21世紀の主役の国のうちの一つ

中野 : 皆さんこんにちは。中野晴啓の世界一周の旅。今日はブラジルシリーズの2回目です。今日もゲストでお迎えてしておりますのは、エマージング・マーケッツ・ストラテジストの蓮沼嗣也さんです。

蓮沼 : こんにちは。

中野 : 前回は、ブラジルのファンダメンタルズを語っていただきました。今日、蓮沼さんの昔の名刺が出てきましたが、イタウ・ウニバンコグループにいらっしゃったと。

蓮沼 : 前職です。

中野 : イタウ・ウニバンコ銀行はブラジル最大の民間銀行で、そこで働いていらっしゃったというのは、ブラジルが第2の故郷のようなものですね。

蓮沼 : そうですね、サッカー好きですしね。

中野 : ブラジルの現地の話もお聞きしたいと思いますが、そもそもこの動画をご覧の方で、少なからずの人がブラジルに投資したこと経験がある、そしてその投資をすすめられた理由として、今年ワールドカップがあるとか、今度オリンピックがあるとか。気がついたら、投信の通貨選択型でブラジルレアルだったと。それでえらい損したという話をいっぱい聞いているのですが、ブラジルってそんなことばかりではないということですね。

いわゆるBRICsという一翼をしっかり担って急成長を遂げてきた大変元気な国であることは確かで、21世紀の主役の国のうちの一つだと思いますが、そもそもブラジルが急成長を始めたエンジンとなった理由、強みなどを改めてお伺いしたいと思います。

ブラジルの強みは一つは農業、一つは資源

蓮沼 : ブラジルは農業国です。1950年代、1980年代、1990年代と人口が毎年2%ずつ、当初5000万人、6000万人だった人口が今や2億人弱です。今出てきましたように、ワールドカップ、オリンピックは大事な行事ですが、2002年に国債が暴落してしまいました。でもルラ大統領の就任以降うなぎのぼりに経済は回復し、成長率も7%、8%をこの数年間続けてきましたが、一昨年経済に少し陰りが見えてきて、新興国、BRICsは大丈夫かということになりました。

ですが、ブラジルの強みは、一つは農業、その中でも大豆、牛肉、豚肉、鶏肉、それとさとうきびですね。ブラジルは砂糖の生産は世界1位です。鶏肉にいたっては、米国、中国とありますが、実は輸出量では世界1位です。

蓮沼氏は、「ブラジルの強みは、一つは農業、その中でも大豆、牛肉、豚肉、鶏肉、それとさとうきびですね」と説明した

中野 : 世界の胃袋に食物を供給している国ですね。農業国という印象は僕らも持っていますが、ただそれだけではなく外貨を稼ぐ力ということでは、他にはどういうものがありますか?

蓮沼 : 企業でいいますと、鉄鉱石ではヴァーレ、石油ではペトロブラス。ヴァーレの場合は、鉄鉱石の世界四大メジャーの一つで、ブラジル政府の支援を受けながら世界一流の規模に成長しました。ペトロブラスは世界のメジャーの一角として、自国で生産しています。輸出ができるまでの体質になれたのも、国の支援を受けることができたからです。このヴァーレもペトロブラスもそうですが、世界に伍して戦える、世界のトップになってきた、これがブラジルを引っ張る原動力になっていると思います。

中野 : 世界でも強い会社が幾つもあるというのは最大の強みだと思います。21世紀になってから花開いたんですね。

ブラジルは"中長期に投資する対象"

蓮沼 : ルラ大統領が就任したのは2002年ですから、ちょうど10年。皆さんどういうタイミングで投資されたかわかりませんが、確かに株が落ちてきている、レアル安、国債価格も年初から3割下げてきた。こういうのを見て焦っている人も多いと思うのですが、やはり新興国、ブラジルの潜在的な強み、こういうのを考えると、中長期に投資する対象であり、短期的に勝負するような国ではないということだと思います。

中野 : 逆に、事業としてブラジルと接触している、たとえば商社だったり、重工業だったり、プラントだったり、蓮沼さんは一緒にお仕事されてきたと思いますが。

蓮沼 : 私もサンパウロ、リオデジャネイロにいっていますが、会う人は大体そういう人たちで、日本を代表する三菱重工さん、川崎重工さん、日本郵船さん、商社ですとトップの5大商社さん、皆さんサンパウロにもリオデジャネイロにもものすごくたくさん社員がいますので、私がこういう情報を現地に行って、そういう人たち会って、中長期に投資をする、その単位は1プロジェクトで数千億円。

中野 : 彼らは5年、10年のスパンでやっているんですよね。

蓮沼 : 新興国向けの投信であれば中長期で見てもらいたい。目先の為替や株のインデックスが上下した、だから国債価格が暴落しました、だから損切りして売るというのは私はおすすめしません。ブラジルはグローバルな新興国の中でも潜在的な強みを持っている国だと思っています。

中野 : 中南米ではどういう位置づけですか。

蓮沼 : まさしくナンバーワンです。

中野 : ぶっちぎりですか。

蓮沼 : ぶっちぎりです。もちろん、他にもいい国はありますが、経済規模が全然違います。GDPも2兆ドルを超えています、昨年度。それを見ただけでも、中南米の主軸、リーダーです。そういう国が中南米を引っ張り、かつ内需、外需ともに潜在的に大きく、農業だけではなく、工業もある。そういった要素が経済を引っ張っていくわけですから、そう考えますと、目先で下がったことだけで判断しないでほしいと思います。

中野 : 日本のブラジルへの投資家は、目先を見て買ったらすぐ売る。ですが、日本のビジネスマンは、こういうこととは全く違う実業を行なって、向こうに行って仕事をしている。これが本当の投資だと思います。

次回以降、ブラジルの裏の話を聞きたいと思います。ありがとうございました。