八王子のソウルフード

皆さんは「パンカツ」という食べ物をご存じだろうか。東京都は八王子のソウルフードらしいのだが、そのパンカツがじわじわとブームになりつつあるというのだ。けれど、どんな食べ物なのかちょっと想像がつかないし、B級グルメではなく"C級グルメ"を自称していたりと、謎は深まるばかり。そんな疑問を解明すべく、東京・八王子に本部を置く「日本パンカツ協会」にお話を聞いてみた。

「そもそもパンカツというのは、食材が不足していた戦後の頃、豚肉のカツを子供たちに食べさせることができなかったため、食パンをカツに見立てて食べたことが起源と言われています。パンに水で溶いた小麦粉とパン粉をつけて、ラードを引いた鉄板の上でこんがりと焼き上げたら、仕上げにウスターソースをかけてできあがり」。なるほど、衣をつけるあたりはトンカツそのもの。

これが東京は八王子のソウルフードだ、パンカツ!

「トンカツに見立ててはいますが、味は全く別物(笑)。ですが表面はカリカリ、中はパンのフワフワ感が残っていて、食感はトンカツに近いかもしれません。昭和生まれの方は『懐かしい味』と言って召し上がることが多く、平成生まれの若者だと半信半疑で口にするものの『おいしい! 』とハマる方が多いですね」。

おかずという感覚ではないのでごはんと一緒に食べることはないそうだが、協会の方が以前、テレビ局の取材でごはんにパンカツをのせて「パンカツ丼」にして食べたところ、これもなかなか美味だったとのこと。

自ら「C級」を名乗るそのワケは?

それにしても、どうしてわざわざC級グルメを自称しているのだろうか。「まず認知エリアが八王子市内全域でなく、市内でも狭いエリアのみなのでB級と呼ぶほどメジャーではないこと。そして高級とは無縁な最小限の素材で作っていること。これらの理由で、ラーメンのように素人評論家の方々が評価するような食べ物にならないだろうと思い、C級グルメと名乗っています」。

なんて謙虚! 狭い地域とはいえ、老若男女を問わず地元民に愛されるパンカツ。これこそソウルフードの在り方なのではないだろうか。「現在は八王子市内のお好み焼き店などでしか食べることができないのですが、イベントで屋台を出店したり、今後は様々な飲食店で新メニューとして取り入れていただいたりする予定です」とのこと。みなさんも八王子に足を運んだ際には食べてみてはいかが?

(文・A4studio 千葉雄樹)