NECパーソナルコンピュータが29日に開催した報道関係者向けの技術説明会「Tech Day」にて、2013年秋冬モデルのなかでも際立つ軽さをみせつけた、約795gの13.3型ノートPC「LaVie Z」の技術解説がなされた。説明会では、商品企画担当者や開発担当者、デザイン、資材担当者らが登壇。世界最軽量の795gを実現させた新技術やエピソードを披露した。

会場に並べられた新型の「LaVie Z」。タッチ対応モデルとタッチ非対応モデルを備える。タッチ対応モデルはグレアのHD解像度、タッチ非対応モデルはノングレアのWQHD解像度だ

新型の「LaVie Z」は、同社の2013年秋冬モデルとして登場した。2013年秋冬モデルのLaVie Zは、795gでタッチ非対応の「LaVie Z LZ550/NSB」、964gでタッチ対応の「LaVie Z LZ650/NS」、「LaVie Z LZ550/NSB」の上位モデル「LaVie Z LZ750/NSB」の3モデルをラインナップ。いずれも13.3型ノートPCおよびタッチ液晶搭載Ultrabookで、世界最軽量をうたうものだ。

2012年7月に正式発表された重量875gの初代「LaVie Z」後継機となる、この795gの新「LaVie Z」。消えた80gはまさに"数gの積み重ね"だったという。新しい「LaVie Z」はいかにして軽くなったのか。担当者が細部までこだわった技術を紹介していこう。

受け継がれるDNAが進化させた新「LaVie Z」

NECパーソナルコンピュータ商品企画本部の中井裕介氏

新「LaVie Z」の商品企画とコンセプトは、NECパーソナルコンピュータ商品企画本部の中井裕介氏が説明した。

新「LaVie Z」の開発にあたっては、「商品企画の立場では、(前モデルの)875gより軽くしてくれ、としか言えなかった」という。

「NECの中で脈々と受け継がれたDNAがあって、初代で十分、という気持ちはなく、IGZOやHaswellといった最新の技術を盛り込めたらどこまでいけるだろう、という思いだった。だが、875gの時点で前人未踏の領域。この先が想像できず、米沢(同社PCの企画・開発を行う米沢事業場)のテクノロジー、ノウハウに頼らざるをえなかった」と、中井氏は開発時を振り返った。

中井氏によると、タッチ搭載モデル/タッチ非搭載モデルという、2機種の選択肢が生まれたのは、モバイル機において「軽量とタッチパネルのニーズが二分」した結果だという。

Windows 8搭載のモバイルPC購入者182名に、"本体が重くなってもタッチ操作を利用したいと思う"か、"本体が少しでも重くなるならタッチ操作はいらないと思う"かをアンケートしたところ、50%対49%という結果だった。これに応えるため「両モデルで想定ユーザーを明確に定義し、仕様分けをした」という。

この想定ユーザーとは、タッチ非対応モデルでは「外出先でがしがし資料作成するヘビーモバイラーのビジネスマン」。タッチ対応モデルでは「直感操作できる端末が欲しい学生ユーザー」という。「ミソは、『究極の軽さ』を共通のコンセプトとして、それぞれのコンセプトで想定ユーザーをしっかり設定したところ」(中井氏)。

新LaVie Zの商品コンセプト。モバイルPCの購入者向けのアンケートでは「軽さ」と「タッチ」のニーズが二分した

タッチ非搭載モデルのコンセプト。ビジネス用途のヘビーモバイラーで液晶はIGZOのノングレア、前回以上のバッテリ駆動時間、ビジネスに適した新色ブラックの採用など

タッチ搭載モデルのコンセプト。学生でタブレット、PCを両方使いたいユーザー。1kg未満の重量、フルHDのIPS液晶、大容量バッテリ、カラーバリエーションなど

数g単位の軽量化を各パーツで積み重ね

NECパーソナルコンピュータ第一商品開発本部の梅津秀隆氏

"軽量化の立役者"として紹介されたNECパーソナルコンピュータ第一商品開発本部の梅津秀隆氏は、「ダイレクトボンディング」をはじめとする、軽量化の技術部分を紹介した。各所で技術的な工夫を凝らし、各パーツで数g単位の軽量化を積み重ねたという。

「ダイレクトボンディング」とは、スマートフォンやタブレットで用いられている、液晶パネルとベゼル(LCD)を接着する技術。通常のタッチパネルのように、パネルとLCDの間に空気が入らないため、堅牢性に加え操作性も向上する。

今回はこのダイレクトボンディングをきょう体一体型LCDと組み合わせた。また、きょう体で採用するマグネシウムリチウム合金素材について、組成と圧延方法、工法を見直し、ボトムケースの板厚を従来の0.5mmから0.4mm厚に薄型化した。

キーボード部にも工夫を凝らした。設計に変更はないものの、板金に高強度アルミを採用したことで、従来の0.3mm厚から0.265mm厚に板金を薄型化。合わせて穴の追加、穴の拡大も可能となり、5gの軽量化に成功した。

一体型のキーボード(板金)。右側が従来のキーボードで、左側が新しいキーボード。左側のキーボードの左上に穴が列になって空いているのがわかる。こういった部分でも軽量化を進めたという

キーボード素材には高強度アルミを採用。板金への穴追加や穴の拡大が可能になった

ファンの材質やきょう体の薄肉化も行われた

軽量化を実現するには、重量と堅牢性、厚さのバランスが重要

ダイレクトボンディングの解説

また、きょう体を0.05mm薄肉化することで5g、ファンの材質をアルミからマグネシウムに変更することで2.1g、マザーボード基板のチップセット、電気部品電源回路などを最適化することで13gの軽量化を実現した。

なお、初代のLaVie Z、新LaVie Zともにメモリ上限は4GB。当然8GBも検討されたが、マザーボードの8層基板が、8GBメモリを搭載すると10層になり物理的に厚みが増すため、軽さを優先し見送ったという。

バッテリは、タッチ対応モデルで6セル(4,000mAh)、タッチ非対応モデルで4セルを搭載(2,000mAh)を搭載。このバッテリにも工夫がある。タッチモデルと、タッチなしモデルは同じバッテリ配置を採用するが、タッチなしモデルでは左右で各1個セルを省いて分空洞化させ、18.2gの重量削減につなげている。

新LaVie Zの基板。手前側の黒い部分がバッテリ

タッチなしモデルでは左右で各1個セルを空洞化し、18.2gの重量削減につなげた

「機構設計としてはプレッシャーもあったが、開発陣も"初代LaVie Z"が世界一だからいいや、とは誰も思わなかった。"やるからにはとことんやる"という意識だった」(梅津氏)

苦労した点もあった。「タッチモデルのダイレクトボンディングはケーブル配線が難しく、設計を一新した。一方、タッチなしモデルでは初代と同じ設計を継続したため、2モデルで2倍の工数となった」(梅津氏)。

「LaVie Z」の原点という幻のAndroid搭載端末「MGX」。試作機のみで発売には至らなかった。薄さ9.9mm、重量は350g

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