電子書籍共通配信プラットフォームを提供するブックリスタは、自社がプラットフォーム提供する2つの電子書籍ストア「Reader Store」「ブックパス」にて、秋の電子書籍フェア「BOOKFESTA 2013 autumn」を10月18日~11月5日の期間で開催中。

『たべるダケ』(小学館刊)

その中で、「いまぜひ読んでほしいコミック」という特設ページが10月25日から設置され、雑誌の編集長たちがオススメのコミックを特別に熱く語るコーナーが設けられている。

情報に敏感で、面白いモノを発見する能力にたけている編集長たちが、どのコミックに注目しているのか? 今回は、「食」で豊かなライフスタイルを提案する雑誌『ELLE a table』の編集長・小脇弥香氏がオススメする『たべるダケ』(高田サンコ・著)にスポットを当ててみたい。

『たべるダケ』は、高田サンコが描く一風変わったグルメマンガ。2010年6月の「新人コミック大賞」(小学館)の青年部門で本作は入選し、2011年から漫画誌『月刊スピリッツ』(小学館刊)で連載がスタート。投稿作品がそのまま連載デビューに繋がっている。物語の主人公は、名前も素情も一切不明の謎の女性。いつもおなかをすかせており、さまざまな悩み事を抱える人の前に現れては、豪快な食べっぷりを見せて、その人の悩みを解消していく……というのが基本的な流れ。1話完結で、「ひき肉から作った普通のハンバーグ」「チーズを乗せて焼いたチーズトースト」「三色団子」「おはぎ」「カレーライス」など、特別な料理ではなく、ごく普通に食べられる料理を取り上げているのが特徴かもしれない。

主人公である彼女は、お腹を鳴らす以外には、「いただきます」と「ごちそうさま」をキチンと言うくらいで、他の言葉はほとんど喋らない。しいて言えば、物を食べる時のおいしそうな音と幸せそうな顔が、彼女の存在を示すアイデンティティとなっている。例えば久住昌之氏原作で大ヒットを飛ばし、ドラマ化も果たした『孤独のグルメ』の女性版――と言えば同氏原作の『花のズボラ飯』が挙がるが、作品のタイトル通り"たべるだけ"という意味で言うならこちらの方が近いかもしれない。

また、本作は2013年7~9月まで、全12話で実写ドラマ化されている。この点も『孤独のグルメ』あるいは『花のズボラ飯』と同様。ドラマでは、主人公の女性はシズルと命名、謎の多い彼女に恋するバツ3の男・柿野義孝、そして柿野を好きになってしまった藪内久美というオリジナルのキャラクターが設定され、この3人の人間関係を軸にして物語が進行していく。主人公のシズルは、今回ドラマ初主演となる後藤まりこ、柿野義孝は新井浩文、藪内久美は石橋杏奈が演じている。

よく食マンガにありがちな、食に対するウンチクなどなく、さまざまな食事をおいしそうに食べる主人公を見ているだけで幸せな気持ちになれる。単純明快であるが、そんな素朴で「食べる幸せ」をストレートに描いていることが、この作品が愛されている理由なのかもしれない。ちなみに本企画における『ELLE a table』の編集長・小脇弥香氏は、「ただただ豪快に食べる『ダケ』なのだが、物語の登場人物同様、読んでいるこちらも読み進めるうちに不思議と元気になってしまう。各章の終わりに掲載されている、主人公が食べた料理の栄養分析と辛口コメントもイイ。食が人を元気にする、という素直なメッセージがうれしい限り」と本作を評している。

また、他にも、最新デジタルグッズのセレクトマガジン『デジモノステーション』の編集長は、草食系音大生が"パソコンのF1レース"と呼ばれる「オーバークロック」の世界へ足を踏み入れていく様を描いた『87CLOCKERS』(二ノ宮知子・著)を、ビジネスマンの心・技・体マガジン『DIME』の編集長は、2014年2月に実写映画化、暴力団に潜入捜査する警察官を描いた『土竜の唄』(高橋のぼる・著)をオススメ作品に選んでいる。この雑誌編集長たちが語る「いまぜひ読んでほしいコミック」、一読すると新しい発見があるかもしれない。

現在開催されている「BOOKFESTA 2013 autumn」は今回で第8弾を迎え、ファッション誌から週刊誌、バイク専門誌やスポーツ専門誌まで、幅広いジャンルの雑誌コンテンツを特集。ただ単に「雑誌の内容」を紹介するのではなく、総勢30誌におよぶ雑誌編集部がさまざまな秋の悩みに対して独自の切り口で回答、各雑誌のコンセプトや世界観などを気軽に見比べられる構成に。これにより「この切り口面白い」「こんな雑誌もあったのか」という、雑誌の面白さを再発見できるようなフェアとなっている。

(C)高田サンコ/小学館
(C)二ノ宮知子/集英社
(C)高橋のぼる/小学館