――男性陣のキャスティングについてはいかがでしょう?

大友監督「豊川さんと二宮君は最初から決まっていたわけですけど、それぞれの役にうまくハマっていてすごく面白かったと思います。あと、注目してほしいのは生瀬(勝久)さんですね。僕はリアルでハードな画を撮ってしまうので、エンタテインメントとして安心して観てもらうためには、どこかにフィクションであるということを匂わせる必要がある。特に今回の作品は若いお客さんが多いと思ったので、物語に入り込んでもらうのと同時にちゃんとフィクションとしてのエンタテインメント性を感じてもらうためには、キャスティングバランスとして生瀬さんのような人が重要なんですよ。もっと無名で顔の売れていない役者さんなんかをキャスティングすると、すごくハードな物語になってしまうんだけど、生瀬さんに入ってもらうことで、どことなくエンタテインメント色が見えてくる。たぶん、どこかでギャグを言って落とすんじゃないか、そんな期待感みたいなものも出てくると思うんですよ。ただ今回は、あえてその逆、生瀬さんには最後まで真面目にやってもらった。役者さんの持っているオフィシャルなキャラクターイメージをどのように裏切るか、そんなことも計算したりして(笑)」

――水上が女性になっているのをはじめ、原作と異なっている部分についてはいかがですか?

大友監督「原作が書かれてから少し時間が経っているので、東野さんが考えていた時点での未来をそのまま描くというのはちょっと難しかった。さらに原作の『プラチナデータ』は、良くも悪くも内面的な小説なんですよ、スズランの存在も含めて。小説だからできることと映画だからできることってちょっと違っている。映画というのは、原作の要素を換骨奪胎しつつ、ちゃんとエンタテインメント性のあるドラマに仕上げないといけない。しかもおよそ2時間という尺の中で」

――時間の制限はやはり大きいですよね

大友監督「小説はある意味、作者の自由なんですよ。物語を構築するためなら、どれだけ本が厚くなってもいいじゃないですか。でも映画は時間勝負なので、2時間の中で描ける要素を抽出しないといけない。しかも原作がかなり複雑な話で、自分が殺したのに、それに気づかなかったという話は、古今東西、探せばいっぱいあるわけですが、この話ではさらにもう一人の自分という二重人格が絡み、しかも最終的に彼は殺していないという……この作品はプロット自体がすごく複雑に入り組んでいるので引くものは引いていかないといけないし、物語の骨格を浮き彫りにするためには、余分と言うと語弊がありますが、さまざまな要素を削いでいく必要があるわけですよ」

――物語として何が大事かをはっきりさせていくわけですね

大友監督「水上を男性から女性にしたのは、男ってすごく社会的な生き物で、世の中でどう生きていくのかということに翻弄されていくわけじゃないですか。でも女性は子どもを産むという行為で、身を傷めながらも確実に遺伝子を伝えていくという役割がある。そういう意味では、水上は本来、人の命を守るべき立場にあるわけですが、教授という立場を得て、国から何かを与えられることによって、男性化、親父化していく……これによって、原作のテーマを深めつつ、映画ならではのオリジナルの切り口ができるんじゃないか、そんなことを思いながらの変更でした。あと、自分が撮るとどうしてもハードで男っぽいものができてしまうので、興行的な意味からも、プロデューサーには女性を増やしたいという気持ちがあったんじゃないかと思います。ただ僕としては、そこにテーマとしての面白さも感じられたので、物語の骨格を大事にしつつ、そういったキャッチボールをしながら作っていきました」

――それでは最後にファンの方へのメッセージをお願いします

大友監督「すごく細かところまでこだわっている作品で、パソコンの画面やいろいろなところに遊びが隠されています。映画館では、どうしても物語を中心に観るので、細かな伏線には気づいても、映像的に隠しこんでいる仕掛けには意外と気づかない。でも、パソコンの画面をはじめ、意味のない映像は一切ありません。すべての伏線は、画面の中やロケーションなどにすべて仕込まれています。映画を観たきっかけは原作、ストーリー、役者かもしれない。でもせっかくDVDやBlu-rayで観るのであれば、今度は作り手の仕掛けた細かなディテールもぜひ楽しんでいただきたいです。ここまでディテールにこだわった作品はあまりないと思いますので、ぜひ繰り返し観て、探して、楽しんでいただければうれしいです。よろしくお願いします」

――ありがとうございました


『プラチナデータ』のBlu-ray/DVDは2013年9月27日の発売で、メイキング映像などを収録した特典DVD付2枚組の「プラチナ・エディション」は、Blu-ray版が7,035円でDVD版が6,090円。本編+映像特典(予告編集)の「スタンダード・エディション」はBlu-ray版が4,935円、DVD版が3,990円となっている(発売元:電通 / 販売元:東宝)。

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