東京オリンピック開催決定! 都市開発やインフラなどの構造改革に投資家が注目
フィスコリサーチレポーターの三井智映子です。2020年夏季五輪の開催地が東京に決定しましたね。夏季としては1964年以来、56年ぶりの開催となります。経済的にはインフラも含め、戦後の高度成長期の象徴でもあった前回のオリンピックですが、今回の五輪は脱デフレのカンフル剤になることが期待されます。2020年の日本経済が1990年高度成長のピークを越えていき、オリンピックが日本大復活のきっかけになる可能性も示唆されています。
「五輪を復興の力に」と期待する声も上がっていますね。その経済効果は計り知れないといえるでしょう。マーケットにもすでに影響してきていますね。景気の先行きへの期待から幅広く買い注文が出て、今後値上がりが見込まれる銘柄を物色する動きが活発になっているようです。オリンピック開催に向けて、どのような投資や地域の開発が行われるのか、長期計画に基づいた都市開発やインフラなどの構造改革に投資家が注目している状態だと言えます。短期的にマインドを上向かせた効果もあり、日本経済の成長につながることを期待する声も大きいようです。これを読んでいらっしゃるあなたもそうなのではないでしょうか。
「インフラ」「スポーツ用品」「レジャー」「警備」「翻訳」
オリンピックの東京開催決定で景気期待ムードも高まり、株価が値上がりしていることなどから、インターネット証券会社には個人投資家からの問い合わせが相次いでいる模様ですが、これからどのくらい株価は上がっていくのでしょうか。日経平均株価が4万円台になるとの予想も出ているようですが、過去の五輪と株価との関連性をみてみますと、1996年の米アトランタ五輪ではNYダウが2倍以上になった例もありますので、4万円台も夢ではないかもしれませんよ。日本でも建設業界を中心に需要が拡大することはもちろん予想されますし、アベノミクスとの相乗効果でアトランタ以上の株価の上昇もあり得るのではないでしょうか。
ではどのような銘柄がオリンピックの恩恵を受けるのでしょうか。まずは開催決定前から注目が集まっていたインフラ関連銘柄は外せません。インフラ整備の進展期待などから不動産、建設株が急騰しています。ほかにもスポーツ用品銘柄、レジャー関連、警備会社、翻訳関連もホットになってきています。地価上昇のメリットを受ける不動産関連も見逃せません。開催決定後の週明けの日本株は取引開始から幅広い業種に買いが先行し、不動産と建設が東証1部33業種の上昇率1、2位を占めたようです。大手ゼネコンでは大成建設<1801>、鹿島<1812>、清水建設<1803>がそろって年初来高値を更新しています(9月10日現在)。
東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会発表データによれば、3兆円程度の経済波及効果が見込まれるそうで、その経済効果と心理的効果がアベノミクスの強力な追い風となりそうですね。東京都でも東京湾岸地域を中心として競技場の新設などに1,300億円を投じるとしていて、競技場の新設や環状道路、あるいは空港などのインフラ整備で恩恵を受ける企業は多いと予想されます。相場は先読みだと言いますので、オリンピックが決まり、正直このタイミングでのオリンピック関連銘柄の紹介は遅すぎるとも思います。 しかし、五輪関連銘柄の上昇余地は依然として残されていると考えます。 まだ伸びる余地のある銘柄もありますし、オリンピック以外にも株価が上昇する要因のある銘柄を選ぶというテもあります。大きく上昇した関連銘柄は利益確定売りに押される可能性もありますので、押し目買いのタイミングを狙っていきたいところです。
セメント業界トップの太平洋セメントに注目
まず私が注目したのは、 セメント業界トップの太平洋セメント<5233> です。国立競技場改築や競技施設、選手村などの建設のほか、首都高速道路の補修・整備も予想され、セメントトップシェアの同社が恩恵を受けることは必至です。先ごろ発表された1Q決算では、東日本大震災の復興工事や全国の防災工事の本格化により、売上高は前年同期比12%増になっています。株価は年初来高値圏にありますが、国土強靭化政策、インフラ改修の加速でセメント需要は急速に高まると予想できるため底堅いといえます。
そして、 業界大手の一角である大手総合建設会社の鹿島<1812>を挙げておきたいと思います。国土強靭化政策での社会インフラの老朽化対策や耐震化などの防災において超高層ビル事業や耐震を得意とし、蓄積された高度な技術を持つ同社はオリンピック特需に頼らずとも一段の上昇が期待できるでしょう。2027年開業に向け動き出したリニア中央新幹線の案件においても、北海道新幹線の津軽蓬田トンネル工事で採用された実績もある土木に強い同社の技術は強もとなるのではないでしょうか。
航空会社や鉄道関連も--日本航空、ANA、京成電鉄、京浜急行電鉄
もう1つ注目したいのが、航空会社や鉄道関連です。羽田と成田の両空港で発着できる便数を増やすため、航空機の東京都内の上空飛行を解禁したり、滑走路を増設したりする案が浮上していると伝わっていることもプラス材料ですし、オリンピックの開催によって外国人旅行客の増加が予想されるため発着枠の拡大は必須とみられます。それに伴って、日本航空<9201>やANAホールディングス<9202>などの航空会社だけでなく、成田空港や羽田空港向けの鉄道を運航する京成電鉄<9009>や京浜急行電鉄<9006>なども、オリンピック関連銘柄として注目しています。
観光関連、宿泊にも恩恵
旅行客が多いということは観光関連、宿泊でも恩恵がありますよね。その中で私が注目したのは個人向け自由旅行に強い旅行代理店エイチ・アイ・エス<9603>です。旅行事業成長とテーマパーク収益の倍増が見込めることがその理由です。強い価格競争力とスピード経営をベースに、国内外での旅行事業の着実な拡大に加え、2010年に経営権を取得したテーマパーク事業「ハウステンボス」の好調がけん引し、上期として過去最高益を更新しています。「ハウステンボス」の利益は3年後に倍増するポテンシャルを有すると考えられます。また、円安を背景にした外国人旅行客の増加や、特に中期的にアジアの旅行者の需要が見込めること、景況感の回復や活発なシニア世代の増加などもあって国内旅行需要も堅調であることもプラス要因です。
東京都は五輪招致に伴って、太陽エネルギーや緑化などの環境投資も増やす方針であることから、これらの関連銘柄も今後、折に触れて話題となりそうです。注目してみてくださいね。
(※チャートは月足:株式会社フィスコ提供)
執筆者プロフィール : フィスコ リサーチレポーター 三井 智映子
共立女子中学校・高校を経て、早稲田大学政治経済学部へ。2001年から芸能活動を開始し、現在テレビ、CM、舞台などに出演。また、いち消費者とアナリストの中間的な存在であるフィスコのリサーチレポーターとしても、株式やFXの現場を取材レポートしています。