Microsoftは2013年4から6月期にあたる2013年第4四半期業績を発表し、売上高は198億9,600万ドルと前年同期比から10パーセント増。ただし、Surface RTの在庫調整に関して9億ドルの計上するなど、今後「デバイス&サービスカンパニー」を目指して大規模な組織再編を実行する同社に影を落とす結果となった。

デバイスやクラウドを中心としたサービスに焦点を当てるMicrosoftだが、以前から同社はクラウドコンピューティングを構成する要素として欠かせないオンラインストレージサービス「SkyDrive」に注力している。同社公式ブログの一つ「Inside SkyDrive」では、2013年後半にリリース予定のWindows 8.1との連係機能に関して説明が行われた。そこで今週はSkyDriveに関するレポートをお送りする。

Windows 8.1と完全統合するSkyDrive

インターネットが普遍的な存在となれば、オンラインストレージが普及するのは自然の流れである。1990年代半ばのISP(インターネットサービスプロバイダー)経由でインターネットへ接続していた時代は、モデムやターミナルアダプターを用いたダイヤルアップ接続していたため、データ転送レートは速くても64キロビット/秒。とてもオンライン上のディスクスペースを利用するような状況ではなかった。

しかし、ブロードバンド接続の普及で速度問題は改善し、無線LANスポットやモバイルWi-Fiルーターが増えたことで、接続場所を選ばないインターネットへの接続が可能。ようやくオンラインストレージをローカルデバイスに近い感覚で利用可能になったのである。Microsoftが提供するオンラインストレージサービス「SkyDrive(スカイドライブ)」は、2カ月間のクローズドベータテストを経て、2007年8月から「Windows Live SkyDrive」という名称で広域のベータテストが始まった。

日本でも利用可能になったのは翌年の2008年2月。ベータテスト終了に伴い、1アカウントあたりの容量を1ギガバイトから5ギガバイトへ拡大した。また、同年12月には、HDD(ハードディスクドライブ)などストレージの価格帯が低下に伴い、さらに容量を25ギガバイトに増やしている。この頃は単にデジタルカメラなどで撮影した写真や動画ファイルをアップロードし、友人・知人と共有するのが主目的だった。そのため、SkyDrive側でも写真内の人物を認識してタグを付ける「人物タグ」や撮影時のメタデータとなるEXIFを利用する機能を備えている。

2010年6月に入ると、WebブラウザーベースでOfficeスイートを利用可能にする「Office Web Apps」のサービスを開始。以前からExchangeサーバーを利用したWebブラウザー経由で電子メールを操作する「Outlook Web Access(後にOutlook Web Appへ改称)」が動作していたため、目新しさはないものの、普段からローカルアプリケーションとして利用していたものがWebブラウザー内で動作するのは、やはり衝撃的だった。

この他にもHTML5への対応など数多くの軌跡をたどってきたSkyDriveだが、2012年4月には、最大100ギガバイトまでストレージ容量を追加する有料プランの導入に伴い、新規ユーザーの容量を7ギガバイトに変更。そして現在に至っている。デスクトップアプリ版SkyDriveアプリの登場で、オンラインストレージとローカルストレージの自動同期が可能になり、身近な存在となったSkyDriveだが、現在パブリックベータテスト中である「Windows 8.1プレビュー」では、同アプリの機能をOSと融合。エクスプローラーにはナビゲーションウィンドウから容易に参照できる仕組みを用意した(図01~02)。

図01 デスクトップアプリ版SkyDriveアプリをインストールすることで、SkyDrive.com上のファイルと同期が可能になる

図02 Windows 8.1プレビューのエクスプローラーは、ナビゲーションペインに「SkyDrive」が加わり、ローカルストレージ上のファイルと同じ感覚で利用できる

エクスプローラーとの融合は過去に寄稿した記事でも述べたが、より詳しい情報が公式ブログの一つである「Inside SkyDrive」の記事で語られた。SkyDriveアプリ担当グループのプログラムマネージャであるMona Akmal (モナ・アクマル)氏は、「ストレージ容量は年間25パーセントで成長していますが、ユーザーが保持するデータは年間約50パーセントのスピードで増加しています」と、オンラインストレージの重要性を強調し、「SkyDriveとWindows(8.1)は深く統合され、HDDにファイルを保存するのと同じ感覚で利用できます。スマートフォンやタブレット経由でも利用可能です」と新機能を紹介した。

前述したエクスプローラーとSkyDrive.comの融合は一見すると、単にデスクトップアプリ版SkyDriveアプリによる同期結果を参照していると思われていた。筆者も当初はそのように考えていたが、実のところ「Placeholder files(プレースフォルダーファイル)」という新技術により、異なるロジックでファイルを管理していると言う。具体的にはオンラインストレージ上に保存したファイルの基本的なプロパティとサムネイル情報を持つplaceholderファイルをSkyDriveフォルダー(%USERPROFILE%\SkyDrive)に保存している(図03~04)。

図03 SkyDriveフォルダーのプロパティダイアログを確認すると、実際のサイズとディスク上のサイズが大きくかけ離れている

図04 こちらはコマンドプロンプト上で各属性を表示させた状態。ファイルサイズが括弧で囲んでいるのがplaceholderファイルとなる

そのため、エクスプローラーに並ぶメディアファイルはサムネイルの作成も、さほど遅延せずに表示された。これは事前にプリフェッチすることで実現していると言う。しかし、実際の閲覧となると話は異なる。画像ファイルのサイズはさほど大きくないため、数秒ほどのディレイで表示されたが、動画ファイルの場合はネットワーク状況によっては再生遅延が発生。同氏は「完全なクラウドアクセスを提供します」と述べているが、低速な無線LAN環境を利用中の場合、その限りではない。

昨日開催された開発者向けカンファレンス「Build 2013」でもPlaceholderに関する説明がなされている。プレゼンテーションの内容は動画、およびPowerPointファイルが公開されているので、興味をお持ちの方は「What's New for Working with Files」をご覧頂きたい(図05)。

図05 Build 2013のセッション「What's New for Working with Files」で解説されたPlaceholderファイルの概要