携帯電話3社の2012年3月期決算が出そろった。NTTドコモは増収減益、KDDIとソフトバンクが増収増益という結果。ドコモが不調、ソフトバンクが好調、KDDIが回復基調という傾向だ。また3社の今期の計画は、ソフトバンクが営業利益でドコモを超えて1兆円規模に拡大する計画。ドコモとKDDIは、通信事業以外からの収益を拡大したい考えだ。
携帯事業の各社結果比較
売上高で見ると、ドコモは4兆4,701億円で前年度比5.4%増、KDDIは3兆6,623億円で同2.5%増、ソフトバンクは3兆3,783億円で同6%増。営業利益はドコモが8,372億円で同4.3%減、KDDIが5,127億円で同7.3%増、ソフトバンクが7,450億円で同10%増となった。
主力の携帯事業では、ドコモの端末販売台数は2,355万台で同6.6%の増。スマートフォンの販売台数は1,329万台となり、前年度の882万台から大幅に増加した。新規契約数も前年を上回り、MNPによる転入も「好調だった」(加藤薫ドコモ社長)が、それ以上に転出が多く、第1~3四半期までは純増数が前年をよりも少なくなった。
ただ、第4四半期に販売した春モデルの「Xperia Z SO-02E」が約63万台を売り上げ好調なほか、各種販売施策の効果が現れたことから、同期は前年を上回る純増数を獲得。「競争力は回復の兆しを見せている」(加藤社長)という認識だ。
累計契約数は6,154万となり、同141万増。解約率は同0.22ポイント増の0.82%だった。総合ARPUは4,840円で同300円減。音声ARPUが同470円減の1,730円、パケットARPUは同100円増の2,690円、スマートARPUは同70円増の420円だった。そのほか、携帯事業向けの設備投資は6,061億円だった。
KDDIの端末販売数は1,107万台で、同11.7万台減。全ての四半期において前年割れとなった。ただ、スマートフォンは541万台から812万台へと増加。累計契約数は同210万増の3,219万契約だった。
またMNPでの純増数が18カ月連続で1位となり、通期では過去最高となる101万の転入超過だった。解約率も0.67%で、3社のなかで最低水準を維持した。
契約数の増加に寄与したのが「auスマートバリュー」。指定の固定回線と契約することで、月額利用料金を割り引くサービスで、これによって携帯の契約数増加に加え、FTTHサービスの純増数が前期比で1.7倍の60.1万契約に急増。ユーザー獲得単価も低減するなどの効果を発揮した。KDDIの田中孝司社長によれば、au携帯電話の新規契約の39%はスマートバリューを契約しており、期初の予想を上回る契約数を獲得。「業績を牽引している」と強調する。
全体の総合ARPUは同360円減の4,430円。音声とデータの通信ARPUは同350円減の4,180円、コンテンツなどの付加価値ARPUは同10円減の250円。ただ、付加価値ARPUは「スマートフォンが底上げ」(田中社長)しており、スマートフォンユーザーの平均だと350円となるため、今後スマートフォンユーザーが伸びれば、全体で上昇する見込み。通信ARPUはほぼ横ばい傾向だが、第4四半期で「ほぼ底を打ったという認識」(田中社長)で、今後反転する見込みを示している。そのほか、携帯事業向けの設備投資は3,382億円だった。
ソフトバンクの端末販売数は1,156万台で、同12.4万台減。iPhoneの出荷は増加したが、フィーチャーフォンなどの減少が影響した。契約数は同353万増で3,248万。全体のARPUは3,990円で同170円減。音声ARPUが同250円減の1,400円だが、データARPUが同80円増の2,590円だった。なお、ソフトバンクは通信モジュールを除いたARPUは4,290円としている。解約率は同0.03ポイント減の1.09%。そのほか、携帯事業向けの設備投資は5,929億円だった。
3社の今年の戦略
3社の2014年3月期の戦略では、ドコモは「スマートライフのパートナーへ」というスローガンを掲げ、通信事業に加えてクラウドサービスの拡充など、新たな収益源の拡大を目指す。