既報のとおり、Windows XP Home Edition/Professionalのエクステンデッドサポートが2014年4月8日で終了することが、日本マイクロソフトから改めて発表された。同社によると企業・法人が利用するコンピューターの3,517万台中40.3パーセントにあたる1,419万台、個人が所有するコンピューターの4,225万台中27.7パーセントにあたる1,170万台がWindows XPを搭載しているという。残すところわずか一年。企業や個人は他のOSへ移行できるのだろうか。今週はWindows XPを取り巻く環境を改めて考える。
Windows XPは2014年4月8日でサポート終了
2001年10月に登場し、多くのコンピューターと共に歩んできたWindows XPが、終焉(しゅうえん)の時を迎えようとしている。そもそもWindows XPには2つのエディションがあるのはご承知のとおりだが、コンシューマー向けであるWindows XP Home Editionは、“メインストリームサポート”しか提供せず、次期バージョンとなるWindows Vistaリリースから2年後にサポートが終了する予定だった(図01)。
Windows Vistaのライフサイクル開始日は2007年1月25日のため、本来であれば2009年4月14日にメインストリームサポートは終了。その一方で、ビジネス向けとなるWindows XP Professionalには、セキュリティ修正プログラムなどの提供が行われる"エクステンデット(延長)サポート"が適用されるため、その後5年間のサポートが続く。
つまりWindows XP Home Editionは、2009年で終了するOSだったのだ。しかし、当時のMicrosoftはWindows XP Home Editionの普及率とセキュリティ修正プログラムが適用されなくなる危険性を鑑み、Windows XP Professionalと同じエクステンデットサポートをWindows XP Home Editionにも適用。2014年4月8日までエクステンデットサポートが行われるようになった。これが2007年当時の話だ(図02)。
先週、Windows XPのエクステンデットサポート終了まで残すところ1年を切った。日本マイクロソフトは、現在も一定のシェア(市場占有率)を誇るWindows XPと、エクステンデットサポート終了日が同じOffice 2003に対する取り組みについての記者説明会を行っている。内容は本誌でも既報のとおり。残すところあと一年でエクステンデットサポートが終了し、Windows XPは事実上"使えないOS"となる。
この件で興味深いのが巷の報道だ。4月7日には、Windows XPのサポート終了に関するニュースを放送し、コンシューマーや教育現場の意見を採り上げているものもある。とあるコンシューマーは「一方的にやめるのではなく、ある程度のサポートは継続してほしい」とコメントし、とある市教育委員会は「約2,000台のコンピューターのうち半数がWindows XPマシンだが、予算の都合で今年度中に乗り換えることができない」という。また、同委員会は「学習の妨げにならないようにしたいが、マイクロソフトも何らかの救済処置や、費用のかからない対応策を考えてほしい」とも述べていた。
だが、少し待ってほしい。冒頭で述べたとおりMicrosoftはエクステンデッドサポートをWindows XP Home Editionに適用し、日本マイクロソフトはその内容を報道機関向けに発表している。そもそもWindows XPのサポート期間は当初からアナウンスされているだけに"一方的"という表現は即さないだろう。また、同社は以前から「Windows XPのサポート期間終了が迫っている」と最新OSへの移行をうながしている。
あくまでもWindows XPのサポート終了は当初から決められていたことであり、それを個人もしくは組織の都合で先延ばしにし、情報を能動的に収集しないユーザーに問題はないのだろうか。一歩引き下がってコンシューマーは致し方ないとしよう。だが、組織としての発言はコンピューターを管理する責任をメーカーに押しつけていないだろうか。
ニュースでは耐震工事に伴う予算不足を訴えていたが、前述のとおりWindows XPが2014年でサポート終了するという話は、5年以上も前に決まっていたことである。コンピューターは"導入すればそれで終わり"というものではないため、運用に伴う予算確保など長期的視野が欠けていたと言われても仕方がないだろう。
一方で告知が十分か、という点を精査してみる。MicrosoftはWindows XPのサポート終了を知らせるWebページ「RETIRING WINDOWS XP」を公開。日本マイクロソフトも同様のWebページを用意し、啓発活動を先頃開始したばかりだ。また、Webページを訪れないユーザー向けにはフリーダイヤルを設置し、コンピューター販売店でリーフレットを配布する予定だという。これで十分とは言いがたいものの、能動的に情報収集を行わないユーザーに対して、他の手段を用意するのは難しいだろう(図03~04)。
筆者は「12年半にもおよぶ長期サポート」は類を見ないことであることを重要視したい。2001年頃の他社製OSを見渡すと、Mac OS X 10.1は2004年1月にリリースしたセキュリティアップデートを最後に、サポートを事実上終了している。Windows XPやMac OS Xと同列に比較することに違和感を覚えるが、2002年にリリースされたワークステーション系OSであるSolaris 9もプレミアサポート(通常のサポート)は2011年10月、エクステンドサポートは2014年10月に終了。
奇しくもWindows XPと同じ12年半のサポート期間となるが、販売元であるオラクルのエクステンデッドサポートは有料である。一方でMicrosoftのサポートは基本的に無料だ(エクステンデッドサポート時のセキュリティ関連以外の修正プログラムサポートは、有償の延長修正プログラムサポート契約《Extended Hotfix Support Agreement:EHSA》が必要)。コンシューマー向けOSであるWindows XP Home Editionのサポート期間がいかに長かったかを示す一例となるだろう。