映画『蛇にピアス』では、惜しげもなくヌードをさらし、『僕等がいた』では、一人の男を一途に思う女性を熱演した吉高由里子。自由奔放な性格を想像させる演技力は、男はもちろん女からも、どこか憎めないキャラクターとして存在している。そんな吉高由里子が登場する映画『蛇にピアス』『きみの友だち』『僕等がいた 前後篇』がWOWOWにて放送される。これを機に彼女の魅力についてあらためて考えてみた。

話す「間」の取り方、雰囲気で演じる女優

はじめて彼女の存在を知ったのは、2008年公開の『蛇にピアス』だった。原作は芥川賞受賞作品でもあり、監督は蜷川幸雄。吉高自身の演技も評価され、日本アカデミー賞ほか、新人賞を総なめにした作品だ。ただ、このころの吉高については、全身ヌードを披露してくれる若手女優ということしか知らなかった。

『蛇にピアス』は、19歳のルイが渋谷で出会った男に影響されて、自分の舌を蛇のように二股に分ける身体改造していく。その後も、入れ墨、SMプレイ、殺人といったハードな内容が展開。SEXシーンも多く、その透明できれいな肌、美しい裸体と、乳首をあらわにしたシーンに釘付けになった人も多いと思う。

『蛇にピアス』(C) 「蛇にピアス」フィルムパートナーズ

吉高由里子の名前が一般的になったのは、2010年のテレビドラマ『美丘 -君がいた日々-』あたりではないだろうか。もちろんその前にも『紺野さんと遊ぼう』などのこだわりのあるショートドラマほか、数々の作品に出ていた。演じた役は、個性豊かなものが多く、ブレイク前にはもうすでに、彼女の天真爛漫キャラは完成されていたようだ。どの作品を見ても、「吉高由里子」という女優としての存在感はブレていないからだ。

彼女は、聞けばすぐわかるような声を持ち、特有の話し方をする。頭から天井を抜くような突拍子のない声と甘えた話し方は独特であり、ついそのペースにつられてしまう。演技においても、言葉だけでなく、セリフのなかにある「間」を読み取らせようとする。見る方はその「間」に、いろいろな想像を盛り込むという楽しみが沸いてくるのだ。

吉高由里子が生意気でも可愛いワケ

『蛇にピアス』が公開された同年の夏、実は2ヶ月前に『きみの友だち』という重松清原作の青春映画に出ている。これを時系列で見た方は、あの純粋な少女が、学校を卒業したら渋谷でこんな悪い子になってしまったのか……と、なんだか少女の成長を見ているような錯覚に陥るぐらいだ。

『きみの友だち』(c) 2008映画「きみの友だち」製作委員会

『きみの友だち』では、吉高は主役ではない。ただ、映画を見ていると「あれ、あの可愛い子、誰?」と印象に残る。助演として自分自身が秘めたエネルギーの行き場を見失った、ちょっと生意気な少女の葛藤をうまく演じている。すでに女優「吉高由里子」らしい雰囲気を十分にかもし出しており、今の彼女の演技を知る人は、ぜひ振り返って見直してほしい。

2012年春に公開された『僕等がいた』は、人気少女マンガが映画化されたものだ。クラスの3分の2の女子が一度は好きになるという矢野元晴を生田斗真が、矢野の惚れてしまう高橋七美を吉高が演じる。前編は、美しい小樽での高校時代が描かれ、後編では社会人として働く東京での生活がメインとなる。

最初は、既に20歳を過ぎている生田と吉高の学生服姿に、なんとなく違和感を持ったが、二人の演技力とインパクトあふれるセリフに、話が進むにつれて自然にのめり込んでしまった。セリフは原作のままだが、吉高由里子が「高橋七美」というキャラを見事に吸収し演じていたように思う。前編からの後編にかけての高橋七美の成長と、生田斗真演じる矢野の葛藤、また本仮屋ユイカ、高岡蒼佑など俳優陣の演技も面白い。

『僕等がいた』(C) 2012「僕等がいた」製作委員会 (C) 2002小畑友紀 / 小学館

吉高由里子が役を演じると、どうも彼女はうまくそれを吸収するようだ。原作に負けず劣らない彼女らしいキャラに変えるのである。なんとなく生意気で、言いたいことを言い、でも、いきなり素直になり甘えてくる。そんなギャップが吉高の魅力となって引き出されているのだろう。生意気でもたまらなく可愛い女性、そんな印象を与える女優なのだ。

WOWOWでは、吉高由里子が登場する映画作品が続々と公開される。『僕等がいた 前後篇』は4/6(土)18:45より一挙放送。『蛇にピアス』は4/26(金)23:00から。『きみの友だち』4/23(火)21:00から放送予定。この機会に、始めて見る人はもちろん、一度見た方も、あらためて吉高の演技に注目し、女優としての変遷を楽しんでほしい。

文/櫻井綾乃(エフスタイル)