新年あけましておめでとうございます。一日3時間をニコニコ動画に費やすダメ社会人、山田井ユウキです。

2012年は、現実社会においてもインターネット社会においても激動の年でした。政権交代や米国大統領選挙など大きな出来事が起こり、インターネットにおいてもstudygift問題や2chまとめブログ転載禁止事件など、今後のネット文化の方向性を占う重大な事件が相次ぎました。

全体としては暗いニュースが多かったような印象を受けてしまいますが(ニュースにはどうしても暗いものが増えるので仕方ないのですが)、一方でコンテンツ業界は活気にあふれていたように思います。

特に元気だったのはニコニコ動画で、4月には5年間の集大成として「ニコニコ超会議」を開催し、先日はニコニコ生放送で党首討論会を行うなど、強い存在感を発揮していました。

新年早々にやや後ろ向きな気がしないでもないですが、そんなニコニコ動画の2012年を、動画と共に振り返っていきたいと思います。

【んふんふ んふんふんふ!】んふんふんふんふ【んふ】【オリジナル】

2012年の初めに投稿され、ニコニコ動画に"なめこ"ブームをもたらした作品。言わずと知れたスマートフォンの大ヒットゲーム「おさわり探偵なめこ栽培キット」をモチーフにしたファンソングだったのですが、なんとその後公式ソングとなり、カラオケにも採用されるという大出世を遂げました。ゲーム同様、謎の中毒性があり一度聞くと抜け出せない魔力を秘めた動画です。

MV「ゴーゴー幽霊船」

ニコニコ動画からは毎年数多くのクリエイターが巣立っていますが、2012年にもっとも世間を騒がせたニコ動発のビッグネームといえば米津玄師さんだったのではないでしょうか。ニコニコ動画ではボカロPの「ハチ」として長く活躍しており、投稿する動画はすべて数十~数百万という稀代のヒットメーカーとして名を馳せていました。そんな彼が「ハチ」ではなく「米津玄師」として、またボカロではなく自らの歌声でデビューしたことは、ある意味ニコニコ動画の"今"を象徴する出来事だったように思います。『ゴーゴー幽霊船』はそんな彼のデビューアルバムに収録されている楽曲の一つ。本人手描きのミュージックビデオと共にお楽しみください。

【IA】如月アテンション【オリジナルPV】

2012年にニコニコ動画発で大ヒットしたコンテンツといえば、まず出てくるのが「カゲロウプロジェクト」でしょう。じん(自然の敵P)さんが作り上げた世界観と、謎めいたストーリーが楽曲を通して少しずつ明らかになっていくという構成は、多くのニコニコ動画ユーザーを虜にしました。その後、カゲロウプロジェクトのメディアミックス展開がスタート、漫画化、ライトノベル化、そしてついにアニメ化の話も動き始め、来年もカゲロウプロジェクトからは目の離せない一年になりそうです。

新・豪血寺一族 -煩悩解放- レッツゴー!陰陽師

古くからニコニコ動画に親しんできたユーザーにはおなじみの動画「新・豪血寺一族 -煩悩解放 - レッツゴー!陰陽師」が、2012年7月、ついに1000万再生を突破しました。地味ですが、感慨深い出来事だったのでピックアップしたいと思います。「新・豪血寺一族 -煩悩解放 - レッツゴー!陰陽師」の動画番号は「sm9」、つまりニコ動が現在のような形になってから9番目に投稿された動画であり、現存する動画では最古の作品として知られています。もともとは「新・豪血寺一族 -煩悩解放」というゲーム作品の特典PV映像だったものをユーザーが投稿したのですが、あまりのヒットからその後は公式に認められ、現在ではニコ動を代表する作品の一つになっています。その動画が1,000万再生という途方もない数字に到達したというところに、何となくニコ動の歴史を感じるのです。

【初音ミク】みんなみくみくにしてあげる♪【してやんよ】

懐かしいといえば、「みくみくにしてあげる♪」が投稿者本人の手によりアレンジされ、新規に投稿されたのも思い出深い出来事でした。「みくみくにしてあげる♪」は2007年、初音ミクの誕生からほどなくして投稿された伝説の動画。その後、とあるトラブルにより投稿者はニコ動から遠ざかっていたのですが、あれから5年が経った今、パワーアップした動画で復活を果たしたのです。やっぱり「みくみくにしてあげる♪」は名曲だなぁと思うと共に、あれからもう5年も経ったのかという時の流れの速さを感じずにはいられない作品です。

【第9回MMD杯本選】かわいいと思ったら負け【ガキの使い七変化】

もうすっかりニコ動の文化として定着した感のある「MMD」も、2012年のニコ動を彩ったジャンルの一つです。MMDとはMikuMikuDanceの略称で、もとは「樋口M」こと樋口優氏が個人で開発して公開したフリーの3DCGムービー製作ツール。最初は初音ミクを動かすためのツールでしたが、徐々に他のボカロやアニメ、ゲームなどのキャラクターモデルも有志によって制作され、現在ではそうしたモデルを使ってムービーの完成度と人気を競う「MMD杯」が定期的に開催されています。

エヴァンゲリオンがさらにわかる動画:旧

2012年のアニメ業界におけるビッグトピックはなんといっても『新世紀エヴァンゲリオン』の劇場版新作となる『Q』が劇場公開されたことでしょう。ニコ動でももちろんエヴァ人気は高く、数々のMADやファンムービーが投稿されています。その中でも2012年、一際注目を浴びたのが「エヴァンゲリオンがさらにわかる動画:旧」。これはややこしいエヴァの世界観やストーリーを丁寧に解説するという趣旨の動画で、そのわかりやすさから多くのファンの支持を集めました。「エヴァは好きだけど、今いち言葉の意味や設定の深いところがわからない」という方は、ぜひこの動画をご覧ください。

シャバドゥビタッチヘーンシーンをノリノリにしてみた

特撮ヒーローの新作「仮面ライダーウィザード」も、ニコ動で2012年大ブレイクしたジャンルの一つです。仮面ライダーウィザードの変身ベルトの変身待機音である「シャバドゥビタッチヘーンシーン!!」のリズム感とインパクトがニコ動ユーザーに大ウケし、数々のMAD動画が制作されました。

母が「林檎華憐歌」歌いたかった。

東方Projectの同人音楽界などを中心に活躍するアーティスト、ビートまりおさんのお母さん、「ビートままりお」さんの鮮烈なデビューは、2012年のニコ動を語る上で外せない出来事の一つです。その圧倒的な歌唱力とおちゃめなキャラクターは多くのユーザーを楽しませ、その後はニコニコ超会議への出演やスタードラフト会議への出演など大活躍しました。

這いよれ! ニャル子さん 第1話「第三種接近遭遇、的な」

現在、ニコニコ動画では多数のアニメが公式放送されていますが、2012年にもっともニコ動ユーザーを楽しませたのは「這いよれ!ニャル子さん」だったのではないでしょうか。細かいネタが散りばめられた本編の面白さはもちろん、OPテーマ「太陽曰く燃えよカオス」で流れる掛け声「(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー!」はニコニコ動画はもちろん、Twitterなどネット全体で大きな話題になりました。

以上、動画で振り返る2012年のニコニコ動画でした。こうしてみると、2012年も様々なブームがあったことがわかりますね。果たして来年はどんなブームが巻き起こるのでしょうか。予想できないからこそ楽しい、それがニコニコ動画の最大の魅力なのかもしれません。

勝手エヴァンジェリスト・山田井ユウキ

1980年生まれ。レビューサイト「カフェオレ・ライター」で、映画、漫画、ゲームなどを独自視点からレビューする他、「builder by ZDNet Japan」「ハリウッドチャンネル」など各種媒体で記事を連載中。どんなに忙しくても一日数時間ニコニコ動画に費やすという、社会人としてあるまじき生活を謳歌中。好きな動画ジャンルはゲーム実況、ボカロ、他エンタメ系全般。

(タイトルイラスト:3P3P)

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