9月19日、日本航空(以下、JAL)が東京証券取引所第1部に再上場を果たした。上場廃止からこれまでの2年7カ月の間に、同社が導入・実施してきたサービスを短期集中シリーズ(第1回機内食編第2回機材・設備編)でお届けしてきた。最終編となる今回は、9月13日に発表された新シート&サービスを紹介する。フルフラットシートやスターシェフといった世界の最先端を行く航空サービスを知る乗客に、今さら感を持たれかねないサービスだが、そこにはJALならではの工夫が施され、魅力あるものに仕上がっていた。

新コンセプトのもと、4人のスターシェフが機内食監修にあたった。左2人目から順に「日本料理 龍吟」の山本征治シェフ、麻布十番「山田チカラ」の山田チカラシェフ、日本航空代表取締役社長の植木義晴氏、国際線商品・サービス総合アドバイザーに就任した小山薫堂氏、料理プロデューサーの孤野扶実子氏、「エディション・コウジ シモムラ」の下村浩司シェフ

「乗客目線」の普通にはないサービス

今回のサービスは「Welcome New Skyのアクションスローガンのもと、今までにない『新しい空』を作るJAL NEW SKY PROJECTの開始」(同社)であり、既存のサービスを文字通り一新するプロジェクトだが、スタートの際、まず念頭に置いたのが「乗客目線」である。提供する側がどんなにすばらしいものだと自負しても、乗客に受け入れられなければ意味がない。そこでJALは、旅と食のスペシャリストでエッセイや著作を手掛け、また飛行機のヘビーユーザーでもある放送作家・脚本家の小山薫堂氏を国際線新商品・サービス総合アドバイザーに迎えた。そして、氏の「普通の航空会社なら、それはできませんという返事が来そうなリクエストをJALがことごとく受け入れ、完成したのが今回の新サービス」(小山氏)なのである。

まず新しい座席だが、これは2013年1月の成田 - ロンドン線に導入され、その後、成田 - ニューヨーク線などボーイング777-300ER型機で運航される欧米線に順次導入される。「1クラス上の最高品質」をテーマに、「SKY SUITE777(スカイスイート777)」のコンセプト名を用いて、ファースト、ビジネス、プレミアムエコノミー、エコノミーの全クラスで居住性と機能性を進化させた。

ファーストクラスは木目調で上質さを演出するデザイン。書斎や寝室のような雰囲気であり、シートの周囲はパーテーションで仕切られたプライベートな空間だ。ベッドにした際の全長は約2mにもなり、完全にリラックスした状態で休むことができる。さらに、テンピュールとのコラボレーションによる専用マットレスと枕が使われている。

ファーストクラスのシート名は「JAL SUITE(JALスイート)」。ベッド時の全長は最大約199.4cm、幅は同約84cm、木目調のデザインを採用。テーブルやコンソールは家具調の質感で書斎や寝室のようなパーソナル空間を演出。寝具はテンピュール製。テレビモニターは23インチで、液晶のタッチパネル式エンターテインメント・コントローラーを採用。座席配列は横1-2-1

「最先端の快眠」が体験できるビジネスクラス

ビジネスクラスには完全フルフラットシートを採用。周囲をパーテーションに囲まれた座席は、まさに従来のファーストクラス並みのプライベート空間といえる。寝心地にもこだわり、腰を支える部分の素材密度を高くし、各乗客のボディラインに合わせてスムーズに体を支える工夫がされた特製のマットレスを使用。枕は両端の素材の反発力を高めることで横向きに寝た際も理想的な頭の高さをキープでき、首や肩に負担をかけないとされる素材で、「最先端の快眠」(同社)を体験させてくれる。また、足元に離着陸時に手荷物が置けるスペースがつくられるなど収納スペースが多いのも特徴で、23インチのテレビモニターはこのクラスでは世界最大級だ。

ビジネスクラスのシート名は「SKY SUITE(スカイスイート)」。全長は最大約188cm、幅は同約65cm、水平型完全フルフラットシート。個室感のある「ファーストクラス並み」(同社)の居住性。全席で通路への直アクセスが可能。パーテーションは電動式のため、同行者とのコミュニケーションもとれる。テレビモニターのサイズは23インチで、液晶のタッチパネル式エンターテインメント・コントローラーを採用。離着陸時に手荷物が置けるスペースを足下につくり、通路側席には小物収納に便利なサイドテーブルを、窓側と中央席にはモニター下のテーブルとオーバーヘッドシェルフを配するなど収納スペースも随所に。座席配列は横2-3-2

トイレには、ファーストクラス同様温水洗浄便座を装備。一部の777-300ER型機に設置されたセルフサービスコーナー付近には、日本の自然の風景などの写真を展示した「スカイギャラリー」を設け、機内に癒やしを提供する。