『蒼穹のファフナー』や『ヒロイック・エイジ』などでおなじみの冲方丁氏が原作のSF小説『マルドゥック・スクランブル』。シリーズ全3部作として劇場アニメ化され、2010年11月に第1部『圧縮』、2011年9月に第2部『燃焼』が公開された本作だが、その完結編となる第3部『排気』が2012年9月29日に公開初日を迎える。

第3部『マルドゥック・スクランブル 排気』は2012年9月29日より公開開始予定

劇場公開に先駆け、ついに完成したシリーズ第3部『排気』の関係者向け完成披露試写会が9月12日に実施され、原作・脚本を務める冲方丁氏、監督の工藤進氏、そして主人公・ルーン=バロット役を担当する林原めぐみが舞台挨拶を行った。

完結編の完成披露ということで、「今日という日が来るのかと、内心不安もありつつの3年間だった」という工藤監督。「本当に無事に終わってよかったというのが正直なところ」と安堵の表情を浮かべつつも、まだ映像を観ていない冲方氏と林原に対して「お二人の感想が怖いところであります」と会場の笑い誘う。

(写真左より)冲方丁氏、林原めぐみ、工藤進監督

「若い頃にものすごい熱情をもって書いたものを、崩すことなく今の自分が新たな形でお客さんに届けなければいけないということで、いろいろな意味できつかったですが、自分にとっても大きな節目となった」と語る冲方氏は、「このアニメがなければ。原作小説を一から書き直すことなんて絶対にしなかったと思う」と振り返った。

主人公であるルーン=バロット役を演じるにあたり、「キャリアを積んでおいてよかったと思う」という林原は、周りに流されず、自分のやりたいこと、自分の思っていることを根底に、業界を渡ってきた自分が、芯が強く、翻弄されないバロットの声を担当できて本当に良かったと笑顔を見せる。また、映画のパンフレットに掲載されるウフコック役の八嶋智人との対談について触れ、「あまりテレビでも観られないような骨太なお話がたくさんできたので、そこもあわせて観ていただけたら」とアピールした。

今回の試写会が初見ということもあり、「絵と声と音が合わさり、それがどんな相乗効果を生むのかが非常に楽しみ」という冲方氏。「個人的には林原さんの歌が作中に流れるのが楽しみ」と語り、「純粋に、原作者としてではなく、ファンとしてでもなく、1人の人間として非常に楽しみな作品になると思います」(冲方氏)。

『マルドゥック・スクランブル』の主題歌は、第1部『圧縮』、第2部『燃焼』ともに本田美奈子.の楽曲が使用されたが、第3部『排気』の主題歌も本田美奈子.の「つばさ」。ただし、今回はバロット役の林原が歌うということで、「この作品はずっと本田美奈子.さんという素敵な歌手の方が支えてくださっていたので、最後まで本田さんでいいのではないか」という思いがあったという林原だが、原作者の冲方氏から「命のバトンタッチをしてほしい」と言われて「迷いが取れた」というエピソードを披露。「どういう形で皆さんに届くかはわかりませんが、命を繋ぐという役割においては、1mmの迷いもなく歌うことが出来たので、誇りを持ってお届けできればなと思っています」(林原)。

その話を受けて、「これは誰にも言ってないんですけど」と前置きしつつ、「ダビング作業をしながら観ているとき、これ林原さんの声? 本田さんの声? ってちょっとわからなくなったことがある」という工藤監督は、「本田さんから林原さんのバロットへのバトンタッチという意味では本当にうまくいっていて、気持ちが乗り移っているような感じを映像を観ながら思ったので、そのあたりはすごくバッチリ成功しているということを本当に感想として思っています」と語った。

なお、第1部『圧縮』の主題歌でもある「アメイジング・グレイス」だが、第3部『排気』では、林原めぐみと本田美奈子.の歌声を重ねたスペシャルコラボVer.が挿入歌として使用されているので、こちらも注目しておきたい。また、主題歌・挿入歌を収録したマキシシングルは、公開初日となる9月29日の発売予定となっている。

舞台挨拶の最後に冲方氏が「次の10年に残るような作品を作ったと、スタッフ一同、誇りを持って言いたいです」と語る劇場アニメ『マルドゥック・スクランブル』。シリーズ3部作の完結編となる『排気』は、2012年9月29日より劇場公開がスタートする。公開劇場などの詳細については、『マルドゥック・スクランブル 排気』の公式サイトなどをチェックしてほしい。

なお、2012年9月20日(木)には、渋谷公会堂にて「『マルドゥック・スクランブル 排気』公開直前記念イベント」が開催される。イベントでは、第1部『圧縮』、第2部『燃焼』の劇場公開ver.が上映されるほか、冲方氏、林原、工藤監督、そしてドクター・イースター役の東地宏樹らによるトークショーも予定されているので、こちらも注目しておきたい。なお、本イベントは完全無料招待制となっており、現在公式サイトでは参加者の募集が行われている。応募締め切りは9月17日(祝・月)の23時00分までとなっているので、まだ応募していない人は、早めにチェックしておきたい。

(C)冲方丁/マルドゥック・スクランブル製作委員会