場面によって選択できる柔軟なファイル復元機能
デジタルデータの資産価値が上がる一方である。写真や音楽、動画などのデータのみならず、各種サービスのIDやパスワードに代表される重要情報など、個人においても企業でのデジタル資産管理と同様にその重要性は増すばかりである。
デジタル資産は、「ファイル」という一種のデータに集約させるコンピューターの仕組みに従いながら管理されている。この仕組みは、ちょっとしたケアレスミスや、不意のトラブルによって消失する可能性は常に付きまとう。そのため、常日頃からバックアップの作成やデータの冗長化など、自衛策を講じなければならない。しかし、人は忘れる生物である。バックアップの重要性を重々承知しながらも、疎かにしてしまいがちではないだろうか。
結局のところ「ファイルが見つからない」「開いたら内容が古いものだった」などトラブルが発生して初めて、その重要性を知るのである。このような方々の手助けとなるのが、データ復元ツール。誤って削除してしまったファイルを以前のように使用するためのソフトウェアだ。しかし、「なぜファイルが復元できるのか」ということに疑問をお持ちになる読者もおられるだろう。
まずはその仕組みを見てみよう。例えばHDD(ハードディスクドライブ)ではファイルを管理する仕組みとして「ファイルシステム」という機能を実装し、WindowsではFAT(File Allocation Table)やNTFS(NT File System)を採用。細部や機能は異なるが、基本的にはファイル名やファイルサイズ、データの保存位置などを管理するインデックス情報(NTFSではMFT:Master File Table)と、ファイルの内容となるデータを記録する領域の二カ所にわかれている(図01)。
また、データ領域に保存されるファイルの内容は一カ所(セクター)ではなく、データサイズに応じて複数箇所に保存されることも。これがフラグメント(断片状態)の原因となるのだが、趣旨が異なるので割愛する。ここで示したいのは、インデックス情報とデータ領域の関係。図01にある「foo.jpg」というファイルの実体はデータ領域に保存されているものの、同ファイルに関する情報はインデックス情報に保存されているのだ。
では、Windows上からファイルを削除した場合は、どのようになるのだろうか。具体的にはインデックス情報に保存された「foo.jpg」というファイル名の先頭文字を消しているにすぎない。「f」の文字コードは0x66だが、この部分をNULL(0x00)に変更することで、Windows上から存在しないようにしているのだ。ここで重要になるのがデータ領域の状態。
よくデータ復元ツールでは「誤って削除したファイルの復元率を高めたい場合は、ディスクに変更を加えてはならない」という。これは、インデックス情報から解放されたデータ領域の内容を上書きさせないためである。インデックス情報から解放されたデータ領域は、他のファイルが保存される際に上書きされる可能性が高いからだ。そのため、一般的なデータ復元ツールでは、インデックス情報に残されたファイルの片りんと、データ領域に残されたデータを精査し、ファイル復元を行っているのである。
今回紹介する「HD革命/FileRecovery」のファイル復元機能も同様の機能を備え ながら、[ごみ箱から削除してしまった]、[ドライブごとフォーマットしてしまった]、[ドライブごと認識されなくなった]など初心者でも理解しやすい"簡単復元"モードも備えている。製品は基本機能を備える「HD革命/FileRecovery Standard」(価格4,980円、ダウンロード版/アカデミック版の価格3,980円)と「HD革命/FileRecovery Professional」(価格が7,980円、ダウンロード版/アカデミック版の価格6,380円)とラインナップされる。
Professional版には、パーティション情報だけのスキャン/復元で高速な処理を行う「パーティションリペアツール」、PCが起動している状態で、製品CDから直接ソフトを起動して使用することもできる「ファイル救出ツール」なども搭載される。ファイルを救出する際にも大いに役立つだろう(図02~04)。
ファイル救出という観点から見ると、既存のファイルもあわせてサルベージしたい場面もある。その際に便利なのが「ファイル・フォルダーのコピー」機能。前述のWindows PE環境から呼び出せる同機能を用いることで、削除していない通常のファイルやフォルダーをまとめてコピーできるため、緊急用ツールとして活用の幅が広い。ちなみに本製品には、USBメモリーから同等を起動できる作成ツールも用意されているので、光学ドライブを備えていない環境でも使用可能だ(図05~06)。
また、通常の操作では復元できない場合は「ファイルの詳細復元」機能を使用するとよい。特定の拡張子を持つファイルを検出する「直接ファイルを検出する」は、復元ジャンルが限定されるものの、拡張子を指定するぶん検出率が向上するという。総合的なファイル救出に用いる場合は、ファイルシステム全体をスキャンする「ファイルシステムを検出してスキャンする」がよい。インデックス情報とデータ領域を共にスキャンするため網羅性が高いものの、データ領域の状態によってはファイルを検出できないケースもある。いずれも性格が異なる機能だけに、両者を場面に応じて使い分けるべきだろう(図07~08)。