今年も夏がやってきました! ……というにはまだ少し早いかもしれませんが、今から夏の予定を立ててワクワクしている人も少なくないはず。海、キャンプ、バーベキュー、それらも夏の楽しみとしては定番ですが、夏といえば、そう、やっぱり「恋」ですよね!

でもちょっと待って!

恋愛は楽しいことばかりではありません。叶わぬ恋もあれば、裏切られる恋もあり、時にはちょっと怖い思いをすることだって……。

ということで、今回は電子貸本「Renta!」から、ワケあり恋愛漫画をピックアップしてみました。何のしがらみもない爽やかな恋愛とは少し違った大人の恋物語をお楽しみください。

『SとM』(日本文芸社刊)

SとM

……と、そんな風に煽った後で何なんですが、この「SとM」は正直言って恋愛漫画とはちょっと違います。強いて言うならギャグ漫画に近いエロ漫画といえるでしょうか。いや、ジャンルとしては恋愛漫画なのでしょうけど、本作を大まじめに恋愛漫画として読む人はそんなにいないのではないかと思うので。

もちろんつまらないわけではなく、むしろそれをわかって読む分にはとても面白い漫画なのです。現在Renta!では23巻まで出ており、かなり長い作品ではありますが一気に読ませるだけのパワーを持っています。

主人公は真面目で誠実な39歳のサラリーマン、誠。愛する妻とかわいい娘を持ち、順風満帆に思えた誠の人生は、ある日を境に一変してしまいます。その原因は、同窓会で知り合った高校時代の初恋相手の娘・沙耶。誠の会社にまで入り込み、なぜか執拗に誠を誘惑してくる沙耶の真の狙いは何なのか? それが明らかになったとき、さらなる恐怖が誠を遅うのでした――。

本作はいくつかの章に分かれて構成されているのですが、ストーリーのパターンは基本的にすべての章において最初から最後までずっと同じです。

まず誠を誘惑する女性が現れ、「僕は誘惑には乗らないぞ!」と言いながらもいつの間にか誠が罠にハマっていき、女性の真の狙いは○○○だった! ……といった具合です。

たまにこのパターンから外れる場合もあるのですが、その場合でもきっちり誠も巻き込まれますし、必ず女性からの誘惑イベントが発生します。これはもう、エロ漫画としての側面を持っている以上、仕方のないことではあるのですが、あまりにも無理やりな展開も多くて思わず笑ってしまいます。登場人物も良い感じに全員ぶっ壊れているので、「まともに見える人がいつ壊れるのか」というところに注目して読んでも面白いと思います。

とはいえ、本来めちゃくちゃなはずの物語を破綻させずに(ある意味では最初から破綻しまくっているのですが)、強引に読者を引っ張っていくストーリーテリングの技術はたいしたもの。お話としては完全に昼ドラなのですが、だからこそのジェットコースターのようなスリリングな展開に最後まで目が離せません。

ちなみに主人公の誠は、最近ネットなどでもたまに話題に上る「真面目系クズ」の代表みたいな男ですので、心当たりのある男性にとっては我が身を省みる良い機会になる……かもしれませんね。

『夏雪ランデブー』(祥伝社刊)

夏雪ランデブー

打って変わって爽やか、かつ少し不思議で切ない三角関係を描いた漫画をご紹介しましょう。7月5日からアニメ化される「夏雪ランデブー」です。

花屋でバイトする目つきの悪い青年・葉月(はづき)は、店長の未亡人・六花(ろっか)に片思い中。あるとき六花の部屋に入った葉月が見たのは、彼女の亡くなった夫・島尾だったのでした。純情で一途な葉月と、夫と死別して以来新しい恋に踏み出せない六花、そして葉月に六花を渡すまいと邪魔ばかりする幽霊の島尾。少し不思議な三角関係の結末は――?

花屋が舞台なのもあり、全体的にゆったりした空気感の漂う本作。主人公の葉月はクールなんだけど一途で、幽霊の島尾は草食系男子っぽいんだけど粘着質と、キャラクターがとても現代的。三角関係といっても、幽霊の島尾を見たり会話したりできるのは葉月だけなので、六花はそのことに気づいておらず、その微妙な関係性がストーリーにさらに深みを持たせています。

こうした未亡人との恋愛物では、死んだ夫の存在をどう受け止めて前に進んでいくのかというところが焦点になることが多いのですが、たいていは生きている人間の気持ちの問題になりがちです。

そこに亡くなった夫を幽霊という形で蘇らせて放り込んでみるとどうなるか……という試みが面白いですね。

『net/~(恋する既婚者たち)』(祥伝社刊)

net/~(恋する既婚者たち)

ちょうどインターネットが普及し始め、サラリーマンがPC操作を覚えようと必死になっていた時代、2002年頃が舞台の大人のラブストーリー。

31歳、結婚3年目、子ども一人、小遣い制。平凡でごく普通のサラリーマンの筧。仕事も家庭もあってそれなりに幸せなはずなのに、上司には怒鳴られ、タバコ・昼食代こみ4万円で1カ月を過ごさなければならない日々に不満は募るばかり。そんな筧が出会ったのは、PC教室の美人インストラクターのミドリでした。メル友から始まった二人の恋の行く末は――。

ということで最後は既婚者のラブストーリー。端的に言うと不倫の話です。もっとも、結婚されている男性の中には筧と同じような「現状への小さな不満」だったり「恋愛への未練」だったりを抱えて過ごしている人もそれなりにいるのではないかと思います。そういう方にはズシッと刺さる作品ではないでしょうか。「小心者の既婚者」という筧の性格がまたリアルなんですよね……。

2002年が舞台ということで出てくる言葉が古かったり(「メル友」ってあまり言わなくなりましたよね)といった違和感もあるかもしれませんが、全体的には古さを感じずに楽しめるはずですよ。