"昔の日本"はこんなに暑くなかった?

今のようにエアコンも扇風機も、冷蔵庫もなかった時代。日本の夏は今よりも涼しかったのでしょうか? まだ冷蔵庫が三種の神器としてあがめたてられ、経済白書に「もはや戦後ではない」と明記され、戦後復興の終了を宣言した、日本経済が急成長した1950年代後半の神武景気と、60年代後半のいざなぎ景気、80年代後半のバブル景気と最近の気温を比較してみました。

1950年代後半の神武景気で26.5℃、1960年代後半のいざなぎ景気では27.2℃、1980年代後半のバブル景気で27.5℃です。どうですか、今から50年以上前、当然エアコンもまだ現在のように各部屋にひとつどころか、家庭には全く普及していない時代と、現代の気温はさほど変わらないのです。それなのになぜ今の方がこんなに暑く感じるのでしょうか。答えは、人が多く住んでいる場所の気温がより上昇してしまう、「ヒートアイランド現象」です。

現代の日本では地面がアスファルトやコンクリートで固められ、水分が少ないため、より熱せられて熱くなります。真夏のアスファルトの表面は、50~60℃にも達するとか。また、ビルなどが増え、コンクリートの建物が多くなったことも要因の一つ。コンクリートの建物は、暖まりにくく冷えにくい性質のため、昼間に蓄積した熱を夜間に放出し続け、外気温を温めます。他に、エアコンの室外機などからの人工排熱も関係していると言われています。

「ヒートアイランド」の現代を涼しく彩る"日本古来"のグッズ

さて、過去と比較して平均気温は変わらない、しかしヒートアイランド現象のせいで体感気温があがっている、という現代を涼しく過ごすにはどうすればいいのでしょうか。先人たちの知恵を拝借してみましょう。

まず、「すだれ」です。すだれは基本細く切った竹を糸で編み連ねたものです。日本の古典大道芸に南京玉すだれというものがありますが、あの玉すだれよりは大きなものになります。これを軒に吊るしかけ、日よけと目隠しとして使います。

カーテン、いやブラインドの元祖でしょうか。でも、ブラインドやカーテンと大きく違うのが、すだれは窓の外に吊るすということ。窓の外に吊るして日よけにすることで、太陽光から発する熱エネルギーを室内に入れず、結果室温があがるのを防ぐのです。室温があがるのを防ぐということは、そう、節電になります。使わない時はブラインドのようにくるくる巻きあげられるのもすだれの魅力。最近は100円均一などでも売られていてお手軽です。

すだれと似ているものに、「よしず」があります。すだれと比較すると、聞きなじみのない単語かもしれませんが、子どもの頃、夏休みに行った海水浴場で、昔ながらの海の家の入口とかの壁に立てかけてあった、あれがよしずです。立てすだれとも呼ばれます。

よしずは、基本葦の茎を糸などで編み連ねたものです。これを軒に立てかけ、日よけと目隠しとして使います。すだれ同様に、太陽光から発する熱エネルギーを室内に入れず、結果室温があがるのを防ぎ、エアコンの節電に繋がります。また、すだれと違うところは、軒とよしずの間に空間ができ、そこを風が通る、つまり熱がこもらないということ。また、立てかけたよしずに打ち水をすると、よしずを通って室内に入ってくる風が2℃下がるともいわれています。立てかけるのに若干スペースが必要になりますが、スペースがあるならば、すだれを吊るすよりも、よしずを立てかけた方が涼しく過ごせます。

室外を冷やすにはどうすればいいか?

「すだれ」や「よしず」で陽をさえぎることで、室内は快適な空間になりました。でも一歩外へ出れば灼熱地獄。とっくに陽も暮れたというのに、足元のアスファルトから熱気が立ち昇ってきます。窓を開けて夕涼みなんてとんでもない! いつまでも熱気が室内へ入ってくる、まさにここはコンクリートジャングル。そんな時に役立つのが、「打ち水」です。庭や道路などの屋外に水を撒く、昔からの日本の風習です。

道路などの埃(ほこり)を抑える効果、場を清める神道的な意味合いもあり、玄関先などへの打ち水は「来客への心遣い」の一つでもあります。料亭などで打ち水がされているのはそういう理由からです。でも今回注目したいのは、打ち水の気化熱(水が蒸発するときに周囲から吸収する熱)を利用し、辺りを涼しくする効果。水1リットルの蒸発で奪われる熱量は、約580kcal。1㎡あたり1リットルずつ水が撒かれた場合、気温は2~2.5℃下がるという試算があります。かなりの冷却効果ですよね。とはいえ、打ち水をする際には注意したい事があります。

(1) 打ち水に使う水は飲用水ではない水を使う

水道からそのままジャバジャバ水を撒くのは、もったいないです。お風呂の残り湯や雨水、洗濯のすすぎの水などを利用しましょう。

(2) 朝や夕方の涼しい時間帯に(陽が傾いている間に)行う

道路からの照り返しによる暑さ対策には、昼間や日向の打ち水も効果的ではありますが、昼間まだ陽が高いうちに打ち水を行うと、蒸発した水で湿度があがり、余計に暑苦しくなる場合もあります。

(3) 辺りに気をつけて水を撒く

水を撒くと道路は滑りやすくなります。特にマンホールやアスファルトの白線の上などはスリップしやすいので、打ち水は避けます。また、人や自転車の飛び出しにも気をつけて撒きましょう。

道路だけではなく、エアコンの室外機や壁面、もちろんよしずに打ち水するのも効果的ですよ。

五感を活用して涼を演出

環境を整えるだけではなく、自分の持つ五感をフルに使って涼感を得る方法もあります。まず寒色をインテリアに使ってみましょう。カーテンやラグなどを涼しげな色にするだけでも視覚から得る涼感効果が違います。また、沢山物がある雑然とした部屋より、スッキリと片付いた部屋の方が涼しさを感じられます。

聴覚では涼を感じる音を取り入れます。ここはやはり「風鈴」でしょう。風鈴も素材によって音色が違います。自分のお好みの風鈴を是非今年はみつけてください。

触覚ではシャリ感のある素材の衣服を取り入れます。麻やクレープ素材といった古くから夏物衣料につかわれてきた素材がオススメです。

氷などを浮かべた料理や、水ようかん、ゼリー、シャーベットなどで味覚からも涼をとりましょう。そうそう、忘れてならないのが、「かき氷」と「冷やし中華」です。

嗅覚は、「ハッカ」の香りなどどうでしょうか? 薬局で買えるハッカ油がお手軽。化粧水のボトルへ1滴たらせば、夏用のスースー化粧水になります。浴槽にも2、3滴。スースーお風呂ができ上がります(※たらしすぎるとスースーを通り越して寒くなるので要注意)。

自分の暮らしにあった涼感作戦で、エアコンを使う時間を短くし、節電しつつも元気に夏を乗り切りましょう!

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