次世代ファイルシステムとなるReFSの搭載は見送られ、これまでと同じNTFSを採用するWindows 8。ディスク構造を確認し修復するチェックディスクの存在は必須ながらも、邪魔な存在に感じたことはないだろうか。Windows 8に加わる変更点と一つが、チェックディスクの実行タイミング。Windows 8の開発チームによる公式ブログBuilding Windows 8の最新記事では、これに関する詳しい説明が行われた。また、先週のレポート記事でも報告したDVDビデオ再生機能に関する追加情報も明らかに。今週もMicrosoftの各公式ブログに掲載された記事を元に、Windows 8に関する最新動向をお送りする。

Windows 8レポート集

よりスマートになるWindows 8のチェックディスク

Windows OSに限った話ではないが、OSとストレージデバイスは親密な関係にある。より多くのデータを扱うために生まれたHDD(ハードディスクドライブ)の容量は日々増加し、大量のファイルを扱うには効率的なファイルシステムが必要となる。そのため、Windows OSではFAT(12)から始まり、16ビット化したFAT16、ロングファイルネームをサポートしたVFAT、32ビット化したFAT32と拡張してきた。

しかし、コンシューマー(消費者製品)向けOSであるWindows 9x系とビジネス向けOSであるWindows NT系の統合により、主軸となったのはNT File Systemの略称であるNTFS。こちらもWindows NTのバージョンを重ねると同時に改良が施されており、Windows NT 4.0の時代はNTFSバージョン1.2を実装していたが、Windows XP以降は最新版となるバージョン3.1を実装し続け、NTFS自体に大きな変化はない(図01)。

図01 NTFSのバージョンは「fsutil fsinfo」コマンドで確認可能。画面はWindows 7上で実行したものだが、バージョン3.1であることが確認できる

FAT/NTFSに共通しているのが、ディスク構造を修正するユーティリティ。そもそも一般的なファイルシステムでは、ファイルの中身を保存するデータ領域とファイル情報を管理するインデックス領域が用意されているが、理論的もしくは物理的破損によって整合性が取れなくなってしまうことがある。それらを修復するのがチェックディスク(9x系ではスキャンディスク)だ。いずれもディスクの構造をチェックし、破損を確認できた場合は修復を行うという。

Windows 8では、このNTFSをチェックし修復するための機能に若干の改良を加えるようだ。ブログ記事によると、ディスク容量の増加とチェックディスクの実行に必要なダウンタイムの長期化を問題視し、チェックディスクを実行する機会を減らす機能を搭載した。

一つめがSpot Verification(スポット検証)サービス。物理メモリに何らかの異常が発生している場合でも、ディスク構造が破損するケースは少なくない。メモリ上にプールされた情報をディスクに書き込むファイルシステムドライバーに悪影響を与えるからだ。そこで同サービスを採用し、同様のトラブルを未然に防ぐというもの。

二つめがOnline identification and logging(オンライン識別とロギング)。ディスク構造に問題があることが確認されている場合、次回再起動時にチェックディスクを実行するためのトリガーが追加される。だが、Windows 8では、スケジュールタスクとして登録するという。実際にはアクションセンター経由でスキャン実行をうながすメッセージが現れ、実行時は優先順位を低くした状態でチェックを行うというものだ(図02)。

図02 ディスク上のエラーを検知すると、アクションセンター経由でスキャンの実行を求められる(画面はブログより)

そして最後はSpot fix。オンラインスキャンでは修復できない問題を検知した場合はオフラインスキャンを必要とするが、早期に問題を改善するためにアクションセンター経由でコンピューターの再起動を求め、オフラインスキャンを実行する。このロジックを用いることでチェックディスクによるダウンタイムを最小限に抑えることが可能になったそうだ(図03~04)。

図03 Spot fixもアクションセンター経由でメッセージが現れ、コンピューターの再起動を求めてくる(画面はブログより)

図04 こちらはWindows Server 2008 R2とWindows Server 2012のチェックディスクによるダウンタイム時間を比較したもの。Spot fixの導入によりダウンタイムはほぼゼロとなった(画面はブログより)

いずれの機能も必要に応じて呼び出され、比較的発生しやすかったディスクの整合性問題を被害が広がる前に回避できる仕組みが組み込まれた。このようにMetroアプリケーションやMetroデスクトップが注目されがちのWindows 8だが、小さいながらも有益な改良が多く組み込まれている。Metroスタイル自体は賛否があるものの、順当なWindows OSとしては、これらの進化・改良に期待を持っていいだろう(図05~07)。

図05 Windows 8のディスク修復の流れ

図06 プロパティダイアログにある<チェック>ボタンは残されており、手動でチェックディスクを実行することもできる

図07 エラー発生時はダイアログの内容も変化する(画面はブログより)