富士急行は2月29日から新型電車6000系の運行を開始した。1985年に国鉄山手線向けに製造され、その後、JR東日本が京葉線で運行した205系電車を改造したという。客室デザインは同社の「富士登山電車」やJR九州の車両のデザインなどで活躍する水戸岡鋭治氏。今回落成した2編成は日立製作所が製造した205系を改造したもので、今年度は川崎重工製と日本車輌製を改造した編成が1編成ずつ登場予定。改造工事はJR東日本系列の東日本トランスポーテックが担当した。

6000系は富士急行の保有車両としては初の3両編成で、スイッチバック式の富士山駅側が1号車、大月 / 河口湖駅側が3号車に。1号車の「クモハ6000」はモーターと運転台付き、2号車の「モハ6000」はモーター付きの中間車、3号車の「クハ6000」はモーターなしの運転台付き車両となる。

外観は205系の面影を残しつつ、運転席周りの黒と乗降扉の青を塗装し、そのほかの部分はカッティングシート加工となった。帯などに用いられた青色は富士山をイメージしたという。運転台窓下の黄色はこの青に似合うアクセント。黄色のアクセントラインは、かつての富士急行バスでも採用されていたとのこと。富士山の青と組み合わせて、ダイヤモンド富士を表現しているともいえそうだ。

戸袋(ドア格納部)には「FUJIKYU COMMUTER TRAIN」の頭文字を組み合わせたシンボルマークを配置。乗降扉窓には水戸岡氏がデザインした富士急行のロゴが描かれた。また、前面と側面の行き先表示器は方向幕からLEDに変更された。

客室は床やつり手に難燃加工した木材を使用し、ぬくもりや優しさを表現。シートのモケット柄は数種類あり、隣り合うロングシートで組み合わせを変えるという遊び心も。2号車「モハ6000」は1号車側の座席を1台撤去し、車いすスペースを設置。室内の乗降扉上部にはLED案内表示器も搭載し、千鳥式に配置された。車内放送の自動化も実施され、運転室に制御装置が新たに取り付けられている。自動音声はこの分野で活躍するクリステル・チアリさんが担当。

1号車「クモハ6000」は、モハ205にクハ205の運転台を移植した車両。モハ205の床には台車点検用の蓋がある関係で、乗務員室の扉が右端から中央部へ変更されている。パンタグラフはシングルアーム形に変更された。これは、205系の菱形では積雪時に下がってしまうためとのこと。パンタグラフは2台搭載し、架線に霜が付いた場合の霜取り装置を兼ねているという。

このほか、寒冷地仕様として「乗降扉の手動開閉ボタン」「室内暖房設備の追加」「耐雪ブレーキ」「床下機器の耐寒耐雪構造」が採用された。先頭車運転台側の台車には、スカートの内側にスノーブローと排障器を取り付けている。

6000系の初営業列車は河口湖駅15時37分発の大月行だった。この日は2月29日「フジキュー」の日で、富士急ハイランドが入園料無料になっていたが、あいにくの積雪で訪問者は少なめ。しかし途中の富士山駅で大勢の高校生が乗車し、新しい電車に驚きの声を上げ、室内を珍しそうに見渡していた。もし晴れていれば、帰宅する高校生と富士急ハイランド利用客で混雑したはず。今後も3両編成のメリットが活きてくるだろう。

富士急行「6000系」掲載写真の概要

写真1 富士急行6000系電車。スイッチバックする富士山駅側が1号車
写真2 大月 / 河口湖側の3号車
写真3 連結部妻面の銘板。改造を担当した東日本トランスポーテックが追加された
写真4 木材を活かしたインテリアは"水戸岡デザイン"の定番
写真5 乗降扉には水戸岡版富士急行ロゴが
写真6 優先席の釣り手は赤い
写真7 車いすスペース
写真8 乗降扉の上にはLED案内表示器と停車駅案内を千鳥方式で配置
写真9
写真10 クモハ6000は乗務員扉を中央に配置
写真11 205系の面影を残すクハ6000の運転台付近
写真12 運転台は205系そのまま。1分間操作しないとブレーキがかかるシステム搭載
写真13 自動放送と案内表示器の操作パネルが追加された
写真14 側面方向幕もLED化
写真15 ドア開閉ボタンを設置
写真16 台車の前の"く"状の部品がスノープロー。車輪の前の部分に排障器を設置
写真17 第2編成のベースとなった205系は2段窓仕様