"かゆいところに手が届く"改良が加わったエクスプローラー

エクスプローラーの改良点はリボンUIだけではない。変更内容は多岐にわたるため、一つずつ解説していこう。一つめは同一名を持つファイルがコピー先フォルダーに存在する場合のダイアログ。Windows 8 Developer Previewまでは、ファイル名/ファイルサイズ/更新日時および属性をチェックしていたが、同Consumer Previewでは精度を高めることで、誤ったファイルの上書きを回避している。特にタイムスタンプに関しては100ナノ秒レベルのタイムスタンプチェックを導入し、わずかな差を見逃すこともなくなるので、これまで以上にファイル管理が容易になりそうだ(図05)。

図05 同一名などのファイルを上書きする際に表示されるダイアログ。精細な比較を行うことで誤った上書き操作を回避できる(公式ブログより)

LAN上のコンピューター間でファイルをコピーする際は、SMB(Server Message Block)プロトコルが用いられるが、Windows 8では更なる改良が加わったバージョン2.2が実装される予定だ(Windows 7はバージョン2.1)。同バージョンでは、新たにマルチチャネル機能を備え、複数の物理ネットワークインターフェースを用いた高速化を実現できる。実際に試してみないと、既存環境でも高速化するのか判断できないが、複数のネットワークリンクを張れるコンピューターと賢いスイッチングハブという構成でも恩恵を受けられそうだ。

マイナーなところでは、EXIF(Exchangeable image file format:画像に撮影時の情報を埋め込む規格)情報を読み取って画像の向きを変更する機能が加わっている。Windows 7のエクスプローラーでは、画像をそのままサムネイル表示するだけだったが、Windows 8のエクスプローラーはEXIFの撮影方向を読み取り、自動回転するというものだ。実際に画像データを書き換えるのか、エクスプローラー上の表示に限ったものなのか判断できないが、前者であればデジタルカメラ画像の整理をコンピューターで行うユーザーには有益なメリットとなる(図06~07)。

図06 Windows 7のエクスプローラー。デジタルカメラで撮影した画像がそのまま表示されている(公式ブログより)

図07 同一の画像をWindows 8のエクスプローラーで表示した例。サムネイルが撮影方向を反映し、正しく表示されている(公式ブログより)

パフォーマンスの改善が主目的となる改良点として、オーバーレイアイコンにも注目したい。そもそもオーバーレイアイコンとは、アイコン上にファイル属性を指すアイコンや関連付けアプリケーションのアイコンを表示するための機能だが、Windows開発チームでは、プライベートファイル/フォルダーを示す南京錠のアイコンを表示させるだけで、120ミリ秒の遅延が発生していることを確認した。

一秒未満の遅延など大したことのないように思えるが、Windows VistaをベースにWindows 7の開発に着手した際、同チームが注目したのは、各所に散らばるミリ秒レベルの遅延である。これらの無駄を廃することで、快適に操作できるWindows 7の存在につながったのだ。この例をかんがみれば、共有情報を示すオーバーレイアイコンの廃止は正しいと言えるだろう。なお、共有情報は詳細表示時に列挙される項目に移行し、同情報が必要な場合は列項目を表示させるという仕組みに変更される予定だ。ただし、同項目を表示させるとこれまでと同様の遅延が発生するため、初期状態では非表示となる(図08)。

図08 共有に関する情報は詳細表示の列項目に移行。初期状態では遅延を回避するため、非表示となる(公式ブログより)

このほかにも、ナビゲーションウィンドウに残されていたバグの修正や、リボンから任意のフォルダー/ファイルをピン留めする機能、コマンドプロンプト/PowerShellの呼び出し機能などが加わる予定だ(図09)。

図09 リボンの<File>メニューからコマンドプロンプト/PowerShellが呼び出し可能になる(公式ブログより)

ファイル/フォルダーという概念が存在し続ける限り、コンピューターを使用する上で手放せないファイル管理ツール。長年にわたって使い続けられてきたエクスプローラーの操作性はOSの評価を左右するものであり、それを理解する同社も革新的な機能を試みつつも、下位互換性の維持に努めている。ユーザーによって評価は大きく左右されるものの、まずはパブリックベータ版であるWindows 8 Consumer Previewの登場を待ちたい。

阿久津良和(Cactus)