旧字体外字であて名面作成機能を強化

「筆まめVer.22」

日本における年賀状の歴史は古く、その始まりは奈良時代までさかのぼるという。現在のように、はがきであいさつ状を送るようになったのは、郵便制度が始まり、郵便はがきを発行した明治六年というから、百数十年の歴史を持つ"文化"と言えるだろう。

それだけに親しい友人や、お世話になった仕事関係者へ気持ちを込めて年賀状を送るという習慣は、昨今のIT時代でも失うべきではない。それでも何かと忙しい年末に、手のこった年賀状を作るのが面倒であることは否めない。そこで登場するのが年賀状作成ソフトである。

2002年に日本郵政グループが発行したインクジェット紙型年賀はがきや、2004年登場の光沢紙型年賀はがきの登場により、パソコンおよび年賀状作成ソフトを用いた作成が容易になり、数多くの年賀状作成ソフトがリリースされているのは、改めて述べるまでもない。

各ソフトウェア会社は、例年この時期に年賀状ソフトをバージョンアップし、ユーザビリティを高めた新製品を発表しているが、同ジャンルのなかでも代表格に数えられる「筆まめ」シリーズの最新版では、あて名面に注力し、美しいあて名面印刷を可能にした。

そもそも多くのユーザーが多用する毛筆フォントは、単独で使用するとバランスが取りづらく、どうしてもレイアウトが崩れがちになってしまう。「筆まめVer.22」では、制作にあたりプロ書道家に監修を依頼している。その結果、あて名の頭文字を住所より半角下げるインデント設定や名字と氏名の一字空け、連名の位置などが自動的に行われるようになった。従来はユーザー自身が細かい調整を行う必要があったレイアウト設定も、これらあて名面デザインの機能強化により、だれでもキレイなレイアウトを実現できるようになった(図01~02)。

図01 あて名面の編集画面。プロ書道家が監修したレイアウトが活かされている

図02 横書きレイアウトの際も、英数字・漢数字を切り替えることでレイアウトの乱れを防ぐことができる

特筆すべきは人名用漢字として用いる外字も収録している点だ。そもそも我々が普段使っている漢字は大正12年に制定され、その後何度かの改定が施された"常用漢字"に含まれるものが大半である。このとき、字体をできるだけ簡略化した新字体が一般的に使われるようになったものの、年賀状を送る相手の名前や社名に旧字体が含まれているケースは少なくない。

例えば「さいとう」という名前一つ取っても「斉藤」「齋藤」「齊藤」と複数の"さい"があり、正しい漢字を使わないと失礼に当たる。礼節を抜きにしても、ある意味年始の初仕事ともいえる年賀状。完璧を期したいというのであれば、当然これら人名用外字をもって正しい名前を使いたいものである。「筆まめVer.22」はこの点に着目し、通常のフォントでは表示できない漢字のなかから、自治体や公共機関などで使用頻度の高い人名用外字を1,470文字も収録している。(図03~04)。

図03 あらかじめ用意された外字と「人名外字の変換・入力」機能を用いることで、旧字体をあて名や会社名などに用いることが可能だ

図04 外字を用いたあて先情報は通常ウィンドウに表示できないため、外字使用中であることを示すアイコンが付加される

年賀状とは相手に感謝の気持ちやあいさつをしたためるためのものだけに、名前に含まれる漢字を間違えるミスは極力避けたい。自分の名前を間違えた年賀状を受け取っても白けてしまうからだ。その点相手の名前や社名を正しく印刷できる「筆まめVer.22」の新機能は、ほかの年賀状作成ソフトと比べても大きなアドバンテージとなるだろう。

一年中使える年賀状作成ソフト

そのほかの機能として取り上げたいのが、「しんせつモード」。数回のクリックで好みの年賀状が作成できる同機能を、前バージョンに引き続いて踏襲し、使い勝手も向上している。前もって年賀状を作成する余裕があれば何も言うことはないが、大抵は師走の忙しい最中に急いで作るケースは決して少なくない。

その点「筆まめVer.22」の同機能を使用すれば、画面の指示に従って進めていくだけで、基本的な年賀状が作成できる。もちろん説明文書やサムネイル画面も大きく見やすいため、コンピューター初心者や年配ユーザーでも簡単に使用できそうだ(図05~06)。

図05 「しんせつモード」では送り先やデザインを選択するだけで、送付相手にあわせた年賀状が簡単に作成できる

図06 文書編集やイラストの変更、拡大縮小なども行える。つまり、簡易的な編集は本機能で完結できるのだ

年賀状を作成する際によくある一言メッセージにも対応。親しい友人や大事にしたい取引先などに対し、画一的な年賀状ではないことを強調するため、自身の近況や感謝の一文を手書きしたことのある方は多いだろう。「筆まめVer.22」では、新たに付箋を貼り付ける機能が追加されている。

文字どおりの付箋紙から、コミック風の吹き出しまで数多くのデザインが用意されており、手書きの一言コメントを書くためのスペースを簡単に作れるというものだ。透明度の設定や画像編集も行えるため、こだわったデザインになじむコメントスペースも作ることができる(図07~08)。

図07 パーツの一つである付箋を追加。最初に配色やフレームを選択する

図08 あとはサイズや透明度などを調整すれば、一言メッセージ用スペースの完成だ

このほかにも、たくさんの写真をセンス良く演出する「フォトコラージュ」機能や、手書き感覚で写真をデコレーションする「お絵かきペン」機能も強化されているが、せっかく購入した年賀状作成ソフトを一年に一回しか使わないのは面白くない。

「筆まめシリーズ」では、以前から往復はがきや暑中見舞など、様々なシチュエーションに沿ったはがきや封筒などの印刷機能を備えていたが、今回新たに宅急便送り状にも対応。ヤマト運輸が運営するクロネコメンバーズのWebサービスと連携し、「筆まめVer.22」の住所録データを使用して送り状を印刷するというもの(図09~10)。

図09 宅急便送り状の作成の作成は、クロネコメンバーズのIDが必要となる

図10 「筆まめVer.22」の住所録データを使って、送り状を簡単に作成できる

具体的には「筆まめVer.22」からクロネコメンバーズのWebサービスにログオンし、選択した住所録データを送信。サーバー側で必要な情報を確認して問題がなければ、PDFとして宅急便の送り状をソフトウェア内に表示。あとはカラープリンターで印刷するだけだ。自宅のプリンターを使ってA4普通紙で作成できてしまう。送り状を準備して、手書きで宛先を書くというのは、なかなか時間を使うものだ。こんなところも、年間を通して使えるソフトであるという所以だ。

このように年賀状に関する機能はもちろん、年賀状以外の様々な場面で活躍する「筆まめVer.22」は、既に年賀状作成ソフトの枠を超えて、パーソナルデータベースの地位に達したと言えるだろう。