【レポート】
昨年の半ばごろから、「節約疲れ」という言葉が盛んにメディアに取りざたされている。節約生活にストレスが貯まり、思わずその反動で散財したり贅沢をしてしまうというものだ。
2010年に日本フードサービス協会が発表した「外食産業市場動向調査」によると、外食業界の売り上げが2年ぶりに前年度を上回った。客単価の向上がその要因とされるが、それまでの低価格商品よりも少しだけ高めの値段設定をした商品が支持されたからだという。
実際、マクドナルドやモスバーガーの高級志向メニューが人気になり、コンビニのおにぎりやお弁当などでも従来より50円から100円高い価格帯が売れている。これらの背景にあるのが消費者の「節約疲れ」だという。
不景気で先の見えない時代、少しでも節約して貯蓄に励む。毎日100円バーガーや格安牛丼を昼食にして、土日も家に引きこもってお金を使わない。そんな禁欲的な生活に疲れ果てちょっとした贅沢感を味わいたいという人が増えている。
そんなちょっとした贅沢でストレスが解消される程度の「疲れ」なら問題はなさそうだ。ただし「節約疲れ」を通り越して「節約倒れ」になってしまっては元も子もない。
「マイホームを購入するために妻と節約生活を誓ったのはいいのですが、とにかく妻の徹底した節約ぶりに息がつまりそうな毎日です。1日小遣い500円の"ワンコイン亭主"は当たり前、電気や水の節約とまさに箸の上げ下ろしにまでうるさく言われる」と話すのは都内在住で某専門商社に勤めるK・Sさん(32歳)。
毎日の禁欲生活と休みも外に出ずにいるので、とくに奥さんはストレスが貯まっているのか、やたらに夫婦でのケンカが増えたと嘆く男性サラリーマンもいる。ここまで来ると一体何のための節約や貯蓄なのか分からなくなる。
節約だからと、あらゆるものを一律に削減するのはナンセンス。不要なモノ、無駄なモノにお金を使わないのは当然だが、生きるために必要なものまで削ったら身がもたない。また、その節約によってはたしてどれだけのお金が浮くのかを実際に計算して見る。水道代など風呂の残り湯で洗濯しても、せいぜい1回12円浮く程度。それによって風呂からバケツで水を汲む労力、ストレスなどを考えたら、むしろ普通に洗濯する方が総合的にトクだということも考えられる。
大切なのは優先順位を付けること。自分にとって必要なものと欲しいものを明確にした上で優先順位を明確にする。生活する上で何を優先するかは人によって違う。ある人は服は買わなくてもおいしいものは毎日食べたいと考える。ある人は逆に食事はカップめんで構わないからきれいな服が欲しいと考える。
自分にとって優先順位の低いところから節約するようにするだけでも、ストレスはかなり減るはずだ。それを一律にすべて減らそうとするから精神的に負担がかかる。
「お金が貯まる人は、節約の意識はなくとも自然に節約できてしまう人」と東京FPプランニングの紀平正幸さんは話す。貯まる人はしっかり自分の中で必要なものと欲しいものの優先順位ができていて、優先順位の低いものにはほとんどお金を出さないが、逆に優先順位の高いものには惜しまずお金を使う。一言で言うと「お金の使い方にメリハリがある」のだそうだ。
「彼らに"節約疲れ"という言葉はありません。なぜなら節約しているという気持ちがほとんどない。節約というより不要なものは買わない、買いたくないという気持ちだけ。ですから傘からボールペンに至るまで、こだわりのある良いものを1点だけ持つというのが特徴。ただ安いとかだけのものは一切買わない。家の中もモノが少なく生活自体が非常にシンプルです」(紀平さん)
「安物買いの銭失い」と昔からの言葉にあるように、100円ショップなどで安いからとやたらに買ってしまう人もいる。結局そういう人は本当に欲しいものを買っていないので、モノに思い入れがない。だから傘もボールペンもすぐにどこかに失くして、また新しくて安いモノを買う。気がつけば部屋には使わないモノがあふれかえって雑然としている。
震災以後、世の中全体が自粛ムードや倹約ムードに包まれ、「節約疲れ」からの消費復活は一時水を差された格好だ。しかしその自粛ムードもひと段落したいま、「節約疲れ」プラス「自粛疲れ」も相まって、消費者の財布が再び緩む可能がある。
人間、禁欲的に生活していては息が詰まってしまう。どこかで発散するという意味では、時には贅沢にお金をつかうことも必要だ。世の中にお金を還流させ経済を活性化させるという点からも、ある程度の消費は望まれるところだ。
ただし、単なる「節約疲れ」の消費ではなく、自ら優先順位を付けた上で、メリハリのあるお金を使いたいものだ。そうすることで、有意義にお金を使いつつも、一方でしっかりと貯蓄ができるようになるはずだ。当然「節約疲れ」などとも無縁になるだろう。
執筆者プロフィール : 本間 大樹(ほんま たいき)
月刊誌の編集を経てフリーの編集、ライター。経済、マネー、法律などの分野を中心に雑誌や単行本を執筆している。
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