8月26日、ネットサービス「イメージングスクエア」を刷新したカシオ計算機。従来のアートツールの拡充と新たに「DPアニメーション」機能を追加したほか、スマートフォン用アプリにも対応した。G-SHOCKやEXILIMなどハードに強い印象の同社が、ネットワーク事業の強化を推進する理由はどこにあるのか。カシオ計算機 取締役 DI事業部・樫尾和宏事業部長にお話をうかがった。

「イメージングスクエア」を、将来的な企業成長の足がかりに

1990年代後半に発売された携帯情報端末「カシオペア」に関連し、過去にもネットワーク事業へと挑戦してきた同社。だが今回は、そうした商品と紐づけた取り組みとは異なり、将来的な企業ビジョンを達成する足がかりにもなるものだという。

カシオ計算機 取締役 DI事業部長 樫尾和宏氏

「例えば、昨今のデジタルカメラ市場では、ハード競争の激化で他社との差別化が困難になってきた感がありました。そんな中、従来のようなハード売り切りの販売方法から、写真との関係や新たな楽しみ方を提案する、ソフト提案型に切り替えていってはどうかという新たな方向性が出されました。その計画に基づき、まず今年1月にオープンさせたのが、『イメージングスクエア』だったわけです」

ユーザーの生活面にも目を向けることで新たな市場を創ることは、"モノ"より"コト"を重視する現代のユーザー像に寄り添う判断だと言えよう。実はこの戦略は、カシオらしい"ものづくり精神"の対象を変えて、また今後の成功の鍵へと転換させる意味もあった。

「昨今の弊社のものづくりを見直すと、プロダクトアウト思考に陥っている傾向が否めませんでした。市場で売れるスペックばかりが優先され、そこに見合わない技術は作らない、逆にカシオらしくない技術でも要望があるから搭載するといった感じです。こうした流れを打開するためにも、ハードにこだわらず、インターネット上でデジタル技術を展開しようということになったのです。カシオらしい機能も自由に開発できますし、本当にユーザーに提案したい機能を気軽に楽しんでもらうことができるだろうと」

HDRアート機能を搭載したEXILIMの最新モデル「EX-ZR15」(写真はゴールドモデル)

イメージングスクエアでは、カメラ内蔵の専用機能だった写真変換や切り抜き加工などのデジタルクラフト機能を、インターネットサービスとして開放。約8カ月の間に、世界のカメラユーザーや写真愛好家たちから高い評価を得た。

「今回、サービスの刷新を進めた理由は、これまでのサービスで一定の評価をいただけた事も関係しています。我々の将来目標として『ハードメーカーからの脱却』というものがあるのですが、イメージングスクエアはその第一歩になると確信したのです。新たな市場を開拓して文化を創るには、やはりオリジナルの技術力と独自のニーズを掘り起こすマーケティング力が重要になってきます。

私たちは過去にも、G-SHOCKやEXILIMなど誰も見たことがないような企画を商品として開発してきました。その発想力をベースとして、今度はデジタル技術を活かした展開をしていきたいのです。携帯やパソコンはもちろん、いずれ社会にある多くの製品がインターネットでつながる世界になるはずです。そんな時代に先駆ける意味でも、これまでになかった事業部同士の連携も強めつつ、ハードとセットで展開できるようなインフラを世界に作り出せれば。そんな想いを込めて『イメージングスクエア』に取り組んでいます」